「農福連携」とは福祉の現場に農業を取り入れる活動です。
京都府では農福連携を通して、障害者の就労支援や、
多種多世代の人々が地域の担い手になっていく京都式地域共生社会づくりを推進しています。
京都府にある390の福祉事業所のうち、
約60の事業所が「農福連携」に取り組んでいます。(2021年2月現在)
2017年、こうした取り組みを行う事業所をサポートするため、
健康福祉部門と農林水産部門が連携して
「きょうと農福連携センター」が立ち上げられました。
京都府は京都式農福連携を推進するため、6次産業化を見据えた営利栽培を指導できる技術員を求めていました。そこで、「農業のチカラ」で社会に貢献したいと考えていたタキイが協力することになりました。長年、研究農場の第一線で活躍してきたOBが指導にあたり、栽培品目、品種の選定、栽培指導を行っています。
土づくり、播種、定植といった栽培に関する基礎技術が乏しく、職員、利用者が手探りで栽培しているのが現状です。
ある事業所では、野菜を減農薬で栽培。病害虫に悩まされ、少量しか商品化できず売上にはつながりませんでした。
雑草が生い茂り、除草に費やす時間が長くなると利用者のモチベーション低下につながります。防草シートや園芸資材を活用し、できるだけ長く収穫ができるような品目、品種選びが重要です。
これらの悩みを解決するために、農業のプロである
タキイが講師を派遣しサポートしています。
きょうと農福連携センター事業の一環で、障害のある方に農業の基本について講義、実習を通して学んでいただく取り組みが2017年からスタートしました。土づくり、播種、苗づくり、定植、農園管理、収穫、販売など一連の作業を経験し技術の習得を目指しています。実習終了後には受講生に「修了証」が渡され、農作業を続けていく自信や励みとなっています。
受講生のうち数名が、一般企業に就職。農作業のグループリーダーを務め、一区画を1人で管理するなど中心的な役割を担うようになりました。
「畑で実際に作業をこなし、映像やイメージも合わせたわかりやすい講義で理解しながら学ぶことができた」「学んだ内容を現場で生かせるよう頑張っていきたい」と嬉しい声が届いています。
畑づくり・土づくり
ミニトマト苗の定植
芽かき、誘引、雨よけ栽培
水やり、追肥
収穫練習、安全な農作業環境づくり
収穫・調製・販売、農薬と肥料の取扱い
長年、研究農場に併設されているタキイ園芸専門学校の生徒を指導し、産地での講習会など経験は積んでいましたが、障害のある方への指導は勝手が違います。知的障害、精神障害、発達障害、聴覚言語障害の方など多岐にわたり、その程度も異なります。手話、板書などを組み合わせて受講生に少しでも理解していただけるように対応しました。
研修後、修了証を受け取る受講生の自信に満ちた表情を見て大きな手応えを感じました。農作業にやりがいを感じ、工賃向上や地域共生社会が実現することを期待しています。
農福連携プロジェクトを始めた2017年以降、福祉の現場に農業を取り入れる事業所が増えてきました。利用者だけでなく、職員にも基礎技術を指導して欲しいとの要望が高まり、事業所が希望する品目を指導する「出前講座」を実施することになりました。畑の規模、環境、ハウスや農業資材は異なります。そこで各事業所に合った品目の選定、栽培法を指導しています。
2022年、複数の事業所で同一品目を生産、出荷し事業所間の交流や情報交換を行うことを目的とした
「地域連携課程」がスタートしました。各サテライト(京都府北部、中部、南部)にある
複数の事業所が同じ品目の栽培に取り組み、収穫物を共同出荷する取り組みです。
地域に適した作物(品目)を選定
鷹の爪トウガラシ
講義&実技指導
全5回の講義、実習を受講
各事業所で栽培
各事業所で栽培、収穫、乾燥
共同出荷
スパイスメーカーへ納品
収益を利用者に還元、工賃アップ、やりがい、生活支援につなげる。
