「星の郷青空市」繁盛記【後編】岡山県星の郷青空市の現況と集客

タキイ園芸専門学校第39回卒業の張谷さん。

タキイ園芸専門学校第39回卒業の張谷さん。
現在は「星の郷青空市」代表取締役として地域の活性化に貢献されている。

農産物直売所は実質的農産物販売シェアにおいて売上高1〜2兆円規模の大手流通業に匹敵するといわれ、その原型は店舗をもたない「朝市」に見ることができます。こうした「青空市」や「無人販売所」も試みは各地であったものの農産物の流通は地方卸売市場、中央卸売市場などを中心に整備され産地は農協系統流通が中心である中、農協に出荷できない規格外品などが並ぶところという位置づけでした。「直売所」が世間に注目されだしたのは、平成10年ごろで、マスコミで取り上げられるようになって以降です。

タキイ最前線2017年春種特集号「みんなイキイキ直売所訪問」で紹介した直売所「星の郷青空市」の代表、筆者の張谷さんは、世間にまだ「直売所」という言葉がない時代、昭和62年に直売所を立ち上げた草分け的存在です。WEB版では星の郷青空市の創設期(前編:掲載済)を紹介いただきました。後編では、直売所で実施するイベントを紹介していただき、「直売所」がどのように地域に定着し、求められるようになっていったのかを探っていただきたいと思います(編集部)。

集客イベントの大切さ

「ピオーネまつり」でにぎわう様子。

テント一張から始まった「星の郷青空市」も、30周年を迎えました。ここ最近は、競合の直売所が出来たことや、異常気象による収穫量の変動などにより、売上げが上がったり下がったりの状態が続いています。

運営については、新しい後継者も増えてきた中で、開設期のメンバーからの株主や役員の交代も、徐々にではありますが始まっています。出荷農家を見ると、特にここ5年ほどで高齢化が進み、体力面の衰えで、異常気象への対応力低下を感じます。少しずつ出荷量への影響が出てくるようになりました。若手の出荷者も多少増えているのですが、今後もしっかりと出荷をしてもらえる生産者を、いかに増やしていくかが最重要の課題となっています。

さて、どの直売所でも運営上の各種課題があると思いますが、どの直売所でも先述した「生産者の確保」と、農家、直売所の売上に直接影響のある「集客」ではないでしょうか?

集客と言えば、お客さんにいかにして自分の直売所に来ていただくかは、品質の向上・品揃え・レイアウトetc・・・。多くのことの小さな積み重ねを地道にやっていくことが一番の基本であり、大切なことだと思います。そうした中でもイベントを行っていくことは、大きな意味を持っていると思います。

そのイベントですが、言うまでもなく集客力をアップするということが大切な目的ですが、それだけのために行うことではないと、私は思っています。

何度も買い物に来てくださるリピーターの方は、その直売所の大切な「ファン」ですが、そうした存在のお客さんになってもらうことはとても大変なことだと思います。初めて来られた方にファンになってもらうためには、自分の直売所のこだわりなどを伝えて、直売所へ足を運ぶことや買い物をすることが、楽しくて満足できると感じていただかなくてはなりません。そのためには通常の営業だけではなかなか難しいことだと思います。

だからこそ、直売所を知るきっかけとなるイベントの日が非常に大切になると思います。通常の営業日と違い、お客さんと農家が直接交流する場を設け、内容を工夫することで、自分たちの取り組みを理解してもらえ、身近に感じてもらえる絶好の機会だと思うからです。

星の郷青空市で実施するイベントの内容

現在、星の郷青空市が単独で行う大きなイベントは、春と秋に行う「収穫祭」と7月に行う「周年記念祭」があります。
「収穫祭」の内容としては

@農産物のお客様品評会(春・秋)
この品評会は、JAや普及センターなどが品評するのではなく、来訪客に買いたい品物を投票していただき、品目ごとの1位を決定します。お客さんに投票していただくことで、自分たちも参加しているという感覚を持っていただけます。そして生産者にとっては、お客さんに選んでもらうという意識を高めるきっかけになっていると思っています。

A農産物に関するクイズ(春)
・タネと芽が出た植物体と名前を合わせるクイズ(対象は親子向けや大人向けなど変えています)。
・敷地内の店舗を回って、野菜などに関するクイズの問題をもらって解くことで、お宝のありかを探すクイズラリー(対象は子供と親子)。

お客さんの投票による品評会。親子向けに発芽した芽で植物体をあてるクイズ。
農産物クイズで生産者と交流も。

この2つのイベントは、農産物に対する理解を楽しみながら学んでもらおうと行っているイベントです。子供と親子連れには、参加賞として各店舗が景品を出すことで各店舗のPRの効果も狙っています。またラリー当日には、担当の農家の方から参加者へヒントを出してもらったりして、参加者との交流も楽しんでもらっています。

B落ち葉を集めた中での子供たちによる宝さがし(秋)。
これは日常では味わえない体験の中で、少しでも自然に親しんでもらうために行っています。

このほかにも、買い物をされたお客さんへ還元と各店舗のPRをかねる目的で、抽選会や輪投げなど、青空市に関係した景品が当たるイベントなども行っていますが、できるだけ楽しみながら農業を理解してもらえるようなイベントを行うようにしています。

地域一体のイベントで町をPR

以上、星の郷青空市で行うイベントを少しだけ紹介させていただきましたが、青空市単独のイベントだけでなく、井原市美星町ではいろいろなイベントが行われます。美星町で行われるイベントの特徴としてあげられるのが、昔からいろいろな団体などが集まって実行委員会形式で行ってきた点が上げられます。

星の郷青空市の敷地中心で行われるイベントとしては、19回目を迎える「天の川まつり」です。夜に地上に願いごとを記した「灯ろう」を並べて天の川をつくろうとして始まった幻想的な祭りです。また、ピオーネ産地振興のPRに始まった「ピオーネまつり」は14回目を迎え買い物客が集まる人気のイベントです。さらに、今年36回目となる各地区の自治公民館が出展する「美星ふるさとまつり」。平成4年に美星町がオープンした観光施設「中世夢が原」や天文台で行われる各種イベントなどがあります。実行委員会やボランティアなど官民が一体となり、少しでも美星町に来ていただくためと美星町自体をPRするために、いろいろな取組を行って来ました。

幻想的な光につつまれた「天の川まつり」の様子。
特に人気のイベントに成長した「ピオーネまつり」。
子供たちも大喜びの輪投げ。

30年前には、なにも観光資源がなかった美星町ですが、「星」をテーマにした町づくりや青空市など、いろいろな取組の相乗効果で、多くの方に来ていただける町になりました。

これからも農業振興を行いながら、多くの方と力を合わせたイベントで相乗効果を生み出し、井原市および美星町の町づくりの土台となれるように頑張っていきたいと考えています。

今回紹介させていただいた取組が、少しでも皆さんの地域の直売所運営の参考になれば幸いです。

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