ナスの住みやすい環境
 果菜類の中でも、特に高温性の作物です。
発芽適温
 20〜30℃とされ、最低限界温度は11℃、最高限界温度は35℃です。ナスの種子は変温操作(昼間30℃、夜間20℃)をするとよくそろって発芽します。
生育適温
 昼23〜28℃、夜間16〜20℃。最低限界7〜8℃で、霜には非常に弱くマイナス1〜マイナス2℃で凍死します。最高限界は40℃です。
根の伸長適温
 28℃、最低8〜10℃、最高38℃。根毛発生の最低は12℃、最高38℃です。
花粉の発芽、発芽管の伸長
 適温は20〜30℃で、最低限界温度は15〜17℃、最高限界温度は35〜40℃です。
光飽和点
 約4万ルクスと果菜類のうちでは割合低い部類ですが、弱光下では軟弱徒長となり、花の発育が悪く、落花は多く、果実の発育は悪くなり、果実の着色も劣ります。ほかの野菜に比べて、着色のため特に紫外線を必要とします。
ナス花芽分化および開花結実の生理生態
(1) 花芽分化
 一般に播種後30日ごろの本葉2〜3枚展開、草丈4cmぐらいの時に花芽を分化し、8〜9葉で第1花を着花します。その後5日ぐらい遅れて第1花の2節上に第2花の分化が認められます。
  子葉展開後30日の6〜7葉苗では、6花の分化が認められ、第1花の着生している主茎上に3花、第1花のすぐ下の第8節のわき芽が伸長した第1側枝上に1〜2花、その下の節位の第7節から発生した第2側枝上に1花の分化が認められます。
 子葉展開後40日の10葉苗では、21〜23花の分化が認められます。
 子葉展開後50日の12〜13葉苗の第1花開花時では、48〜50花の分化が認められます。
 実際栽培では3本仕立てがとられ、第1花の開花期までの育苗期間中に36〜37花の花芽が分化していることになります。
1,2,3,……は着果順序
   着果習性として第1花が第7葉から第9葉ぐらいの節間に着生し、その後は2葉おきに着花して主茎となります。
  主茎の第1花のすぐ下の葉腋からわき芽が伸長して側枝となり、その第2〜3葉の節間に第1花を着生し以後2葉おきに着花していわゆる第1側枝となります。以後同じくその下から第2、第3側枝がでます。
(2) 開花、結実の生理・生態 
開花 ; 早朝から午前中にかけて開花。若干午後開花します。花の寿命は3〜4日です。
開葯 ; 開花にやや遅れて、葯先端が開孔(花弁半開から完全開花時)します。
受粉 ; 多くの花は自家受粉します。下向きに開花するため、葯の小孔から花粉が落ち、柱頭について受粉します。
花粉の発芽 ; 柱頭上で発芽し、花粉管を伸ばし、24時間で7mmぐらい、約48時間で子房内に入ります。子房中の胚のう内で受粉が行われ、受粉後50時間ぐらいで受精を終わります。雌しべの受精能力は開花直後から2〜3日間です。
 

(3) 開花結実の条件
温度 ; 日最高気温が20℃以上を持続するようになると正常な開花、結実が可能で、30℃くらいまでは悪影響はありませんが、35℃以上で結実障害を起こします。花粉発芽適温は20〜30℃です。
; 光量不足では同化量が減少し、栄養不良の結果、短花柱花(雌しべが雄しべより短い)が多発し結実性が低下します。
養水分 ; 不足すると栄養状態が悪くなり短花柱花が発生し、落花が多くなります。
(4) 花の形態と結実との関係
 正常花は大型で色濃く、花柱が長く、開花時には柱頭が葯の先端より長く突出しています(長花柱花)。そのため柱頭上に容易に受粉されます。しかし短花柱花は柱頭が葯筒内に隠されており、花粉粒はほとんど葯筒内に落花することがなく、柱頭上に受粉される機会が極めて少なくなります。