こどもピーマン 「ピー太郎」良作のポイントを伝授にがくない!

ピーマン独特の苦みと青臭さを抑えた画期的な品種こどもピーマン「ピー太郎」。このおいしいピーマンをもっとおいしく、さらに秀品率を上げるために、これまでの産地の栽培情報から良作のポイントを見ていきます。

こどもピーマンの特長

1苦みや青臭みが少なく食べやすい!

苦みを感じさせるポリフェノール類の含有量が、普通ピーマンの約10分の1なので、子どもでも食べやすいピーマンです。

2肉厚ジューシーで食べごたえ抜群!

パプリカなみに果肉が厚く多汁。生食のほか、焼く、炒めるなど多彩な料理でしっかりした食感を楽しめます。

3栄養価が高い!

機能性成分の含有量が多く、普通ピーマンとの比較では、ビタミンCは約1.5倍、カロテンは約2倍含んでいます。

こどもピーマンと普通ピーマン
苦みに関するポリフェノール類の含量比較ビタミンC含量の比較カロテン含量の比較

(いずれも、タキイ研究農場調べ)

「こどもピーマン」誕生秘話―もとは激辛トウガラシ?

「こどもピーマン」のもとになったのは、トウガラシの本場メキシコで味のよさに定評のあるハラペノWというトウガラシです。激辛で日本人には到底受け入れられるものではありませんでしたが、メキシコ向けのトウガラシを育成している中で、まったく辛くない個体が見つかりました。その辛くない個体の育成から「こどもピーマン」が誕生しました。辛みを作る能力が完全に欠損しているので分類上はトウガラシではなくピーマンになります。

良作のポイント

良作のキモは初期の株作りにあり

ここ数年、夏場の猛暑は農作物にさまざまな被害をもたらしていますが、「ピー太郎」も露地で作付けされ、猛暑の夏にあうと盛夏期に短果、歪み果、表面のアントシアン(黒あざ果)が増える傾向にあります。
これは草勢が弱くなったことが大きな原因です。
「こどもピーマン」良作の最重要ポイントは初期の株作りにあります。いかに初期にしっかり根を張らせ、株を作るかがその後の成否を分けます。
「ピー太郎」は普通のピーマンに比べ細根の量が少なく、太い根が主体で下に向かって伸びるタイプです。太い根は長もちしますが、水分や肥料への反応が鈍いので、それだけ根をしっかり張らせ根量を確保する必要があります。

秀品率を維持するための3つのポイント

秀品率を維持することを最大の目標とし、収量は普通ピーマン比で80〜85%(重量比)を目指します。

普通ピーマンとの比較
普通ピーマンとの比較
1.温度管理

生育適温の下限は、目安として普通ピーマンより約2℃高いと考えてください。寒い時期の保温対策は万全に行ってください。

2.根量の確保

細根が少なく根の張りが緩やかなため、初期に根をしっかり張らせ、長期収穫に耐える根量を確保してください。

3.肥培管理

草勢が落ちると普通ピーマンより回復に時聞がかかりますので、収穫開始後は追肥・潅水が遅れないよう注意してください。

栽培環境

  • 夏秋栽培が品種特性を最も発揮しやすい条件となります。雨よけ施設があれば、より作柄が安定します。
  • 抑制栽培では、栽培前半に遮光・換気、若苗定植など、高温対策が必要になります。
耕種基準・作型表
耕種基準・作型表

育苗

全作型共通

【潅水】節間が伸びやすいので、夜まで水が残らないよう、量に注意します。
【ポット間隔】徒長防止のため 1 苗当たりの十分な空間を確保します。

※接ぎ木栽培について:穂木と台木の親和性の関係で、使用可能な台木は現状ありません。
自根での栽培になります。

雨よけハウス・トンネル・露地栽培

【播種期】普通ピーマンより「1週間遅い」感覚で低温期を避け行ってください。
【最低気温】本葉5〜6枚まではしっかり夜温を確保してください(14〜16℃)。
【成苗】低温対策のため大苗が理想です(12pポット程度)。

抑制栽培

【成苗】高温対策のため、やや若苗が理想です(9〜10.5pポット程度)。

育苗目安(夏秋露地用)
育苗目安(夏秋露地用)

圃場準備

全作型共通

【堆肥】元肥設計に組み入れ、定植30日前には施用してください。
【潅水設備】 露地、ハウスを問わず、十分潅水できる設備が必要です。できれば畝上に潅水チューブを設置してください。

雨よけハウス・トンネル・露地栽培

【地温確保】定植時に17℃以上を確保していることが理想です。定植1週間前には畝を立てます。高畝は地温が上がりやすく、排水もよくなります。
【保温資材】マルチの使用が理想です。栽培環境の最低気温が12℃以上を確保できる時期まではトンネルを併用します。

抑制栽培

【高温対策】栽培前半は地温が上がりすぎないよう、マルチの色は、白やシルバーにしてください。最初は裸畝で マルチは後張りでもかまいません。
【乾燥対策】定植直前に畝上げし、畝の乾燥を防ぎます。潅水チューブを通路に設置し、水打ちを行うのも効果的です。

定植から活着まで

【定植苗】根の巻きすぎた老化苗での定植は避けましょう(写真参照)。
根がポットに回りかけた時期が適期です。
【仮誘引】定植後は仮支柱で倒伏を防ぎます。
【潅水】根の動きが緩慢なので、乾燥させないよう適切な湿度を保ってください。

