タキイ園芸専門学校とは

  45年間生徒と接しタキイ園芸専門学校は『寮生活と厳しい実習を通して人を育てる学校』の一言に尽きると思います。実習指導を行うのは研究農場勤務のタキイ社員で、社員でありながらブリーダー(育種家)と教師の二役を果たすことが求められます。若いうちは教師の役割は荷が重いのですが、私のように専攻生と競争しながら新社員も成長していきます。
ここで、本校の歴史と理念を簡単に紹介しておきます。

設立の経緯と目的

  タキイ園芸専門学校は1947年(昭和22年)に京都府長岡京市にあったタキイ長岡研究農場内に付属園芸講習所として開設されました。設立したのはタキイ種苗を株式会社にした3代目瀧井治三郎氏です。その目的は、敗戦後の食糧難の時代、将来の農業の担い手を育成するために園芸作物に関する最新の知識や技術の体得を目指してのものでした。

  1968(昭和43年)年、京都府長岡京市から滋賀県湖南市(当時甲西町)へ移転し、1977年(昭和52年)にタキイ園芸専門学校として認可を受け、現在のタキイ研究農場付属園芸専門学校に改称されました。

  教育目的は、研究農場が行っている育種の基礎となる野菜・花卉の栽培を、社員と一緒に行いながら実際に栽培技術を体得し、園芸に関する基礎知識と先端栽培技術の習得を通じて次世代の農業後継者や園芸技能者を育成することにあります。農業技術を短期間で習得するため、授業の大半は圃場での実習にあてられ、生きた技術習得を目指します。また寮での共同生活を通じて卒業後、農業分野で活躍できる社会人として、挨拶、規則遵守、一致団結など精神面の鍛錬も目指し、人間形成の向上も目的としています。

本校の特色

  入学生は高卒、農業大学校卒、短大卒、4大卒、JA・会社の出向など幅広く受け入れます。大半は農業技術習得を目的とした農業後継者が対象で、現在の入学資格は25歳未満の男子のみとなっています。近年は女性の入学希望者もあるものの、全寮制のため女性の受け入れはハード面で現在はまだ困難な状況です。

  学年は2年制、1年次が本科生、2年次が専攻生となります。全寮制で寮生活は生徒の自治によって行われ、寮の生活規範は先輩から後輩へ受け継がれ運営されています。クラブ活動もあり、タキイの社員が顧問を務めます。
  本科生は1室に2名、専攻生は個室となります。各専攻生は本科生2名、または4名を担当し寮生活での指導を行います。さらに部屋顧問としてタキイ若手社員がつき、栽培のことや進路や就職、日常のことまで相談相手となります(この関係は卒業後も続いきます)。また、生徒と学校のパイプ役として社員2名が全体の生徒係として半年ごとの交替で就任します。

カリキュラム

  本科生は水曜日と土曜日の午前中、本講義として「果樹園芸学」「蔬菜園芸学」「花卉園芸学」「育種学」「土壌肥料学」「植物病理学」「園芸経済情報学」「農学概論」の8つの専門講義を受けます。講義担当は京都大学、京都府立大学、神戸大学の教授陣に講師をお願いし、前期と後期に各科目で試験が実施されます。
さらにタキイ社員が本講義の前に野菜・花の栽培技術に関して朝30分行う実地講義もあります。野菜、花卉の品目ごとに栽培技術の講義が行われ、毎月テストを実施します。これ以外の時間はすべて実習にあてられ、講義時間は1年間で370時間、実習時間は1,500時間となります。実習は6グループに分かれ、本科生は5名で1班を作り、6つの科を1日ごと、順番に回わっていきます。
  こうして1年の間に野菜園芸の基礎を幅広く学ぶことができます。6科とは、ナス科、ウリ科、葉菜科、根菜科、ユリ科、草花の6グループです。

実習風景

講義風景

産地見学の一コマ

  専攻科に進級すると、専門コースとして品目を選択し、最高3つの品目(すなわち:3グループ)を選ぶことができます。専攻生は2つあるいは3つのグループを選択する学生が大半です。これは、実際農業をやり始めると、品目転換が必要な場面が就農の現場では起こるため、学校としても複数の選択を進めています。
  講義は「植物病理学」「栽培概論」「蔬菜園芸特論」と実地講義があります。講義時間は130時間、実習時間は1,730時間を数えます。

  実習は厳しく簡単ではありませんが、農業人として就農後必ず役に立ちます。

専門学校と農場の関係

  研究農場と専門学校の関係は、表裏一体と言えます。研究農場はタキイ種苗で取り扱う品種改良のために野菜・花卉の栽培を行っています。つまり、農場での実習は企業が事業として行う商品開発のための育種現場です。最先端の技術を使用し、幾世代も年月をかけて育てた貴重な遺伝資源を実習の教材としているため、一株たりとも無駄にできません。緊張感を伴った真剣な社員と同じ目線で実習に取り組むことになります。
  こうした体験を通じて就農後即実践に結びつく生きた知識や技術を習得できるのです。生徒は授業料や入学料を納める必要はなく、寮費や食費も学校が負担しています。さらに研究費として、本科生には1月あたり12,000円、専攻生には16,000円が支給されます(2016年現在)。

卒業生の進路と成長

  卒業後の進路は、卒業生の60%前後が農業の自営に就いています。約20%は卸売市場や種苗業、JAなどの農業関係への就職です。残り20%のなかには農業とは関係のない分野に就職する人もいますが、卒業後さらに篤農家のもとで研修を受ける人もいます。
  卒業生の評価は高く、責任感やバイタリティがあり、寮生活での基本的マナーも習得しているので、卸売市場、農業生産法人、種苗会社などから卒業生の紹介を毎年要望されています。

卒業後の交流について

  同窓会誌「あおば」が年に1回発行され手元に届くほか、6年に一度卒業生が集まって「あおば会総会」が開催されます。毎回600名から800名のOBと在校生が参加します。同窓会の組織には県単位のあおば会支部もあり、支部単位で情報交換会や懇親会の活動がそれぞれ行われています。
  卒業生同士の交流も非常に親密で、全国に散らばった同級生は後々まで結束が固く、卒業後も仲間同士で情報交換を行っています。もちろん卒業生と指導に当たったタキイ社員との関係は社員が農場にいる限り、栽培でピンチの時や悩んだとき、就農後の相談相手としていつまでも続いて行きます。時には開発中の品種の試作を頼んだり意見を聞いたりと、就農後は生産者とブリーダーの関係も構築されていきます。
  農業経営には情報のネットワークが必要で、こうした人脈はとても貴重です。また、寮生活を通じて本当の友達ができたという思いを多くの卒業生が持つようです。

2015年開催された第12回青葉会総会。総会は6年に一度開催される。

回顧録TOPへ戻る