チドリソウ‘マーベラスピンク’
チドリソウは、春から初夏にかけて、青や白、桃などの色を基調とした花を咲かせます。花穂の長さは15〜20cmで直径が4〜5cm、そのスリムな花穂はどことなくかぼそくて、繊細なイメージがあります。ところが、今回ご紹介する‘マーベラス・ピンク’は、従来のチドリソウとは異なり、花穂の長さが30〜40cmで直径7〜8cmと倍くらいになり、大変ボリュームのある花をつける品種です。今までのチドリソウのイメージとは違い、エラータム系のデルフィニウムのような迫力のある‘マーベラス・ピンク’を、ぜひお試しください。
一般地では、9〜11月にタネをまきます。7.5〜9cmポットやプラグトレイを使うとよいでしょう。定植時は、花壇に15〜20p間隔で植え付けます。また、寒冷地では2〜3月にタネをまくのがよいでしょう。露地栽培で寒さが心配な場合は、ビニールトンネルなどで防寒をします。
病気には比較的強い品種ですが、土壌を消毒した方がよいでしょう。茎がよく伸びるので、草丈30〜40cm程度になったらフラワーネットなどをかけます。春先になって抽苔してきたら、本葉を10〜15枚残してピンチをすると、1株から数本の花を楽しむことができます。
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‘雪てまり’
純白の八重咲き品種‘雪てまり’。八重咲きでは一番花の大きい大輪クラスで純白度も高い。開花した時に花弁が立つことで、花にボリューム感が生まれ、夏の暑い時に咲かせても花弁数が減りにくい。 |
‘メロウ・ピンクフラッシュ’
桃色で芯にクリームのぼかしが入る、早生系一重咲きの‘メロウ・ピンクフラッシュ’。 |
ユーストマ
ユーストマは、自分で育ててみたいけれどもなかなか難しいというイメージがある花の一つです。しかし、ポイントを押さえてうまく育てれば、花を咲かせることは十分可能です。この秋、一度挑戦してみてはいかがでしょうか。
ユーストマ栽培のポイントとなるタネまき、育苗、定植。この3つをうまくクリアすれば、きっとすてきな花を咲かせられます。
タネまきには、市販の播種専用培土など、必ず水はけのよい播種用土を使用します。深めの育苗容器に用土を入れ、播種前にたっぷりと水を含ませておき、そこにタネをまきます。好光性種子ですから覆土はしません。発芽までには2週間ほどかかりますが、この間、土の表面を乾かさないのがポイントです。播種は9月中旬〜10月上旬ごろがよいでしょう。
苗の生育は非常にゆっくりしているため、播種後1カ月経っても小さな本葉が2枚ほどにしかなりません。このころ苗が込み合っている所は間引き、薄い液肥で追肥を始めます。小さな苗ですから濃い肥料は禁物です。そしてさらに1カ月、本葉が4枚になるまで育苗します。
定植のポイントは、本葉4枚の苗を十分な水分のある場所に植えることです。決して深植えせず、根を切らないように定植します。マイナス5℃以下になると枯死するので、凍らない場所か、場合によって鉢植えにして日当たりのよい室内で管理します。
春になると、生長が目に見えて早くなり、草丈が高くなりますから、倒れないように支柱をしてください。開花するころにはスリップスなどの害虫がつきやすいので、早めに防除します。 |
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少し前までは、デルフィニウムといえば育てにくい花というイメージがあったのですが、‘オーロラ’‘ミストラル’といった育てやすい品種の登場で、家庭花壇にも定着しつつあります。壮麗な草姿と花色に人気が集まっています。
‘オーロラ’‘ミストラル’とも基本的に同様の管理を行います。発芽時に光を嫌うので、薄めにしっかりと覆土し、芽が出るまで新聞紙などで覆いをするとよいでしょう。その間、乾燥しないように管理します。発芽後は日光によく当ててください。
有機質のたっぷり入った肥沃な用土を用いることと、日当たりと排水性のよい場所で育てることがポイントです。露地植えで排水性が悪いと思われる場所では、畝を高めに作ります。露地植えの場合の定植間隔は、25〜30cm四方に1株植えが基準です。直径50cm程度のテラコッタや一般的な長方形の中型プランターなら、3〜4本植えに、直径20cm程度の鉢植えなら1本植えにします。
移植や定植の際、双葉の下の胚軸部分を隠すまで深く植えます。浅植えにすると、根の生育が妨げられるため、地上部の生育も極端に悪くなります。
