ピーマンの育苗
(1)定植期の決定
 露地栽培では晩霜の危険がなくなり、地温15℃が確保できるころ、つまり中間地で5月中旬、冷涼地で5月下旬〜6月初旬ごろ定植します。トンネル栽培は露地栽培より20〜25日早植えが可能で、ハウス雨よけ栽培では、さらに20日程度早植えできます。
(2)播種期の決定
 播種期は、定植期から育苗日数をさかのぼって決めます。定植適期苗は1番花が開花直前のころで、育苗日数はハウス・トンネル栽培で75日前後、露地栽培で65日前後です。
(3)播種
 種子は10a当たり1,500粒準備します。播種はプラグトレイで育苗する場合は、128穴または200穴トレイに播種します。昼夜とも地温25〜30℃に保てば、5〜6日で発芽し始め、10日間ぐらいで発芽が揃います。
(4)移植
 播種後25〜30日に12〜15cmポットに移植します。育苗中に本葉がふれあい、込み合うようであれば、随時株間を広げて徒長しないよう注意します。
(5)育苗温度
 日中は27〜28℃で管理します。夜温は発芽してから1回目の移植までは18→16℃、移植後は16→14℃、定植1週間前には14→12℃と徐々に温度を下げていき、植え傷みが少ないように、圃場の条件に慣らしていきます。
(6)潅水
 潅水はできるだけ午前中に行い、量は夕方に鉢土の表面が乾く程度とし、がっちりした苗に仕上げます。
ピーマンの定植
(1)土壌条件
 土壌に対する適応性は広いが、中性ないし弱酸性が適します。ただし土壌の乾燥や過湿に弱く、特に湛水には弱く、24〜48時間浸水すると枯死する場合もあります。
(2)定植苗
 若苗では定植後過繁茂になりやすく、老化苗では活着不良になりやすいので、定植は1番花の開花直前の苗を植えるようにします。ただし育苗鉢が小さくて早くから根巻してしまう場合は、やや若苗で早めに定植します。
(3)施肥
 目安として元肥は、10a当たりチッソ20〜25kg、リン酸25〜30kg、カリ20〜25kgのほか、堆肥2t、苦土石灰80〜120kgを施します。
 追肥は1番果収穫時期から始め、10〜14日おきに、化成肥料で10a当たりチッソ成分量3kgを施します。液肥で行う場合は、1回当たりチッソ成分1〜1.5kgを7〜10日間隔で施します。
(4)畝幅と株間
 栽植株数は、10a当たり1条植えで1,000株が標準です。1条植えで畝間180〜200cm、株間50cmとなります。
ピーマンの定植後の管理
(1)整枝方法
 ピーマンはトマトやナスに比べて、厳密な整枝方法はありません。トンネル・露地栽培では1番花より下のわき芽を除去し、それより上は放任とします。栽培を続けていくと、枝が込み合ってきますので、その場合はふところの細い枝を中心に間引き、採光、風通しを図ります。誘引はフラワーネットを横に張り、各穴に枝を通す方法が簡易的です。
 ハウス栽培の場合は第2次分枝で分かれた4本の枝を主枝として、4本仕立てにしますが、その場合側枝は、3〜4節で摘芯して採光を図ります。ハウス栽培では、タコ糸で主枝誘引するようにします。
(2)草勢判断と肥培管理
 追肥と潅水は、ピーマンの収量安定に大きく関係してきます。ピーマンの根群は畝の表面近くに集まり、しかも細いので乾燥に弱く、吸肥できる範囲も狭いものになります。
 肥料切れを起こしているかどうかの判断の1つとして、花柱(雌しべ)の長さを見ます。雄しべより雌しべが短い短花柱花が多いと草勢低下(肥料不足)のサインなので、速効性の肥料で追肥します。短花柱花は自然には受粉しにくいので、落花して収量が減少します。
 追肥と同様に、畝の水分も生育を大きく左右します。特に梅雨明け後の高温乾燥は、畝の乾燥によって根の生長が抑えられるため、水や養分の吸収が悪くなって株全体の生育が悪くなります。畝の水分状態を安定させるためにマルチをしたり、夕方から畝間潅水などをしてやることが大切です。
(3)収穫
 肥大に要する日数は、高温期で17〜20日、低温期で25〜30日程度で、1果当たり30gで収穫します。収穫は2〜3日間隔で行い、植物体への負担を軽くするのが長期多収のポイントです。遅れてしまうと草勢の低下につながり、着果数が減少するので注意します。草勢が低下したら少し若い小さめの果実を収穫し、草勢の回復を図ります。