タキイの野菜 食通レビュー 最終回 プレイバック「レクラ・ド・リール」秋冬野菜がメインのメニュー

大橋 鋭誌さん
愛知県豊田市で家業の苗生産・販売を行う傍ら、仲間たちと立ち上げた本格派フランス料理店「レクラ・ド・リール」のオーナーとして、厳選した自家製野菜をメニューに提供。おいしい旬の野菜がたっぷりの料理に使われる。

厨房を預かる、近藤 招宏さん。
大橋さんとは顔なじみ。
フランス修行の経験を持つ。
本紙連載を通じて、野菜への意識が高まり、使う野菜を先に決め、そこからメニューを組み立てることで幅が広がったと、常に挑戦を続けている。

本格稼働を始めたトマトハウス

昨年建設したトマトハウスは、試験栽培を経て、いよいよ本格的に稼働を始めました。収獲は11月から7月の予定で、最終的には30段ぐらいまでとる見込みです。品種は4分の3(約6,600株)が「桃太郎ホープ」、4分の1(約2,200株)が「桃太郎ゴールド」ですが、病気も出ずとても順調にきています。やはり、露地栽培とは秀品率がまるで違う。きれいな玉が多くできます。環境を安定させることで、ここまで変わってくるとは思いませんでした。
「桃太郎ホープ」は長段どり用の品種だけあって、栽培後半になっても草勢が落ちない。樹は強いんだけど、暴れて困ることもなく、作りやすい品種です。
「桃太郎ゴールド」は夏秋用の品種で、おそらく長段どりには向かないと思います。それをやってしまうチャレンジャーは、たぶん日本中で自分ぐらいじゃないでしょうか(笑)。でも、数年前に初めて作った時、食べたらめちゃめちゃおいしくて、「この品種を長段どりで作れたらおもしろいな」と、ずっと考えていた。だから、絶対やりたくて、作ってみたら案外うまくいってちょっと驚いています(笑)。

トマト8,800本の出荷先

小売りしているのはJAのグリーンセンター(直売所)、地元スーパー、前回お伝えしたサービスエリアなどです。赤と黄色のトマトが並ぶ売り場は見ただけで楽しく、どちらも好評を博しています。
「桃太郎ホープ」は「久しぶりにしっかりした赤いトマトを食べた」と言われるなど、味の面でも高評価を得ています。食べごたえがあっておいしい品種です。
「桃太郎ゴールド」は出荷始めの11月ごろこそミカンやカキと間違われたりしましたが、一度食べれば「これはうまい!」と分かってもらえるようで、徐々にリピーターもついてきました。ある店では「桃太郎ゴールド」を連日買いに来られる方がいて、「80年生きてきて、毎日食べたいトマトに初めて出会った」と言っていただいているとか。試験栽培時の販売でもある程度手応えはありましたが、ここへきて一気に火がついてきたのを実感しています。
ただ、合わせて9,000本近くのトマトを、地元の小売店とレストランだけでさばくのは厳しい。かといって、何の実績もない自分が市場へ出しても値はつきません。どこか大きく扱ってくれる所はないか探していたところ、運よく知人から関東の会社を紹介してもらえたのです。その会社は関西の支社へ毎日トラックで便を出しているらしく、帰りは荷台に余裕があるので、豊田に寄ってトマトを積んでいってくれるとのこと。運ばれたトマトは、関東方面の飲食店などへ個別に配送されていくそうです。こちらはトマトを収穫してコンテナに詰めればよく、手間も経費も省けます。品質は高いものが求められますが、トマトハウスなら高品質なものが均一に生産できる。現在では収獲量の約半分をこの会社へ出しています。
ハウスを建てて長段どり栽培がしたい、小さい規模じゃ採算が合わないし…と、なりゆきでここまで突き進んでしまいましたが、正直なところ販路のことはあまり考えていませんでした。「なんとかなるだろう」で始めたら、助けてくれる人が現れて、できたトマトは全部売ることができている。本当にラッキーでした。結果的に、関東の人にも豊田の野菜を食べてもらえるようになり、それもよかったと思っています。

豊田を名古屋の台所に!

