タキイの種子加工技術

農業生産におけるタネの発芽は、その後の栽培成否を左右する最も重要な事項です。タキイでは「高品質種子」を提供するため、日夜徹底した品質管理を行っています。「タネ=種子」は、植物学的に言えば、胚珠が受精して生育したものです。では、タキイが目指す「すぐれた高品質種子」とはどのようなものでしょうか。

もちろん「一斉に発芽し、病害虫に侵されていない健康な種子」であることはいうまでもありません。タキイではこれらの条件に加えて常に、「お客様のご要望や期待に見合った種子」でなければならないと考えています。

それは「播種された個々の種子が良質な苗となり、目的通りのすぐれた品種特性を発揮して、期待通りの収穫ができること」、これらの条件を備えた種子を「品質の高い種子」であると考えています。このような「高品質種子」を提供するため、タキイでは独自の開発に基づく種子加工の技術を駆使しています。この度は、タキイの最先端を行く種子加工の技術についてご紹介します。

加工種子の種類

たとえば、ニンジンやレタスなど、いびつな形をした種子をまきやすくして、播種する労力を減らしたい場合は「ペレット」、発芽時の立ち枯れなどを防止するため、農薬を安全に塗布したい場合は「フィルムコート」。

トマトの発芽をそろえ、接ぎ木作業などを効率化したいときには「プライミング」、春まきのニンジンや長日系タマネギの低温ストレスを回避して、収量を上げたい、または高温期にレタスの発芽不良を回避したいときには「プライミングペレット」。

また、ホウレンソウ種子の果皮をやわらかくして、吸水性を向上させることで発芽ぞろいをよくしたい場合は「エボプライム」、ひまわりやパンジー・ビオラの、高温時の発芽をそろえたい場合は、プライミングとフィルムコートを合体させた「クリスタルコート」があります。

以下に具体例を解説していきます。

加工種子

種子加工とは

種子に付加価値をつけることを目的とする(種子処理)。

たとえば、

播種する労力を減らしたい
ペレット
種子に対して、立ち枯れ防除に有効な殺菌剤などの農薬を安全に塗布したい
フィルムコート
トマトの発芽をそろえ、接ぎ木作業などを効率化したい
プライミング
低温や高温などのストレス環境下でも発芽をそろえたい
プライミング+ペレット
ストレス環境下でもホウレンソウの発芽をそろえたい
エボプライム
高温のストレス環境下でもヒマワリやパンジー・ビオラの発芽をそろえたい
クリスタルコート プライミング+フィルムコート
株間を測ったり、タネの粒数を数える手間を省いて、均一な播種がしたい
シーダーテープ加工

ペレット種子

天然素材の粘土鉱物を主体とした粉体を用い、種子を核として均一な球状にしたものです。ニンジンやレタスなど、種子形状が不均一なものをペレット化することにより、播種効率を上げることができます。また、ユーストマやペチュニアなどの微細種子は1粒1粒ペレットにすることで、機械播種が可能になります。

タキイのペレットサイズ基準は、ユーストマは現在4S(1.2mm以下)に移行し、ペチュニアは3S(直径1.4mm以下)、キャベツ・レタス・ニンジンなどはLサイズ(直径2.5〜3.5mm)、タマネギ・トマトは2L(3.5〜4.5mm)、ダイコンは3L(4.5〜6.0mm)となっています。

ニンジンや、レタスなど長細い種子のペレットの場合、サイズは、あくまでもペレットの短径の長さが基準になります。また、そのサイズに合わせた播種機が農機材メーカーより販売されており、ニンジンなど直播性の作物でも、機械による1粒播種が可能となります。

ニンジンやレタス、キャベツなどはペレット加工することで、機械播種や手動の播種器を使った播種ができるようになる(写真は手動の播種器)。
ニンジンやレタス、キャベツなどはペレット加工することで、機械播種や手動の播種器を使った播種ができるようになる(写真は手動の播種器)。

ペレット種子のことをコート種子もしくはコーティング種子と呼ぶこともありますが、タキイでは、ペレット種子が正式な名称で、包装資材にもすべて“タキイのペレット種子”と表記しています。

