カボチャのつる枯病〜 発病環境から考える防除 〜

北海道立総合研究機構 上川農業試験場 新村 昭憲

つる枯病はウリ科作物で発生する病害で、糸状菌の一種ディディメラ ブリオニエ(Didymella bryoniae)が原因で発生する病害です。メロンやスイカなどのつる枯病では葉やつるが発病し、時には発病部位より先端が枯れ上がることもありますが、カボチャの場合はつるの症状はあまり認められず被害もほぼありません。葉についても降雨の多い年には縁からの葉枯れ症状が見られることもありますが(写真1)、通常は観察できることは少ないです。

写真1 葉の発病の様子(開花期ごろ)

写真1 葉の発病の様子(開花期ごろ)

カボチャの場合は防除を考えるとき、発病環境から方法を見つけていくしかありません。ここでは感染、発病の特徴から発病環境を特定し防除対策を考えてみます。

感 染

果実での発病の特徴

カボチャのつる枯病は近年、果実での被害が増加しており、特に北海道の産地では長期間貯蔵してから出荷する場合も多く、貯蔵後の被害が増加しています。果実での発病の特徴は、発病は生育中に落果してしまった果実や日焼けや傷で障害を受けた果実に限られ、正常に生育した果実にはほぼ発病は認められないことで、早い場合は収穫後2週間程度、通常は1カ月間程度貯蔵後から発病が認められ、貯蔵期間が長くなるほど増加します。
貯蔵中の果実の発病は、果実の表面にやや窪んだ小さな病斑が現れ(写真2)、この病斑はやがて拡大し、表面には黒色の柄子殻(へいしかく)と呼ばれる胞子を吹き出す器官を作ります。しばしばここからオレンジ色の胞子が吹き出し、一部が細かなオレンジ色の胞子に覆われます(写真3)。これらの病斑は貯蔵中の果実に次々と広がることはほとんどなく、感染は貯蔵前に成立していると考えられます。

写真2 果実の初期病斑

写真2 果実の初期病斑

写真3 つる枯病の典型的な病斑
                (果実のあらゆる面から発病する)

写真3 つる枯病の典型的な病斑
(果実のあらゆる面から発病する)

感染、発病に好適な環境とは

つる枯病は本病菌の感染によって発生するため、当然、病原菌のいない圃場で栽培すると発生しません。実際にウリ類の栽培歴のない圃場でカボチャを作ると発生せず、前年の罹病残渣を圃場に置くと発病が認められます。このことから、ほかのつる枯病と同様に圃場で感染するものの圃場では発病せず、収穫後に発病していると考えられます。また、生育期から収穫期に降雨があると発病が増加する傾向があり、降雨により感染、あるいは発病が助長されていることが考えられます(第1図)。

第1図収穫前の圃場へ潅水すると発病果が増加する

収穫前の圃場へ潅水すると発病果が増加する

※収穫前日から収穫日の朝まで14時間潅水
■収穫:9月3日 ■調査:11月26日

つまり、栽培圃場において感染源となる罹病残渣が豊富にあること、カボチャの収穫前に罹病残渣に胞子が形成、飛散し、果実に付着すること、付着後に降雨や多湿条件によって感染することが多発する要件として重要と考えられます。
降雨や多湿条件は圃場の中だけとは限らず収穫後も同様です。収穫後の果実につる枯病菌を噴霧、一定期間多湿条件に置いた場合、多湿期間が長いほど発病が増加しました(第2図)。通常収穫したカボチャにおいても同様と考えられ、収穫後の多湿条件は明らかに発病を助長します。このように感染発病には感染を少なくすると共に病原菌の感染発病に好適な環境を作らないことが重要です。

第2図収穫後の果実は多湿期間が長いほど発病果率は高まる

収穫後の果実は多湿期間が長いほど発病果率は高まる

※収穫後の果実を洗浄後、病原菌を噴霧接種し、ビニール袋内で一定時間多湿にした。
■収穫:9月18日

まとめ

感染

  • 感染は貯蔵前
  • 生育期から収穫期に降雨にあうと発病増加
  • 収穫後の多湿条件は発病を助長

防除〜薬剤〜

薬剤防除―いつ散布するか、何を散布するか

メロンなどのつる枯病では栽培中のつる被害が発生する作物では登録薬剤も多く、散布によって高い防除効果が確認されています。一方、カボチャの場合は登録薬剤も比較的少なく、栽培中の散布が収穫後の発病に効果を示す必要があり、十分な効果が得られないことが予想されます。
果実への感染時期と発病への影響を知るため、栽培中の果実に対し、開花後の数日置きに病菌を接種し、発病との関連を調査した結果、比較的早い時期の接種でも発病果率が増加しました(第3図)。
実際には気象条件によって感染量は変化すると考えられますが、開花7日目ごろから感染が始まっている可能性があります。

