ネギの種類と栽培
ネギは、関東以東で栽培が多く、土寄せを行い軟白した葉鞘部を商品とする根深ネギ(長ネギ、白ネギ、一本ネギ)と、関西以西で栽培が多く、葉全体を出荷する葉ネギ(青ネギ、細ネギ、小ネギ)に大別されます。葉ネギでは、定植による栽培が中心で「九条太」に代表されるような中大ネギから、直まきでの栽培により短期間で栽培する細くて小さい小ネギなどさまざまなサイズで出荷されています。
根深ネギの栽培
過去は関東主体の春まき秋冬どり作型での栽培が大半でしたが、近年は産地が全国各地に広がり、また品種改良によって多くの作型が分化し、周年で供給されるようになってきました。
ここでは、春まき秋冬どりの基本作型について栽培のポイントをあげます。
(1) 育苗
育苗方法は、慣行の地床育苗とチェーンポットやセル成型ポットによる育苗に分けられます。近年では、省力化を目的として後者の育苗が多くなっています。
地床育苗では排水性のよい圃場を選び、播種1ケ月前くらいには完熟堆肥と元肥を入れ、よく耕うんしておきます。pHは5.8〜7.0の弱酸性から中生が適し、施肥量は苗床1a当たりチッソ成分で1sとします。播種は管理しやすい条まきとし、育苗期間60〜80日程度で本葉3〜4枚の苗に仕上げます。
チェーンポットやセル成型ポットによる育苗では、地床より乾燥や温度に対する緩衝力が小さいため、こまめな管理が必要です。苗床にトレイを設置する置床育苗とベンチ上にトレイを置くベンチ育苗がありますが、ベンチ育苗の場合は特にこまめな潅水や肥培管理が必要です。また、草丈が20pを超えてくれば15〜18p程度の長さに剪葉を行い、倒伏や病害を防止し、葉鞘を太く仕上げます。定植までに2〜3回の剪葉を行い、育苗日数50〜60日で活着のよい健苗に仕上げます。
(2) 本圃の準備と肥培管理
ネギは在圃期間が長い作物ですので、生育途中の肥切れや過剰施肥は、順調な生育の妨げとなり、病害の助長や品質低下を招きます。最終的な本圃のチッソ成分は10a当たり20〜25s程度で、元肥に全チッソ量の1/3〜1/2を施し、残りを土寄せに合わせ数回に分けて追肥します。
(3) 定植〜土寄せ
栽植密度は、条間90〜100p、株間2〜3pで、10〜15cm程度に掘った溝の底に定植します。植え溝に土を戻し平らにする削り込みを1〜2回、土を株元に盛っていく土寄せを3〜4回、合計で4〜6回行います。土寄せは葉の分岐部よりやや下としますが、最終土寄せ(止め土)は分岐部よりやや上として、適期の収穫を行い、葉鞘の上部が薄緑色になる「ボケ」を防止します。最終土寄せから収穫までの目安は、夏どりで20〜30日、秋では30〜40日、冬では40日以上程度となります。
(4) 収穫
ネギは収穫適期を過ぎると品質低下を招くので、適期収穫を心掛けます。皮むき調製は、通常葉を3枚残します。軟白部分は、産地により差がありますが、夏どりで25p、秋冬どりで30p以上が出荷の基準となります。
葉ネギの栽培
葉ネギは、いろいろなサイズで出荷されるので、目的とする出荷サイズに応じた栽培が行われています。直まきによる小中ネギ栽培や移植による中大ネギ栽培、九条ネギの干し苗利用による中大ネギ栽培などがあり、産地によってさまざまです。
(1) 小ネギのハウス直まき栽培
土づくりが最も大切で、有機物を施し排水性、保水性、通気性のすぐれた土壌を準備します。施肥は、チッソ成分で15〜20s/10a程度とします。播種は、播種機を用いて条まきで播種します。条間約20p、まき幅約10p程度で、1m当たりの播種量は約150粒程度です。栽培管理では潅水管理が最も重要で、生育前半はこまめで十分な潅水により適湿を保ち、後半は潅水を制限してかたく仕上げ、店持ちを向上させます。収穫は、草丈50〜55p程度で、夏季は60〜70日、冬季は120〜130日ほどの栽培期間となります。高温期は鮮度を保持するために、気温の低い時間帯に収穫します。
(2) 中ネギの露地移植栽培
近年は、セルトレイなどによる育苗が多く行われています。育苗方法は根深ネギと同様ですが、最終的な目標のサイズによって播種量や圃場での栽植密度を決定します。中ネギサイズでは1穴に10粒程度播種する場合が多く、育苗日数は夏季で40日程度、冬季で50〜60日程度となります。本圃の肥料はチッソ成分で20〜30s/10aが目安で、そのうちの20〜30%追肥として施します。追肥時に中耕を兼ねて除草と軽く株元に土寄せします。時期と収穫サイズによりますが、定植後2〜3ケ月で収穫となります。
(3) 九条ネギの干しネギ栽培
京都の伝統野菜である「九条ネギ」は高温期には株元が太って、休眠し不良環境に対応します。典型的な栽培方法は、10月に播種し、3〜4月に仮植し、7月下旬〜8月上旬ごろに掘り起こし、約2週間程度かけ干しし、盆過ぎに定植します。定植時には、15cm程度に葉を切り、枯れ葉を除去します。冬季には大株になり、寒さに合うと特有のぬめりと甘みが増し、鍋物やすき焼きに最適です。
タキイ品種根深ネギ特性表
品種名 系統 草姿 草勢 分けつ 葉鞘部 耐暑性 低温伸長性 耐寒性 食味
ホワイトソード 合黒 40〜48cm
ホワイトスター 合柄 40〜50cm
 ホワイトタイガー  合柄 40〜50cm
ホワイトツリー 黒柄 40〜50cm
一文字黒昇り 黒柄 40〜45cm
清 滝 合柄 極小 40〜50cm

タキイ品種葉ネギ特性表
品種名 草姿 草勢 分けつ 葉色 耐暑性 耐寒性 食味
京千緑 極立 極濃緑
小春 濃緑
小夏 濃緑
黒千本 濃緑
 浅黄系九条  極多 鮮緑
九条太 濃緑