南部サテライトでは、病害虫の発生が少なく、特別な誘引、整枝が不要で比較的容易に栽培できる鷹の爪トウガラシの地域連携課程がスタートしました。8月から霜がおりる12月まで長期間栽培することができ、収量も十分に確保できる品目です。
収穫労力が大きく農家から敬遠されるため競合が少なく、赤くなった果実を収穫するので収穫判定が簡単なことから、鷹の爪トウガラシが選ばれました。収穫物は京都のスパイスメーカーに全量納品されます。販売先の確保も整い、京都式農連携事業の中心的な事業に発展していくと期待されています。
収穫後のトウガラシは、ヘタを取り乾燥させて出荷します。出荷基準を満たすための調製作業が重要で、
ヘタの取り方、乾燥の見極め方、また長期にわたり収穫を継続させる栽培法の講義、実習をしています。
タキイだけでなく京都府農業改良普及センターによる特別講義や、販売先であるスパイスメーカーとの意見交換会も行われています。
鷹の爪トウガラシのヘタ取りのコツや乾燥方法について説明。
特別講義「農作業での安全管理や農薬の取り扱い」「JGAPについて」を受講する利用者と職員。
育苗中の注意点や管理方法について説明を受ける。
タマネギ「ケルたま」のタネを育苗ポットに播種する受講生。
定期的にタキイ指導員が事業所を巡回し、栽培管理、適切な肥料、病害虫対策、収穫後の調製作業のアドバイスを行っています。猛暑、ゲリラ豪雨、台風対策などプロ目線での指導や有機栽培、タキイが推奨するファイトリッチを用いた機能性成分が豊富に含まれている品種の取り扱いなど、より付加価値の高い農産物を作るためのサポートをしています。
ファイトリッチについて鷹の爪トウガラシに発生した病害をいちはやく発見。適切な処置を行い栽培を継続することができました。収穫後の鷹の爪トウガラシは乾燥や管理方法も重要です。
京都府の農福連携事業やチャレンジ・アグリ認証のお問い合わせは「きょうと農福連携センター」へ
お問い合わせください。タキイ種苗では対応しておりませんのでご了承ください。
(受付時間/月~金曜日9~17時)
お茶の名産地である宇治田原では、昔から茶畑の霜よけとして「鶴の子柿」が植えられてきました。その柿を原料にした柿酢や漬物などの加工品を製造しています。これまで漬物の原料となる野菜は購入していましたが、自家栽培を目指すことになりました。また本格的に有機栽培への取り組みをスタートさせ、直売所販売やドレッシングの開発など意欲的に取り組まれています。
同グループのレストランで使用するため、無農薬で野菜を栽培していましたが、害虫被害に悩まされていました。そこで有機JAS栽培に準ずる化学肥料を使用し、農薬不使用の栽培法をアドバイスしたところ、多品目の野菜を安定して栽培できるようになりました。ハウスではイチゴ栽培を中心に春はトマト、冬に軟弱物野菜を栽培し直売所へ出荷しています。
担い手不足に悩む地元農家から土地と営農ノウハウを受け、減農薬栽培をスタートさせました。野菜は直売所などで販売し地産地消の取り組みとして地域とのつながりを大切にしています。新しくイチゴ専用ハウスを建設し、高設栽培をスタートさせました。農作業が少なくなる12月~4月に作業ができ、安定した収入を得られると期待が高まっています。
クッキーづくり、ぬいぐるみやポーチなどのハンドメイド、畑仕事の3つの活動を行っています。畑では季節の野菜を無農薬で育て、直売所で販売しています。畑専属の職員が丁寧に栽培指導し今後、畑仕事を充実させたいと思っています。また新たな取り組みとして、京都府が推奨する「地域連携課程」に参加し、鷹の爪トウガラシの栽培に取り組んでいます。
畑やハウスで京野菜を中心に多品目を栽培し、野菜の宅配サービスも行っています。ファイトリッチシリーズのオクラ「ヘルシエ」やタマネギ「ケルたま」など機能性成分を豊富に含んだ野菜を栽培し、商品の差別化をはかっています。