地域によりますが、一般地では3月になると新葉が次々と展開してきます。この時期以降、追肥を十分に与えます。
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キンギョソウの魅力の一つは、その甘い香りです。さらに、‘カリヨン’シリーズはその花形も魅力的です。キンギョソウは一般的に花が閉じた形をしていますが、‘カリヨン’は花弁が外に向かって開き、開放的な印象を与えてくれる「ベル咲き」品種です。草丈は約1mになります。
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‘カリヨン’は花色が豊富で、全9色が揃う。 |
‘カリヨン’は本来8月上旬にまいて、11月に温室やハウスで咲かせる極早生品種。でも、家庭栽培では、9月にまいて翌年の5月に咲かせる栽培が確実です。微細種子なので、播種後しばらくは用土を乾かさないようにし、小苗を上手に作ることが大切です。
定植間隔は20〜25cm程度にします。もともと分枝性の品種ではありませんが、定植後、苗ができてきたら10〜11月に3〜4節を残して摘芯しておくと、翌春には切り花がたくさんとれます。冬の寒さが厳しい地方では、凍らせないよう寒冷紗トンネルまたはビニールトンネルなどの防寒が必要です。 |
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どちらも矮性の極早生ストックで草丈20cm程度で咲き出し、最終的に30〜35cmの草丈になります。
発芽後、子葉の形または本葉の形により八重咲きと一重咲きを選別し、普通、八重咲き株のみを観賞の対象とします。
しかし、一重咲きにも八重咲きにない美しさがあり、これはこれで十分に観賞に値するものです。家庭園芸では一重咲きを抜き捨てる必要はないでしょう。
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‘ピグミー’のプランター植え。 |
‘キスミー’の一重咲きを用いた植栽。一般に一重咲き株は八重咲き株より開花が早く、草丈はやや高くなる。 |
ストックはダイコンと同じアブラナ科の直根性植物です(根はダイコンと同じ匂いがします)。このため移植を嫌うので、根を傷めないよう本葉3枚程度の小苗のうちに、定植してしまうことが成功の秘訣となります。小苗で植え付けると直根がすんなりと地中に伸びることができるので、分枝性に富むボリュームのある株になります。逆に、9cm以下の小さなポットで育苗すると根域が制限されるので、定植後にボリュームのある株に仕上げるのは困難です。
ストックはアオムシやコナガがつきやすいので、よく観察して見つけ次第除去します。
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ナデシコを含むダイアンサスの仲間は世界中にたくさん種類がありますが、‘プラネット’はこのうちのヨーロッパの原産種から改良された品種です。この品種の最大の特長は、通常、美女ナデシコが花芽分化のために低温が必要であるのに対して、これを必要としない点です。したがって、夏にまくと初冬のころに開花し、3月上旬にまけば6月ごろに開花させることができます。草丈40cm程度のニーハイ(膝丈)サイズなので、家庭の切り花としても適しています。
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‘プラネット’の花色にはホワイト、ローズアイ、パープル、クリムソンと全4色があり、香りがよいのも特長。 |
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極早生であることを生かした短期栽培が適していますが、枝数をたくさん得るために9月まきにして、播種後1カ月半程度の時期に摘芯してわき芽を出させると、分枝の多い株に仕立てることができます。
栽培の前半は一般の草花に準じた量の肥料を与えますが、後半はいくぶん控えぎみの方が葉が大きくなりすぎず、切り花として草姿のバランスのよいものができます。 |
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一般的なラッセル系ルピナスが派手さを感じさせるのとは対照的に、野趣のあるやさしい感じの品種です。開花はラッセル系より早くなります。
