夏秋キュウリの栽培…育苗管理
(1) 圃場の準備
 圃場は排水がよく、潅水のできるところで深耕、有機物の施用、pHの調整などを準備します。
(2) 育苗
 床土は保水性、排水性、通気性にすぐれ、肥料成分量や酸度などの化学性がよく、病害虫の心配がないこと。
  慣行床土は前年に原土と堆肥を3:7の割合で積み込み、切り返しの際、6m3当たりチッソ400~500g、リン酸500~1000g、カリ300~400gとpH6.5になるようにカルシウムを施し、土壌消毒します。
(3)

播種
 育苗日数は半促成栽培で35~40日、普通露地栽培で30~35日、抑制栽培で20日程度、播種期は定植予定日からさかのぼって決めます。台木、穂木とも同時まき。台木は条間6cm、種子間隔3cm、穂木は条間6cm、種子間隔2cmに条まきします。
 発芽適温は25~30℃ですが、やや高目の28~30℃に設定します。発芽そろい後は日中気温25℃前後、夜間の最低(地温16~17℃、気温12~13℃)で管理します。

(4) 接ぎ木
 効果は土壌病害の回避、低温伸長性の増大、耐移植性を確保します。さらにブルーム発生の抑止に使われます。ブルームレス台木の利用により果実表面のブルームが少なくなり、光沢を増し商品性が高くなります。
 呼び接ぎ、接ぎ木時の胚軸の長さは、穂木7~8cmで本葉出始め~0.5枚、台木6~7cmで本葉出始めの時です。まず台木の本葉をかき取り、安全カミソリの刃で胚軸の中心よりやや手前まで斜めに切り下げます。穂木は台木と同様にして切り上げます。この時穂木の胚軸は台木より細いので、切り上げる角度をやや弱くします。
 接ぎ木の位置は子葉下1cm程度が無難です。穂木と台木の切り込み部分が確実に接着するように合わせ、穂木側から接ぎ木クリップで止め、12cmポットに鉢上げします。3日間ぐらいはビニール密閉とし、風に当てません。日中30℃、夜間20~22℃。4~5日後の夜間より少し換気を開始し、その後徐々に換気を大きくして、3~4日で平常管理にします。換気開始ごろより夜間温度を徐々に下げ、最終的には13~14℃で管理します。
 接ぎ木後10日目(本葉1枚)にキュウリの足切りを行います。
キュウリの台木
品種名 草勢 胚軸の
太さ
耐病性 ブルーム 特性と生かすポイント
つる割病 うどんこ病
フォルテ 4 なし 大粒種子で胚軸が太く、接ぎ木が容易。うどんこ病耐病性。冬春栽培での低温伸長性にすぐれる。
スターク 4 大粒種子で胚軸がかたく、接ぎ木しやすく、うどんこ病耐病性で育苗管理が容易。強勢でスタミナが持続し、収量性が高い。
エイブル 中強 3.5   種子が大きく、接ぎ木作業が容易。強勢で、夏秋品種との組み合わせで能力を発揮する。
シェルパ 中強 3   低温伸長性にすぐれ、低温期の栽培で秀品・多収を目指す。
きらめき 2   草勢が中位のブルームレス台木。露地栽培で高秀品率栽培を目指す。
グリップ 中強 3.5   あり 種子が大きく、接ぎ木作業が容易。強勢で、接ぎ木後の障害葉の発生が少ないブルーム台木。大量の苗生産現場やブルームキュウリ栽培に。
ジャスト 4   耐暑・耐干性抜群、土壌適応性広い。強勢なので元肥は少なめでスタート。
鉄かぶと 4   耐暑・耐干性、つるもち抜群。強勢なので元肥は少なめでスタート。
黒タネ南瓜 4.5   低温伸長性抜群。吸肥力旺盛・実生栽培よりチッソを20%控える。
(5) 施肥
 一般に成分量で10a当たりチッソ30~35kg、リン酸35~40kg、カリ25kgを標準とします。
pH6.0~6.5に調節します。堆肥は前年秋に稲わら2t、石灰チッソ100kg、溶リン60kgをすき込みます。 キュウリの根は浅根性で酸素、水分を好むので有機資材を十分に施用するとともに深耕し、保水性、排水性をよくしておきます。
(6) 定植
 普通露地栽培は地温が13℃以上で晩霜の危険がなくなる時期が定植期で、中間地・暖地で5月中下旬、冷涼地で5月下旬から6月初旬です。トンネル栽培では20~25日早植えできます。
 夏すずみの場合、育苗日数約30日、本葉2.5~3枚の若苗(他品種は35日、本葉3~3.5枚)で、鉢全体に太くて白い根が十分に張ったガッチリした苗を定植します。定植数日前より最低気温を1~2℃下げて管理し、定植に備えて苗を外気に慣らします。
夏秋キュウリの栽培…定植後の管理
(1)
整枝
播種期と作型
畝 幅 条 数 株間および仕立て方 10a当たり栽植本数
4月   露地早熟 300~330cm 2 60~80cm、親づる1本仕立て 750~1100
80~120cm、親づると子づる1~2本の2~3本仕立て 500~800
5~6月 普通露地 280~330cm 2 60~70cm、親づる1本仕立て 860~1180
70~100cm、親づると子づる1~2本の2~3本仕立て 700~1000
7~8月 露地抑制 240~300cm 2 50~60cm、親づる1本仕立て 1100~1650
60~90cm、親づると子づる1~2本の2~3本仕立て 730~1370
 2~3本仕立てにする場合には、親づると4~7節から出た子づるを1~2本伸ばします。 主枝の6~7節目(高さ30cmぐらい)までの子づる、雌花は早めに除去します。(草勢が弱い場合には10節ぐらいまでの雌花を除去)。それより上の子づるは下から4~5節は1節摘芯、それより上位は2節摘芯とします。主枝はネットの高さになったら(25~30節)摘芯します。孫づるは下位のみ1~2節で摘芯し、以後は半放任とし、適宜摘芯します。
(2) 摘葉
 老化葉、病葉、日陰をつくっている葉を摘みます。特に親づるの葉は必ず摘葉します。1回当たり1株2~4枚、1週間に1~2回行うのを基本としますが、始め4~5回は定期的に行い、その後は収穫の際に順次摘葉を行います。生育後半は一度に5~7枚摘葉してもかまいません。
(3)

潅水と追肥
 キュウリは乾燥に弱い。高温時を避け、少量多回数の潅水とします。
 追肥は速効性肥料主体に1回当たり、チッソ成分で3kg/10aを7~10日おき(収量を1tとれたら追肥を1回が目安)に施用します。乾燥時には潅水を兼ねた潅水チューブによる液肥潅水が効果的です。

(4) 敷きわら・マルチ
 地温を調節し、雑草の発生を抑えます。乾湿の差を少なくし、土を膨軟に保つ。泥はねをなくし病害を防ぎます。温度が低い時期からの厚い敷きわらは地温を下げるためマイナスです。
(5)
健全な生育の姿
・成長点近くの茎が急に細くならない。
・成長点の芯が大きく包まれている。
・成長点より5~6節下で上向きに花が咲いている。
・葉柄が45度の角度で立っている。
・葉柄に対し、90度の角度で葉が展開している。
・下から順番に子づるが発生している。
・特に中段の子づるの発生が悪くなってない。
・節間が詰まりすぎず、伸びすぎず一定している。
・子葉がいつまでも緑色である。
・敷きわらの下に白い根が見える。
などの条件が満たされた姿が望ましい。
キュウリの収量
収量は半促成栽培で10a当たり12~13t。普通露地栽培で10t、抑制栽培で4~6tが標準です。