タキイでは「タキイのペレット種子」として
タキイでは「タキイのペレット種子」として
販売されています。

ペレット種子水管理上の注意点

野菜のペレット種子は、吸水するとコート層にクラックが入り、通気性を確保するのに有利な構造になっています。

種子が吸水するためには、初期の潅水が重要になります。少ないとクラックができずに、窒息状態になり発芽しません。しかし、この割れめに水溜りの膜ができるほど水分が多いとやはり酸欠を生じます。

また、ユーストマやペチュニアなどの微細なペレット種子では、コート層を溶かすように上面潅水を行いますが、水の勢いが強すぎたり、量が多すぎたりするとタネが埋没して発芽不良を生じることがあります。

水管理上の留意点

ペレット種子(野菜)−割層タイプ
ペレット種子(草花微細種子)− 溶解タイプ

 

フィルムコート種子

農薬取締法で種子処理が認められた殺菌剤や、殺虫剤を種子に粉衣することで、少量で、確かな効果を得ることができます。

薬剤とともに環境に安全な水溶性ポリマーに赤や青など、土と識別できる顔料をまぜ、種子に固着させることで、作業者にも安全なフィルムコート種子ができます。現在、国内販売されているF1カブ、F1キュウリ、スイートコーン、一部のキャベツ、ブロッコリーなどはフィルムコート処理がなされています。

タキイでは独自の方法で、スイートコーンなどのさまざまな形態の種子でも均一に薬剤を塗布できます。さらにキャベツなど小粒の種子にも均一にコートすることができます。

フィルムコート種子の特徴

  • 殺菌剤や着色剤を加えた水溶性ポリマー溶液で種子をコーティングし、種子周囲に形成する薄い被膜に薬剤を固着させたものです。
  • 発芽時の病害防除効果はもちろん、作業者に対する安全性向上の効果もあります。
  • 極めて少量の薬剤で効果的に病害を防除できる、環境に配慮した技術です。
ニンジンやレタス、キャベツなどはペレット加工することで、機械播種や手動の播種器を使った播種ができるようになる(写真は手動の播種器)。

プライミング種子

通常、種子は一定の温度、酸素、そして水分があると発芽します。ただし、発芽までの期間は一定ではありません。自然界では、急な環境変異に対応できずに死滅することも考えられるため、発芽に適した環境にあったとしても一度に発芽しないようにできていて、園芸用に育成された品種でもその性質をもっています。しかし不ぞろいな発芽は、農業の現場では、接ぎ木作業の効率化や一斉収穫の妨げになることがあります。
そこで、種子に一定の水分を吸水させ、種子のもつ水分(含水率)を精密にコントロールすることで、発芽の準備をすすめ、発芽直前の状態に至ったときに乾燥することで、プライミング種子ができあがります。

タキイでは特許取得の独自技術により早期一斉発芽を実現しています。

  • 種子が吸水して発芽に至るまでの代謝活動を、人工的に進めたもの。
  • 発芽ぞろいや発芽スピードの改善、また不良環境下での発芽向上など、大きなメリットが得られる。
  • トマトなど育苗や接ぎ木を行う作物では、特に発芽ぞろいが問題となります。早期一斉発芽するエクセルプライム種子は栽培のスタートである苗作りの成功に貢献します。

プライミング処理

精密な水分コントロールにより
発芽準備を進め、発芽直前の状態に。

プライミング処理

プライミング種子

発芽準備が完了しており、
一斉発芽が得られます。

プライミング種子

無処理種子

種子によって
発芽準備段階はさまざま。

無処理種子

プライミング種子を使用することで一斉発芽が可能となり、トマトなどでは接ぎ木作業の効率化が可能となります。ニンジンやタマネギでは、低温下でも発芽をそろえることができ、収量増につながります。

ただし、こうしたプライミング種子の寿命は通常の種子より短く、また高温、高湿度条件では、劣化が早く進むため、保管も密閉状態で冷蔵5〜10℃を保つなど注意が必要で、有効期限も6カ月〜1年(品目による)に限定しています。

一般にプライミング技術は、各社で技術開発が進められており、タキイでも独自の特許技術を核に常に新技術の開発に努めています。野菜ではエクセルプライムといい、草花では、フィルムコートを組み合わせた、クリスタルコートという商品名で販売しています。

プライミング処理の原理とは?