第3図感染は開花7日目ごろから始まっている可能性がある

感染は開花7日目ごろから始まっている可能性がある

上川農試圃場
■開花:7月19〜30日 ■収穫:9月17日 ■最終調査:11月27日

比較的早い時期も含めて防除試験を行いました。
まず薬剤の散布適期を知るため、ほかの作物のつる枯病で登録のあるイミノクタジン酢酸塩・ポリオキシン水和剤(ポリベリン水和剤)を用いて散布時期を変えた防除試験を行いました。3回試験を行った結果、すべての試験で開花後20日目と30日目の防除効果が高く、この時期は防除には外せない時期と考えられます。
続いて開花後20日目と30日目の2回散布による防除効果を各種薬剤で比較したところ、TPN水和剤F(ダコニールエース)とペンチオピラド水和剤F(アフェットフロアブル)が最も高い効果を示しました。いずれの薬剤もすでに農薬取締法の登録を取得しており、防除に利用することが可能です。しかし、その防除効果は防除価として50〜60程度であり、薬剤防除だけでつる枯病を防除するのは難しいと考えられます。同時に、カボチャは葉が生い茂るため防除を行う際、果実に薬剤を付着させることがなかなか難しいのです。試験では10a当たり100ℓ 散布した場合と比較し、150ℓの散布量でより効果が高くなることが確認されているため、可能であれば散布量を増やすことをおすすめします。

※防除価とは無処理区における発病を100とした場合の処理区の効果の程度を示す指数で、次の式で計算される。防除価=100−処理区の発病/無処理区の発病×100

まとめ

防除 〜薬剤〜

  • 開花後20日目、30日目の効果が最も高い
  • TPN水和剤Fとペンチオピラド水和剤Fの効果が最も高い

防除〜風乾処理〜

収穫後の貯蔵環境から考える防除―風乾処理

つる枯病の発病は降雨や多湿条件の影響を大きく受けています。収穫前の雨の影響を回避するのは難しいが、収穫後は工夫次第で発病を抑制できる可能性があります。
私たちは収穫直後の風乾条件がつる枯病の発病に及ぼす影響を明らかにするため、同一条件のもと試験圃場で栽培したカボチャを、生産者5戸の貯蔵施設と地域の農業センターの温室内で8日間風乾しました。その後同じ貯蔵庫で貯蔵し、発病状況を調査した結果、8日間の風乾処理の違いだけで発病果率が大きく異なることから、収穫直後の風乾処理は非常に重要であることがわかります(第4図)。このとき、風乾中の平均湿度が低いほど発病が少ない傾向が認められました。

第4図収穫直後8日間の風乾環境が異なるだけで、
つる枯病の発病果率は大きく変わる

収穫直後8日間の風乾環境が異なるだけで、
              つる枯病の発病果率は大きく変わる

■収穫:9月17日 ■風乾8日間、風乾後JAの貯蔵庫で貯蔵

次に上川農試において乾燥条件による発病への影響を比較するため、風乾方法を無処理(すのこの上に3段重ね)、3段重ね+扇風機(カボチャ近くで風速約3m/s)による風乾、差圧通風、キュアリング処理という5つの異なる条件で比較しました。差圧通風とはカボチャを入れたコンテナをシートで覆い、上面からダクトファンを用いて吸引、反対面から空気を送り込み強制的にコンテナ内に空気を通す方法で、このときの風速は1m/sに満たない程度で行いました。
これらの風乾処理を収穫直後から8日間行いましたが、差圧通風については同様な処理を3カ月間行った区も設けました。また、キュアリングについては25℃、湿度約70%の恒温器内で処理を行いました。これらの風乾後、同一の貯蔵庫で約3カ月間貯蔵した結果、最も発病が少なかったのが差圧通風、次に扇風機、最も多かったのが無処理のものでした(第5図)。このときも風乾中のカボチャ周辺の平均湿度が低いほど発病が少なく、風乾中の湿度と発病には相関関係が認められました。
以上の結果から、収穫直後の果実の乾燥条件はその後の発病に大きな影響を及ぼし、発病を低下させるにはより湿度が低く、すべての果実を乾燥させるためにコンテナ内に風を通す通風乾燥などの方法が有効と考えられました。現在、通風乾燥の方法をさらに明らかにするため試験を継続しています。

第5図収穫後の果実を無処理のまま貯蔵すると最も発病果率が高い

収穫後の果実を無処理のまま貯蔵すると最も発病果率が高い

■収穫:9月10日 ■風乾8日間(その後同一貯蔵庫で約3カ月貯蔵)
※差圧通風(長期)は3カ月風乾

まとめ

防除 〜風乾処理〜

  • 収穫直後の風乾処理が重要
  • 差圧通風した場合、発病が最も少ない
  • 果実周辺の平均湿度が低いほど発病は少ない

※文中で紹介している農薬は、タキイでは取り扱いのないものもございます。ご了承ください。
また、農薬をご使用の際は必ず登録の有無や使用方法をご確認ください(編集部)

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