京都植物紀行

蓮このコーナーでは、タキイ種苗本社所在地である京都の植物情報を季節感溢れるテイストでお送りする、簡単読み物コラムです。
今月は蓮(はす)。
 
−7月 天龍寺 蓮−
夏、蓮の花を見るなら早朝。水面が見えぬほどに群生する葉の間で、ゆっくりと花弁を開きます。ほんのりと紅をさしたように色づく花姿はまさしく清浄無垢。天龍寺では勅使門のそばにある放生池に咲きます。
 
天龍寺
−JR京都駅より市バス28系統「嵐山天龍寺前」下車すぐ
曹源池庭園今月の舞台は京都屈指の観光地・嵐山にある天龍寺。正式には霊亀山天龍資聖禅寺といい、足利尊氏が後醍醐天皇の菩提を弔うために創建しました。見どころは方丈の背後にある曹源池庭園。しなやかな曲線で描かれた池には対岸の松が映り、白砂が鮮やかなコントラストを生み出しています。その風景には嵐山の姿が巧みに取り込まれ、嵯峨野全体を庭とするかのような開放感です。トロッコ列車や保津川下りで涼とスリルを味わった後は、禅刹の名庭園を心静かに眺めて1日を締めくくる。夏の京都ならではの楽しみ方です。
風雅な庭園を持つ天龍寺ですが、その歴史は幾度もの兵火による焼亡と復興の繰り返しでした。幕末の「禁門の変」でも、長州を追撃する薩摩軍の攻撃によって多くの堂宇を焼失。明治の再建は、創建以来8度目の再建だったそうです。
 
庫裏蓮の話
 お釈迦様は蓮華をかたどった台座に座り、観音様がその手に持っているのが蓮の花。蓮は仏教の聖なる花として日本でもなじみの深い花の一つですが、古代エジプトの遺跡には蓮の花のレリーフが見られ、インド神話の中でもシンボリックに扱われているなど、人間との付き合いはずいぶんと古いようです。泥の中に根を張りながらとても清浄な花を咲かすことが、世俗に生きる人間に何かをうったえるのでしょうか。ちなみに、日本でも縄文時代の遺跡から発見された蓮の種が花を咲かせ、世界中を驚かせたことがありました。蓮は古代ロマンの香りが漂う花としても人気です。
 花期は7・8月。非常に品種が多く、大きなものでは葉の直径が2メートルを超える大鬼蓮(オオオニバス)が知られています。花は早朝に開き、午後には閉じてしまいますので観蓮は早起きで!
 
最後に蓮を詠んだ句を2つ。
どちらも暑さを忘れさせてくれる爽やかな句です。
ほのぼのと舟押し出すや蓮の中 夏目漱石
夏帽を吹き飛ばしたる蓮見かな 河東碧梧桐
多宝殿
 
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