2017/02/20掲載
太陽熱消毒、フスマや米ぬかを用いた土壌還元消毒、ダゾメット剤による薬剤消毒では作土層より深い層の青枯病菌の殺菌は難しいものがあります。そこで、深さ50cm程度まで還元効果が期待できる、糖蜜を用いた土壌還元消毒法が一定の成果が出ています(第1表)。
第1表 土壌還元消毒の違いによる青枯病被害率
(H21 海津市(A氏)、西濃農林事務所)
また、平成22年度の東海農政局調査では、青枯病菌の土壌深層での生存及び糖蜜による殺菌効果が判明しました(第2表、第1図)。
第2表 糖蜜による土壌還元消毒の青枯病菌密度
(単位:個/土壌1g 、H22輪之内町(東海農政局))
第1図 土壌還元消毒実施時の土中温度(℃)
(H22 輪之内町(C氏)、東海農政局)
新潟農試の方法を基準に、各産地・生産者ごとに被害面積や施設設備の状況などにより、応用し実施しています。
耕うん後、10a当たり40〜50缶(1缶18ℓ)の糖蜜を水で3倍程度に希釈し、潅水チューブや動力噴霧器で散布します。その後、湛水状態になるまで潅水を行い、地表面を透明ビニールで被覆し、ハウスを密閉します。夏秋トマトでの事例は以下のとおりです。
写真4 (➊〜➐)飛騨市、H24,25 飛騨農林事務所
波板で圃場外に糖蜜が漏れるのを防ぐ。
糖蜜を水で希釈しながらタンクに注入。
糖蜜を散布(写真は頭上潅水)。
湛水状態になるまで追加潅水。
地表面をビニール被覆。
ハウスを密閉する。
水口は必ず止めておく。
実施4〜5日後に、ドブ臭がすれば、還元が順調な証拠です。
冬春トマト(平坦地)では夏(7月中旬)処理で2〜3週間後、夏秋トマト(高冷地)では春(4月中旬)処理で約1カ月後に透明ビニールを除去し、耕うん後、土壌を酸化状態にして作業を終了します。
糖蜜の価格は10a当たり約10万円と高価であるうえ、希釈や散布などに時間がかかることが難点です。
また、土壌の排水が悪い圃場で実施したところ、雨水が滞留し土壌がかたくしまり、以後の栽培で湿害発生の事例があります(写真5)。土壌の透排水性に課題がある場合は、事前の土壌改良が必要となります。
写真5
圃場サイド(右)が湿害(飛騨市)。(H25飛騨農林事務所)。
2022年
春種特集号 vol.53