ナスの育苗
(1) 定植期の決定
 普通栽培は晩霜の危険がなくなり、地温15℃が確保できるころ、つまり暖地で5月中旬、冷涼地で5月下旬〜6月初旬ごろ定植します。
 トンネル栽培は普通栽培より20〜25日早植えが可能であり、ハウス栽培ではさらに20日程度早植えできます。露地抑制栽培では前作や労力、収穫期などを考慮して定植期を決めます。
(2) 播種期の決定
 播種期は定植期から育苗日数をさかのぼって決めます。育苗日数は接ぎ木を行う場合、ハウス・トンネル栽培で90日内外、普通栽培で80日内外、露地抑制栽培で50〜60日くらいです。定植期の苗は大苗で第一花が開花するころです。
(3) 播種
 ナスは休眠が強く、発芽をそろえるためには変温が必要です(前述)。播種量は10a当たり穂木・台木ともに各2,000〜3,600粒準備します。台木は穂木より別表のように数日早まきします。
 発芽までの日数は5〜6日で、トマトより1〜2日遅くなります。
 プラグトレイで育苗する場合には穂木200穴、台木128穴または200穴に播種します。
(4) 移植
 自根栽培では、本葉2〜3枚で12〜15cmポットに移植します。
 接ぎ木栽培では、本葉2.5枚で幼苗接ぎ木し、活着後は12〜15cmポットへ移植します。
(5) 台木の種類と特長
※B=青枯病  V=半身萎凋病  F=半枯病
品種名 低温
伸長性
幼苗接ぎ木
(穂木との播種間隔)
草勢
収量
総収
耐病性 生かすポイント
B V F
ミート 3〜4日早 中強 中多 草勢おとなしいので追肥は早目に施す
耐病VF 特良 同時〜3日早   元肥のチッソは自根栽培より10〜15%少なくする
台太郎 同時〜2日早   幼苗・機械接ぎに最適
赤虎 特良 同時〜3日早   低温性を生かしハウス栽培で利用
青枯耐病性の赤ナスタイプ
赤ナス 3〜4日早 中多     節間を長くさせると接ぎ木しやすい
トルバム・ビガー 13〜15日早 極強 極多 接ぎ木までの生育は遅いので注意
トナシム 12〜14日早 極強 極多 トゲのないトルバム型台木
発芽はトルバムよりよい
(6) 接ぎ木
 従来から割り接ぎ(ナス・トマト・ピーマン)や挿し接ぎ(ナス・スイカ・キュウリ)、呼び接ぎ(トマト・キュウリ・スイカなどの個人農家)が行われてきましたが、近年ナスにおいては、チューブやピンを使ったセル苗での幼苗接ぎ木が広く行われています。
割り接ぎ 台木が本葉5〜6枚、穂木4〜5枚時に台木は1または2葉残してカットし、1〜1.5cmの深さに切り込みを入れます。穂木は2〜3葉つけてV字型に切り、台木の割れ目に差し込み接ぎ木バンドかクリップで止めます。従来からの接ぎ木法で今も行われています。
チューブ接ぎ 台木、穂木を斜めに切り、切り口を合わせて1.5cmぐらいの長さのチューブで固定します。
タキイ式ピン接ぎ ナスの接ぎ木には好適。セラミックの芯でつなぎます。台木の節間が短くても接ぎ木できて、穂木と台木の太さが異なる場合でもチューブ接ぎより融通が効く利点があります。
幼苗接ぎ木の場合…
 ・接ぎ木後1〜2日目:温度28℃・湿度98%
 ・接ぎ木後3〜5日目:温度25〜28℃・湿度93〜95%
 ・接ぎ木後6〜7日目:温度20℃・湿度90%以下
養生して活着を促します。