有機栽培のすすめ−臣先生の実践講座−有機栽培のすすめ−臣先生の実践講座−

講師 臣 康雄さん

講師 臣 康雄さん

タキイ研究農場で野菜育種に従事し、退職後は大学客員教授や企業コンサルタントとして活動。有機栽培の普及にも積極的に取り組んでいる。

取材:農園芸ライター

久野 美由紀

久野 美由紀

「タキイ最前線」本誌で連載中の「有機栽培のすすめ」。本誌では、有機栽培を実践する市民農園におじゃまし、体験をレポートしています。ネット版では具体的な実践方法を、講師の臣さんより伝授。第2回と3回は有機栽培の基礎である土づくりを取り上げます。

第2回健全な作物を育てるための土づくり1

単粒構造と団粒構造

久野

前回、畑に有機質を入れてやると、土が団粒化して作物を栽培するのに適した状態になるとお聞きしました。団粒化とはどういうことで、なぜそれがよい土なのでしょうか?

臣

例えば、山では肥料も水も施していないのに、樹やさまざまな植物が青々と茂っているね。土が団粒化すれば同じような状態になるということだ。少し詳しく説明してみよう。

土の構造には単粒構造と団粒構造があります。単粒構造とは土が細かい粒子のままサラサラしている状態をいい、団粒構造とは土の粒子がくっつきあって、かたまりになったような状態をいいます。
団粒構造をしていると土の中に多くの隙間(孔隙)ができ、そこに空気や水が入り込みやすくなります。土壌中の土のかたまりの部分を固相、空気を気相、水分を液相と呼びますが、それが4:3:3の割合で存在するのが植物の育ちやすい土壌構造だといわれています。その割合にするため、団粒構造をつくるのです。

単粒構造と団粒構造の違い

単粒構造と団粒構造の違い

土の粒子をくっつけて団粒構造をつくるには、接着剤として有機質…つまり堆肥を加えてやればいいのですが、そのままで土の粒子がくっつくわけではありません。有機質を土中の微生物が食べると、分解して糊状の粘着物質を吐き出します。それが接着剤の役割を果たして土の粒子をまとめ、団粒構造ができるのです。有機質自体も腐植となって糊状になり、その働きを助けます。
団粒構造の土には空気と水が多く存在し、植物や微生物が住みやすい環境になっています。水もちがよいのはもちろん、大雨などで急激に増水したとしても、隙間が多いため余分な水分は下へ抜けます。水分が多すぎると根腐れが起きやすくなるため、水はけのよさは非常に重要です。

堆肥を施すことで、水田の粘土質だった土がふかふかに変わってきている。

堆肥を施すことで、水田の粘土質だった土がふかふかに変わってきている。

一方、化成肥料は微生物のエサにはなりません。そのため、施しても粘着物質は生成されず、そればかりに頼って有機質を入れないと、土は単粒化してサラサラの状態になってしまいます。単粒構造の土は密に詰まっていて、空気や水の層が非常に少なく、微生物だけでなく植物にとっても住みにくい環境です。

化成肥料を施し、農薬をかけ…というやり方を続けていると、微生物は住み着かずに土はだんだんやせ細り、連作障害や病虫害も出やすくなります。それを防ぐためにできるだけ有機質を加え、団粒構造をつくって植物が健全に育つような環境にしていきましょう。
本誌で紹介している(『タキイ最前線』連載参照)2カ所の市民農園は、もともと水田のあった場所のため、土は粘土質で水はけも悪かったのですが、何年も堆肥を施すことでボコボコした非常に膨軟な土になってきています。

さまざまな堆肥−地域によって材料は変わる−

久野
だから、よい土にするには堆肥が必要なんですね。ただ、前回「お金をかけずに」とおっしゃっていましたが、簡単に用意できるものですか?
臣

買おうと思えばいくらでもあるけど、家庭菜園では身近にあるもの、手に入れやすいものを活用したい。それもねらいだからね。

一口に堆肥といっても、種類はさまざまです。取材した2カ所の市民農園でも、高槻は乗馬クラブから馬ふん堆肥を、守山では国土交通省が配布する河川敷の雑草堆肥を無料でもらってきています。地域によって、手に入るものが違ってくるのです。
牛を飼っている農家が近くにあれば牛ふんを分けてくれるかもしれないし、海の近くに住んでいれば魚粉に加工している所があって、安価で購入できるかもしれません。「こうすればよい」という正解はないのです。手に入れやすいものを自分で集めてみましょう。