定植適期は根鉢で判断
定植適期

定植適期

老化苗

老化苗

「ピー太郎」の初期の根張りをよくするうえで、非常に重要なのが苗を老化させないことです。ピーマン類は育苗期間が長いため、育苗中に移植の機会が出てきますが、移植前の時点で根がガチガチに回っていると、根が窒息して傷んでしまい、移植後の根張りに支障をきたします。また、低温や高温、乾燥や過湿など一層条件の厳しい圃場定植の時に老化苗になっていると、活着が遅れ、その後の作柄に大きなマイナスになります。必ず適期の写真のように、根が回りかけの時に移植や定植は行ってください。

仮支柱が必要です

仮支柱が必要です
「ピー太郎」は節間が長いため本誘引までは自立が難しい場合があります。直立状態を保つことで、速やかな活着、根張りが促進されるので、仮支柱を立てましょう。

活着から収穫開始

【わき芽かき】第1次分枝の下に発生する複数のわき芽は、それぞれ10cm程度の長さに伸びてから2〜3回に分けて除去します。
【摘果】第2次分枝以下に着果した果実は早めに摘果し、初期は株作りに栄養を集中させます。

わき芽かき完了の状態

わき芽かき完了の状態
最終的には写真のように第1次分枝下まではわき芽がない状態にしますが、ある程度伸びてから取ることで初期の根張りが促進されます。

収穫開始とその後

収穫基準
  • 果皮表面のヒビ入り始めが最適期です。
  • ヒビの入り過ぎは外観が悪く商品価値を下げ、着果負担も増します。
  • ヒビのまったくない若どりでは、青臭みが残り甘みも不十分です。
収穫適期の果皮のヒビ目安
収穫適期の果皮のヒビ目安

果実表面にヒビが入り始めたころが収穫適期。開花から収穫までの期間は、6〜8月であれば、4週間程度が目安です。

適期になると葉面にヒビが出ます。

適期になると葉面にヒビが出ます。

肥培管理

【追肥開始適期】 第3次分枝以降の着果が確認できたら開始します。
草勢判断を随時行い、弱ければ開始を早めます。
【追肥量】1週間に10a当たりチッソ成分1.5〜2kg程度を目安としてください。
【追肥方法】液肥主体で、補助で緩効性の粒肥との併用が理想です。
【潅水】 収穫開始後は晴天時なら、株の生長に合わせ1日に1株当たり2〜4ℓを目安にたっぷり行ってください。

もっと詳しく知りたい人に【追肥の目安】

10aでは、1000本定植で、1果40gとして、1株25本収穫で1tになります。ピーク時は約3週間で1tとれます。普通ピーマン施肥量に換算すると収穫1tにチッソ成分5〜6kgが基準ですから、ピーク時は1週間に10a当たり固形化成肥料でチッソ成分1.5〜2kg、追肥の必要があります。「ピー太郎」は肉厚で尻腐れが出る心配も少なく、肥料の効きもゆっくりですから、ピーク時に限らず2〜3個幼果が見えた時からこの程度の量を目安に、1週間に1回のペースで追肥を始めてください。速効性の液肥と緩効性の粒肥の併用が理想です。

草勢低下時の対策

草勢の判断基準

草勢判断は重要なポイントです。3点分かりやすい判断基準を紹介します。

雄しべの長さ 開花節と成長点 葉身の長さ
草勢低下時の5つの対策

草勢が低下していると判断したら、@〜Dの対策を実施します。
@栽培初期からおとなしい場合、追肥開始時期を早める。
A追肥、潅水をよりこまめに行う。
Bチッソ・カリが主成分の葉面散布剤を5〜7日おきに施用する。
C整枝を控える。
Dクズ果の摘果を積極的に行う。

誘引・整枝方法

ひも誘引(ハウス向き)

・4本仕立てが一般的です(図参照)。2次分枝からの4本の枝を主枝として振り分け誘引します。各主枝から発生する側枝は3節前後で摘芯します。
・誘引棚の最上部に届いた枝から順次摘芯していきます。

仕立て方
ひも誘引
ネット誘引(露地向き)

ネット誘引(露地向き)
・枝折れを防止するため、畝面から高さ80p以内に1段目のフラワーネットを設置します。以降は生育に合わせて2、3段と追って設置します。
・第1次分枝から上の枝は原則放任とし、ふところ枝が重なってきたら内向きの枝を中心に整枝して2〜3節で止めます。

ネットの貼り方

生理障害・病害例とその対策

黒あざ果

【原因】直射日光(紫外線)が果皮に直接当たり、アントシアンが発色することで黒くなります。
【対策】草勢を強く保って葉を茂らせ、果実の日陰を作ります。ハウス・トンネル栽培の低温期では早朝からの換気を控え、遅めに行うようにします。

黒あざ果
果形の乱れ、短果

【原因】肥料切れ・なり疲れ、乾燥・高温・低温による花質悪化、花粉稔性低下で肥大が鈍ります。
【対策】初期にしっかり株を張らせて、適切な肥培管理、温度管理を行います。

果形の乱れ、短果
炭疽(たんそ)病

【原因】圃場が排水不良の場合に多発します。草勢低下、降雨時にとくに進行が早くなります。
【対策】予防剤を定期的に散布しましょう。発病した果実は摘果し、圃場の外に持ち出します。高畝や排水路の確保で水はけのよい環境を保つようにしてください。

炭疽(たんそ)病
黄化えそウイルス病(TSWV)

【原因】ウイルスを保毒したアザミウマが飛来し、吸汁することで感染、発病します。
【対策】アザミウマの防除につとめます。発病株は伝染防止のため発見次第処分しましょう。

黄化えそウイルス病(TSWV)