ホウレンソウの最新状況とべと病抵抗(耐病)性の新表記

タキイ種苗では、2017年度「タキイ最前線」カタログ頁から、ホウレンソウ品種のべと病抵抗性の表記を一部の品種について改定しました。べと病抵抗性を示すレース(系統)が増えたことについてご解説するとともに、タキイのべと病抵抗性品種の使い分けと現在の育成状況についてご紹介します。

べと病抵抗性レースの仕組み

ホウレンソウのべと病抵抗性は、抵抗性を示すレースに対して、レースの番号を付けて抵抗性を表記しています。例えば、レースA抵抗性品種を罹病させるべと病菌が新たに発生した場合、そのべと病菌系はレースBと名付けられ、それに抵抗性を示したホウレンソウ品種は、“レースB抵抗性”と表記されます(下図)。べと病は新しいレースが発生しやすい病害です。

ホウレンソウべと病とは

新しいレースの発生

抵抗性の表記が変わる理由

べと病のレースが次々と発生する中、既存品種の中にも、新しいレースに対して抵抗性を示す事例が見られるようになりました。図で見ていただくと、レースB抵抗性品種が罹病する新しいレースCに対して、新たに育成されたレースC抵抗性品種だけではなく、既存レースA抵抗性品種も抵抗性を示すようなケースです(この場合、レースA抵抗性品種はレースBには抵抗性をもたず、レースA・C抵抗性となります)。

このように品種の遺伝的な特性はまったく変わっていませんが、レースが多様化する中で、過去の品種でも新しいレースに対して抵抗性を示すものが出てきたので、今回、べと病抵抗性表記を見直しました。これまでタキイ種苗では、国内で発生が報告されているレースについてのみ抵抗性を表記していましたが、今後「タキイ最前線」のカタログ頁などから順次、新しいレースに対する抵抗性まで表記していきます。

タキイ品種の抵抗性範囲が拡大

今回の改定で、秋冬どりでは「弁天丸」「牛若丸」、秋・春どりの「アクセラ」、春夏どりでは「サマースカイR7」「晩抽サマースカイ」の抵抗性範囲が広くなりました。

「弁天丸」「牛若丸」は、これまでのレース1〜10に加え、レース15にも抵抗性を示します。また、「サマースカイR7」は、レース10以外のレース1〜9、11〜15に抵抗性を有します。「アクセラ」「晩抽サマースカイ」は、レース1〜7に加えレース9、11、13、15にも抵抗性があります。

べと病抵抗性、新表記と旧表記

色付:抵抗性あり ×:抵抗性なし
品種 作型 旧表記 新表記 R1-5 R6 R7 R8 R9 R10 R11 R12 R13 R14 R15
弁天丸 秋冬どり R1-10 R1-10,15 × × × ×
牛若丸 秋冬どり R1-10 R1-10,15 × × × ×
アクセラ 秋・春どり R1-7 R1-7,9,11,13,15 × × × ×
サマースカイR7 春夏どり R1-7 R1-9,11-15 ×
晩抽サマースカイ 春夏どり R1-7 R1-7,9,11,13,15 × × × ×

べと病抵抗性品種の使い分け

「弁天丸」「牛若丸」は、秋冬どりで低温期の栽培に適しており、「アクセラ」は秋・春どり、「サマースカイR7」「晩抽サマースカイ」は、春夏どりに適します。経営体系に合った品種を使い分けてお選びください。

タキイ交配ホウレンソウ品種

品種名 画像 収穫期 特徴 べと病抵抗性 ※
弁天丸 秋冬どり 立性の草姿で、葉柄はしなやかで折れにくく、作業性を重視した品種です。
牛若丸 秋冬どり 葉柄が太くて株張りがよい、収量性を重視した品種です。
アクセラ 秋・春どり 早生品種で、生育旺盛で作りやすく、また、早生種としては、抽苔も比較的遅いため、秋・春の栽培に適します。
サマースカイR7 春夏どり 生育が早く、耐暑性があり、春〜夏どりの栽培に適しています。
晩抽サマースカイ 春夏どり 晩抽で株張りがよく、5〜7月の長日期の栽培に適しています。また、4月まきでは、生育期間が長くなるものの、株張り、品質にすぐれた良品出荷が可能です。

※ 今後「タキイ最前線」では、上記既存品種のべと病抵抗性を記号で表記します(包材やチラシ、その他印刷物、HP内の表記は順次改定)。ホウレンソウのべと病抵抗性記号の見方:べと病に抵抗性をもつレースに色付けをしています。

べと病には総合的な防除を

べと病はレース分化の起こりやすい病害で、近年、新しいレースの発生するサイクルが早くなっています。新しいレースはいつ発生するか分かりませんので、べと病対策については、抵抗性品種の利用のみではなく、総合的な防除を併用して行うことが栽培の安定につながります。登録農薬による予防的な防除を心掛けてください。

特に、べと病は風で胞子が拡散するため、病害の広がるスピードが早いことが特徴です。罹病株を見つけたら直ちに抜き取って、周辺の薬剤散布を行い、被害の拡大を防いでください。

また、栽培環境については、べと病は多湿条件や軟弱生長した場合に発生しやすいため、過剰な多肥栽培やトンネル、ハウスでの蒸し込みなどにも注意が必要です。

ホウレンソウのトンネル栽培では、適宜換気して多湿を防ぐ。

R12抵抗性品種シリーズの展開

タキイ種苗では産地の要望に応え、べと病レース1〜12、14〜15に抵抗性をもった品種シリーズ(R12シリーズ)の展開を開始しています。これらシリーズはべと病抵抗性のみではなく、収量性、作業性もすぐれていることが特長です。

その中でも「TSP-526」は、全国主要産地で高い評価をいただいており、日本種苗協会主催の品種審査会(12月、宮崎県で実施)、東京都種苗会主催の野菜・花卉種苗改善審査会(4月、東京都で実施)で1位に選ばれるなど、栄誉ある賞をいただきました。R12シリーズについては種子増産ができたものから順次、一般販売を開始する予定です。

タキイ種苗では、より安心してホウレンソウを栽培していただけるよう、べと病抵抗性品種の開発に引き続き取り組みます。タキイのホウレンソウにぜひ、ご期待ください!

「TSP-526」は、年内・春どりで葉柄が短く、株張りのよい多収種。

べと病抵抗性

タキイ最前線WebTOPへ