プライミングの原理を種子の個体で見た図です。青い線が通常種子、緑の線がプライミング種子です。

水分が増加するにつれ種子は吸水し、そこで、植物ホルモンの活性化などにより細胞組織が変化し、代謝の活性化が起こりそのまま経過すれば、細胞の伸張が起こって発芽にいたります。

プライミング加工

プライミング処理では、発芽に至る工程の最終段階で乾燥させることでプライミング種子となります。保管後、再度播種すると代謝がすでに進んでいるため、通常種子に比べ、短い時間で発芽に至ります。発芽は早くなりますが、最終の発芽率は、無処理と変わりません。

トマト「フルティカ」(播種4日後)。無処理の種子と比較して発芽が早くなる。
トマト「フルティカ」(播種4日後)。無処理の種子と比較して発芽が早くなる。

プライミング種子のメリット、デメリット

メリットとしては、発芽が早くそろう、ストレス環境下での発芽ぞろいがよくなるなど。デメリットとしては、通常種子に比較して保存性が劣ることです。

プライミング種子を使用するうえでの注意点

保管環境に注意する。推奨保管温度は5〜10℃です。夏場など播種まで時間がある場合は冷蔵庫で保管するようにします。

プライミングされた種子は、一度、種子が発芽しようとする力を活性化しています。プライミングされた裸種子を再度加工することは絶対にやめてください。現行ではエクセルプライムの有効期限は6カ月に設定しています。一度、開封した種子は、すべて播種できるように計画的に作業を進めてください。

プライミング種子取り扱い上の注意

エボプライム種子

主にホウレンソウ種子の発芽を改善するために行われている処理です。

ホウレンソウ種子は、かたい種皮でおおわれており、そのままでは、吸水しにくく発芽が遅れる特性をもちます(右図)。そのため、栽培現場では、播種前に浸漬処理を行うこともあります。ホウレンソウの本来の種子は、酸素、温度、水があれば3日程度で一斉に発芽します。そこで、果皮を薄くやわらかくすることで吸水性をよくした種子を、タキイではエボプライム種子として国内販売しています。プライミング種子のように種子の活性を高めているわけではないので、保存性は通常種子と変わりません。

ホウレンソウ種子の構造

エボプライム種子の特徴

ホウレンソウ種子の発芽を改善するエボプライム処理

  • ホウレンソウ種子は果被(果肉)でおおわれているため、コマツナやミズナなどその他の葉菜類に比べて発芽しにくい特性を持っています(上図 ホウレンソウ種子の構造)。
  • エボプライムは水分の吸収性を向上させるため、果被をやわらかくする処理を行い、発芽ぞろいをよくしています。播種前の浸水などの処理が不要です。
圃場での発芽試験結果

エボプライムは発芽ぞろいがよくなる反面、過湿条件下での発芽不良の心配もあります。

ホウレンソウ発芽障害の例 水の与えすぎ

直接の原因は過湿ですが、真の原因は酸素欠乏によって発芽プロセス(吸水第2期)の代謝が進まないことに起因しています。

ホウレンソウでは、播種後 雨に当たって、地表に細粒土が集まって塊ができることや、もみ殻くん炭や、寒冷紗のベタがけなどで加湿になることもあります。

ホウレンソウの過湿障害

過湿に弱い品目:
ホウレンソウ、
スイカ(特にタネなし)

※果皮や種皮が過剰に水を含んで、窒息が生じる。発芽過程(第2期)の酸素不足が原因

プライミング加工

シーダーテープ加工

水溶性の繊維や微生物分解性の原料を使用したテープに、種子を一定間隔で封入したものです。
シーダーテープで播種された種子は、深さが均一でまた、直線上に発芽・生存するため、効率よく栽培管理できます。

ホウレンソウの播種作業。シーダーテープ種子を使うことで、均一な深さ、株間で播種できる。
ホウレンソウの播種作業。シーダーテープ種子を使うことで、均一な深さ、株間で播種できる。
シーダーテープ加工種子(ネギ)。
シーダーテープ加工種子(ネギ)。

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タキイでは、皆さまに安心してご利用いただけるタネをお届けするため、
種子の精選・保管から、発芽・純度・病理の各検査に至るまで、
日々徹底した品質管理を実現し、品種特性を最大限に発揮できるよう技術改良に努めて参ります。

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