ホウレンソウの種子
ホウレンソウの種と思われているものは、実は果実で本当の種子は硬いカラ(果皮)に包まれたその中にあります。このカラが種子を保護するとともに、休眠をしたり、硬実種子となって発芽を抑制したりします。一般にはカラに包まれた種子をまきますが、カラの形がトゲの出た角種とトゲのない丸種とがあります。丸種の20ml当たりの種子粒数はサイズにもよりますが600〜900粒、角種は500〜700粒です。
ネーキッド種子(発芽促進のために硬いカラを取り除き裸状にした種子)は20ml当たり2,300〜2,600粒です。
播種量は丸種では10a当たり3〜5L。ネーキッド種子で0.8〜1.5L。角種で9〜12Lくらい必要となります。
ホウレンソウの住みやすい環境
冷涼な気候が最適です。
発芽適温
15〜20℃とされ、発芽は4℃までは可能です。25℃以上では発芽が抑制され、35℃以上になると発芽できなくなります。
生育適温
15〜20℃で、低温に強く−10〜−15℃にも耐えますが、耐暑性は極めて弱くなります。25℃以上では生育が抑制され、病害(立枯病、根腐病)が多発します。
ホウレンソウを良作するには根を作れ!
ホウレンソウの根は旺盛で、根系は広く、深く発達します。最適土壌は有機質に富み、耕土が深く、団粒構造で肥よくな排水良好土壌です。土壌適応性は広いが酸性土壌には特に弱い作物で、pH5.5以下では生育が劣ります。
ホウレンソウの西洋種と東洋種の違い
西洋種は特に晩抽性で春〜夏まき用に使用します。一般に丸種で葉は卵形または長卵形で葉肉厚く欠刻(葉の切れ込み)が少ない。
東洋種は抽苔が早く、一般に角種。葉は長三角形で葉は葉肉薄く欠刻があり、根部の赤色は濃くなります。
和食のおひたしには東洋種の方が歯ざわりよく、食感がすぐれています。
近年はF1(一代交配種)種が主体で、西洋種と東洋種のすぐれた点を併せもつ品種が出回っています。
ホウレンソウのトウ立ち(抽苔)はなぜ起きるか?
長日条件によりますが、幼苗期の低温でも促進されます。積算日長は450〜500時間といわれています。播種後長日期には15日以内、短日期には30日以内で花芽が形成されます。分化は日照時間の長短の影響を受けることは少ないのですが、分化後の花芽の発育(抽苔、開花)には長日の影響が顕著です。なお不良条件での栽培は抽苔を招きやすいので注意します。
ホウレンソウには雄株と雌株があり、さらに間性株がある
雌雄株は人と同じようにほぼ1:1に現れるのが普通ですが、中には両性花を交える株もあります。
純雌株、純雄性株のほか、偏雌間性株、偏雄間性株、栄養性雄株、次雄性株、(西、平岡による)など中間的な性質を示す株もあります。この偏雌間性株を母親として利用し、F1(一代雑種)の採種をしています。
ホウレンソウの休眠
ホウレンソウの種子には休眠があります。採種直後は発芽しにくく、約3カ月ほどの休眠がありますが、休眠を早く破るには、乾燥種子を盛夏の直射日光に2日間当てるだけで有効です。5日間処理で実用的な発芽率に達します。なお高温期の播種では休眠を引き起こして発芽不良となりがちです。
ネーキッド種子とは?…裸のタネ
ホウレンソウの種子の表面にある硬いカラ(果皮)を取り去って裸にされた種子のことで、発芽の勢いや発芽率が極めて高くなり、2日ほどで一斉に発芽します。その後の生育もそろって早く良品質のものが一斉収穫できます。ただ乾燥の激しい場合には播種前に圃場に十分潅水するか、覆土をやや厚めにし、鎮圧をやや強くします。