連載開始から3年、状況は大きく変わりました。当初、本業の苗生産以外はレストランと産直用に栽培するだけでしたが、ハウスを建て、サービスエリアへ出店し、飲食店もレクラドリール以外にハンバーグレストランと丼屋をオープン。これらは栽培したトマトや米を利用するための店です。
座右の銘は「渡りに船」と公言しているのですが(笑)、とりあえずやってみたことがどんどん大きく広がってきています。
今後はトマトだけでなく、ナスやピーマンなどはできるだけ施設でやっていきたい。施設園芸が好きだし、野菜の性質で露地栽培と分けた方がやりやすいからです。それに、これから農業をしていこうという人が、露地のトマトから始めたりしたら、絶対にくじけてしまう。くじけない方法を取り入れて、豊田にもっと農業を広めたい。農地はあるし、近くに名古屋という大消費地もある。豊田が名古屋の台所になれるよう、バラエティに富んだ野菜を作れたらと思います。
そして、品種はやはりタキイがいい。野菜のできは8割が品種の力だと思っています。ハウスでの取り組みも、タキイの「桃太郎」トマトだからこそ味で皆に受け入れられた。「愛知県をタキイ色に染めてやる!」の意気込みで、今後もがんばっていくつもりです。

↑長段どり用の「桃太郎ホープ」は栽培後半までスタミナがあり、樹が強いのに暴れない。大橋さんにとって心強い品種。

↑初めて作った時から大橋さんをほれ込ませた「桃太郎ゴールド」は、長期栽培にも意外な適応を見せた。店頭でも人気急上昇中。

↑大橋さんが「絶対いける」と確信してつくり始めた「桃太郎ゴールド」のジュースは、トマトくささがなく飲みやすい。普通のトマトジュースとは一味違うおいしさ。

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トマトファルシー

「ファルシー」とは「詰め物」の意味。「桃太郎ゴールド」をくり抜いて器にし、角切りにした果肉と果汁をホワイトソースと合わせ、「弁天丸」を加えて塩こしょうで調味したものを詰める。チーズをのせ、オーブンで焼き色をつければできあがり。トマトの黄色にホウレンソウの緑がよく映え、味の相性も抜群の、おしゃれなトマトグラタン風料理。

トマトファルシーの料理写真

2種のトマトのブルスケッタ

バケットを薄く切り、オリーブ油を塗って軽く焼く。「桃太郎ピース」「桃太郎ゴールド」の角切りとニンニク、南仏プロバンスのハーブ(タイム、ローズマリー、セイボリーなどの混合)、塩を混ぜ、バゲットにたっぷりのせていただく。赤と黄、異なる色の「桃太郎」トマトが見た目に美しく、オリーブ油、ニンニクともマッチして美味。

2種のトマトのブルスケッタの料理写真

鶏と冬野菜のフリカッセ

シチューに似た白い煮込み料理。フライパンにオリーブ油をひいて鶏肉を並べ、軽く焼き色がついたら、「スノークラウン」「スワン」、ゆでたジャガイモなどの野菜を入れて炒める。塩をふって白ワインを注ぎ、少し煮詰めてアルコール分をとばした後、生クリームを加えて軽く煮込む。最後に「弁天丸」を入れてさっと火を通し、器に盛って「コーラルリーフ」をのせる。冬野菜はどれも甘く、間引き菜の「スワン」は皮つきのままで風味を生かす。「コーラルリーフ」の黒みを帯びた色あいとぴりっとした味が、料理のアクセントになっている。

鶏と冬野菜のフリカッセの料理写真

↑セルトレイで栽培した葉物を、近藤シェフが必要な分だけ摘んでくる。
写真はレタス「レッドファルダー」「マザーグリーン」「ロマリア」に、「コーラルリーフ」、「デトロイトダークレッド」の葉、ルッコラなど。これをたっぷり盛った季節のサラダは、野菜好きに大好評。

近藤シェフから一言

トマトハウスの建設以来、冬季でもたっぷりトマトを使えるようになって、メニューにもずいぶんと幅が出てきました。露地のみで作っていた時は不可能だった、秋冬野菜との組み合わせも自在にできます。
この7月で店も5周年を迎えますが、以前からずっと「野菜がおいしい店」という評価をいただけています。せっかくよい野菜を作ってもらっているのだから、これからもそれを生かした料理を提供していきたいですね。
サラダ用の野菜は年中セルトレイで栽培してもらっているのですが、収獲するのは私の仕事。ランチとディナーの間の休憩時間に、ハウスへ行って必要な分だけ摘んできます。将来的には自分も少しは栽培に携われればいい。もちろん、間近で見て難しさはよく知っているのですが。
引退間近になったら「オーベルジュ」という、ホテルとレストランが一緒になったような施設をやってみたいなあ。フランス風の建物で、自家製の野菜や燻製などを楽しんでもらって……。そんなことを漠然と考えながら、今は毎日多くの野菜と奮闘する日々です。
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