本誌でも紹介した、滋賀県の野洲川河川敷にある雑草堆肥の配布所。多くの人が許可を受け、野菜作りなどに利用している。

本誌でも紹介した、滋賀県の野洲川河川敷にある雑草堆肥の配布所。多くの人が許可を受け、野菜作りなどに利用している。

高槻ファームでの草刈り風景。このような雑草も自家製堆肥の材料になる。

高槻ファームでの草刈り風景。このような雑草も自家製堆肥の材料になる。

落ち葉は山などで大量に調達でき、よい堆肥材料となる。

落ち葉は山などで大量に調達でき、よい堆肥材料となる。

堆肥の材料を調達し、自作することも可能です。山へ行けば落ち葉はたくさん集められるし、海辺なら海草でもかまいません。米作りをしていればわらやもみ殻はいくらでもあるでしょう。米ぬかなどは農家でなくても手に入れやすい材料の一つ。もちろん、畑の残さや周囲の雑草も利用できます。
とにかく、基本は身近にあるものを利用すること。営利栽培になるとこのようなやり方は難しいかもしれませんが、家庭菜園では自分なりに工夫して、できるだけお金をかけないようにしたいものです。

残さ堆肥のつくり方

久野
市民農園では、馬ふん堆肥、雑草堆肥のほかに、自分たちで残さ堆肥をつくって利用していますね。
臣

一番手っ取り早く手に入れられるのが、野菜を収穫した後の残さだからね。植物が土から吸い上げたものを戻してやる意味もあるんだよ。

久野
畑の隅に堆肥を積んでいますが、あれはどういう工程でつくっているのでしょうか。

残さ堆肥といいますが、基本は何を使ってもかまいません。雑草や落ち葉を加えてもいいし、生ゴミも使えます。ただ、魚や肉の食べ残しなどを入れると、猫や犬に荒らされたりするので、しっかり管理できなければ難しいものです。できれば野菜くずなど繊維質のものを使った方がよいでしょう。
残さはそのままでは使えません。収穫後の茎や根には虫や病原菌が付着しており、置いておくとそれらの住みかになってしまいます。そこで、一度集めて発酵させ、その際に出る熱で虫や病原菌を退治します。

残さ堆肥作成例

残さ堆肥作成例

やり方に特に決まりはありませんが、市民農園では畑の一角に囲いをつくり、その中へ残さなどを積んでいきます。これにできれば米ぬかや鶏ふんなどを加え、定期的に混ぜ合わせます。この作業を切り返しと呼びます。
切り返す際は空気を多く含ませ、発酵を促すようにします。未熟な部分があっても、混ぜることで全体に発酵の度合いがそろいます。また、60%程度の水分が必要なため、乾いていれば水をかけてかき回し、全体が均一に湿った状態にしておきましょう。なお、普段はブルーシートなどで覆い、余分な雨水が入らないようにします。
市民農園では月に一度ほど切り返しを行っていますが、なるべく頻繁に、2週間に一度できれば理想的です。

市民農園の囲いは三つに区切られており、堆肥は2〜3カ月で隣へ移します。最後に移すときは、残さや雑草はほぼ分解して土のようになっており、これでようやく畑へ施すことができるのです。
未熟なままの堆肥を畑へ施すと、畝の中で微生物が分解を進めて熱を出し、さらにはトマト根腐萎凋病などの原因となるフザリウム菌も発生するため、これらの作用で根を傷めることになります。完熟かどうかを確かめるにはミミズを入れてみることです。もし逃げ出せば、その堆肥は未熟だということ。しっかり完熟させてから施しましょう。

最初の青々とした残さを、何度も切り返して発酵させ、数カ月ごとに隣へ移動させる。
最後は分解して土のように。

最初の青々とした残さを、何度も切り返して発酵させ、数カ月ごとに隣へ移動させる。最後は分解して土のように。

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