JAみなみ筑後 伝統の「博多なす」の産地に「PC筑陽」が導入

JAみなみ筑後瀬高なす部会 野田雄大さん(前列中央)と、左からJA みなみ筑後営農部園芸課 瀬高選果場 指導係の森山雄太さん、谷和剛さん、井上剛彦さん(平成31年1月取材現在)

JAみなみ筑後瀬高なす部会 野田雄大さん(前列中央)と、左からJA みなみ筑後営農部園芸課 瀬高選果場 指導係の森山雄太さん、井上剛彦さん、谷和剛さん(平成31年1月取材現在)。

地域概況
〜温暖な気候に恵まれた野菜の生産地〜

JAみなみ筑後は福岡県の最南端、筑後平野に位置し、福岡市まで約60kmの距離にあります。矢部川沿いに面した平坦な農村地帯で、気候は内陸有明気候区に属し、平均気温16℃、年間降水量1,800o、年間日照時間2,000時間と農作物の栽培にとっては恵まれた地域です。古くから野菜栽培が盛んで、特にナス、セルリー、トマト、キュウリなどの施設園芸を主体に取り組まれています。

JAみなみ筑後

「博多なす」ブランドを支える伝統の「瀬高なす」の産地

JAみなみ筑後瀬高なす部会は、平成7年に設立された、瀬高地区を中心に古くから続くナス産地です。部会員数201名、総作付面積は49haと県内のナス作付面積の半分を占めています。「瀬高なす」は、部会設立の翌年平成8年に日本農業大賞を受賞、その翌年には農林水産祭において天皇杯を受賞するなど実績を残されてきました。瀬高なす部会は「博多なす」ブランドを支え続けています。
出荷時期は冬春10月〜7月、夏秋7〜10月、収穫最盛期は4〜6月で最盛期には1日当たりばら詰めで約40tもの出荷があります。
出荷先は京浜、関西、山陰、中国そして地元の福岡と、ほぼ全国へ周年出荷されます。

日本農業大賞、農林水産祭の天皇杯を受賞する など伝統のナス産地であるJAみなみ筑後瀬高なす部会。

日本農業大賞、農林水産祭の天皇杯を受賞する など伝統のナス産地であるJAみなみ筑後瀬高なす部会。

瀬高選果場での選別出荷作業の様子。基本規格は、本数出荷定数ばらの箱詰めと袋の箱詰め。出荷最盛期には1日当たりばら詰めで約40tもの出荷がある。

ナスの品種変遷と「PC筑陽」導入の経緯

同地では昭和44年に「黒陽」を導入、平成3年に首部のボリュームと品質アップを求めて「筑陽」に切り替え、その後長らく親しまれてきました。
ところが、近年生産者の高齢化が進み、ピーク時には350名程度いた生産者もだんだんと減少に転じてきたのです。
産地では交配用ハチ類の導入や自走式防除機などによる省力化を図りつつ、平成27年に単為結果性をもちホルモン処理の必要のない「PC筑陽」の試作を開始します。
普及率は平成29年には40%程度でしたが、本年(平成30年産)では80%にまでアップしました。

「PC筑陽」の普及率は平成29年で40%、平成30年は80%と飛躍的にアップした。

「PC筑陽」の普及率は平成29年で40%、平成30年は80%と飛躍的にアップした。

「PC筑陽」がナス栽培の作業負担を劇的に減らす

「ホルモン処理作業がなくなったことで、生産者の精神的負担も軽減しましたね」
お話いただいたのは、JAみなみ筑後 営農部園芸課 瀬高選果場指導係井上剛彦さんです。ホルモン処理は、短期間で集中して行わねばならず、生産者にとって作業面だけでなく精神的にも負担の大きいものでした。「PC筑陽」は、産地では当初、高齢の生産者向けとして導入したのですが、その省力性が認められ部会全体に広がりました。
井上さんは、「管理の手間は『筑陽』よりかかる部分もある」とされながらも、その単為結果性によって、高齢化による産地規模の縮小を食い止める効果を発揮していると感じておられます。

市場でも評価は上々

「筑陽」から「PC筑陽」への出荷の切り替えは順調で、市場からは大きなクレームなどはありません。逆にトゲなしになったことで、傷果がなくなり選果場での作業もやりやすくなりました。収量性も高くボリュームがあり見劣りはないそうです。

選果場を案内くださった指導係の谷さん「博多なす」を手に。「PC筑陽」への切り替えは順調で市場からのクレームなどはない。

選果場を案内くださった指導係の谷さん「博多なす」を手に。「PC筑陽」への切り替えは順調で市場からのクレームなどはない。

省力化ができトゲがないので作業性も高い「PC筑陽」

「『PC筑陽』はホルモン処理が不要というだけでなく、トゲもないので、収穫作業をしているパートさんたちにも好評です」
「PC筑陽」の作業性の高さに注目されているのは、瀬高なす部会の野田雄大さんです。野田さんは、就農7年目29歳の若手生産者で、4連棟と8連棟ハウス(計40a)で環境制御によるナス栽培に取り組まれています。ご両親とパートさん2人の5名で圃場を管理されていますが、「PC筑陽」の導入で劇的に作業効率がよくなったと評価されています。
栽培に関しては「筑陽」よりも草勢が弱く冬場の草勢管理が難しいとされながらも、
「『筑陽』と比べてA品率が高いのもいい。省力化もできるので、今後は面積も増やしていきたいですね」
野田さんは規模拡大への熱意を見せておられました。

環境制御によるナス栽培に取り組む野田雄大さん。あぐりログ研究会という環境制御栽培の研究会にも席をおく若く熱心な生産者。ナス栽培も進化している。

環境制御によるナス栽培に取り組む野田雄大さん。あぐりログ研究会という環境制御栽培の研究会にも席をおく若く熱心な生産者。ナス栽培も進化している。

野田さんの「PC筑陽」圃場。 肥培管理と潅水 は手動、ドーム開閉、炭酸ガスなどは自動で行っている。

野田さんの「PC筑陽」圃場。 肥培管理と潅水 は手動、ドーム開閉、炭酸ガスなどは自動で行っている。

省力化ができ秀品率も高い「PC筑陽」。

省力化ができ秀品率も高い「PC筑陽」。

安定生産のために栽培技術を確立

栽培の課題は、追肥・潅水、冬場の温度管理です。
「『PC筑陽』はすべての花に実がついてしまうので、春先の出荷最盛期に量をとるためには、冬は摘花を行い株を休ませないといけません。ですが、実をつけすぎてしまう生産者もいます」
井上さんは、安定出荷のためには、収穫の山谷を作らない工夫が重要と語られます。JAとしては2カ月に1回の現地巡回と定期的な講習会を開催することで、栽培指導を行っています。

栽培について熱心に情報交換を行う野田さんと、JAみなみ筑後営農部園芸課 指導係の皆さん。「定期的な巡回と講習会を行うことで産地指導としたい」と井上さん。

栽培について熱心に情報交換を行う野田さんと、JAみなみ筑後営農部園芸課 指導係の皆さん。「定期的な巡回と講習会を行うことで産地指導をしたい」と井上さん。

産地の維持そして拡大を目指す

「省力化によって今の生産者が続けるようになったといっても、10年続けてくれるわけではありません」
井上さんは、後継者の育成、新規就農者の増加などが産地の維持拡大には重要になると考えています。今後、「PC筑陽」の栽培技術が普及し、作りこなせる生産者が増えていけば産地の拡大も望めます。
伝統のナス産地を守るため「PC筑陽」が役立ってくれればと期待を寄せておられました。

産地の維持そして拡大を目指す

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