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ルピナス‘ピクシーデライト’の花や葉は小振りで、花色も青や淡い桃色系の混合。 |
播種は10月上旬ごろ、ポットに直まき後、本葉3〜4枚で定植します。直根性なので根を傷めないように扱います。直まきでもよいでしょう。
マメ科のルピナスは過湿土壌が苦手です。排水性のよい場所や用土を選んで栽培するとよい結果が得られます。 |
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近年使われ始めたセリンセは地中海地方原産で、ワスレナグサやヘリオトロープと同じムラサキ科の草花です。‘プライド オブジブラルタル’のすばらしさは、何といっても独特な草姿とメタリックな質感の青紫色の花にあります。寄せ植えで異彩を放ち、スポット利用に価値の高い種類です。
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セリンセ‘プライド オブ ジブラルタル’は、シルバープランツとの相性が抜群。 |
9〜10月に播種します。耐寒性はデージーより劣るので、寒さの厳しい地域では防寒対策が必要です。
日当たりと排水性がよければ、適応性も高く容易に作ることができます。 |
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‘タッソー’はやや大きめのポンポン咲きで非常に花の重ねがよく、濃いローズから咲き進むにつれて白色に変化していく花色が特徴。草姿がコンパクトでまとまりもよい。 |

デージーはかつてパンジーなどと並び、秋まき草花の代表格でしたが、近年はむしろ珍しい花になってしまいました。しかし、素朴な草姿とパンジーにはない明るいローズ系の花色をもつデージーは、春を飾る花として、ほかの花には代え難いものがあります。
8月下旬ごろ播種すると、年内から開花し、冬花壇を飾ります。ただし、デージーはパンジーほど耐寒性が強くないので、最低気温が継続してマイナスとなる地域では、寒冷紗あるいはビニールトンネルによる防寒をする方がよいでしょう。
デージーはどちらかというと水を好みます。冬場は乾燥により、株を弱らせてしまうことがあるので要注意です。 |
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‘ネネ’は、ぼかし色のローズフロスト、ブルーフロストを含む全7色。うまく作れば1株でたくさんの切り花を収穫できる
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アスターは古くから品種改良が行われ、品種の分化が著しい草花ですが、近年人気のあるのは小輪系のスプレータイプです。花径2〜3cmほどでフラワーアレンジメントに使いやすいことが人気の理由で、‘ネネ’シリーズもこれに属する品種です。草丈は約70cmです。
一般地の秋まきは10月上旬がよいでしょう。9cmのポット苗で冬季は管理しておき、3月になってから植え始めるか、本葉5枚程度で20cm間隔に定植します。よく知られるように、アスターはフザリウム菌による立枯病に弱いので、この菌に汚染されていない新しい用土を使います。用土にチッソ分が多すぎないことも大切です。春に茎が伸び始めると、シンクイムシやハムグリバエなどの被害を受けやすいので、早めの殺虫剤散布が必要です。 |
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‘涼しげな青花が夏に最適なローレンティア‘ブルースター’。 |

イソトマと呼ばれることもあるオーストラリア原産の草花です。星形の花と涼しげな細葉をもち、初夏〜夏を飾る花として定着してきました。草丈20cm程度の矮性です。
9月下旬〜10月に播種し、9cmポットで育苗後、春先に大きめの鉢に植え替えるか花壇に定植します。排水のよい用土が適し、日当たりも十分確保します。 |
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鮮やかな黄目が入る‘グッピー’のバイカラー品種の混植。 |

メルヘンを感じさせる花壇を演出するのにぴったりな草花が、リナリアの矮性品種’グッピー‘です。キンギョソウに似た小花をたくさん咲かせ、コンテナの寄せ植え栽培にも適しています。
一般地では9月下旬〜10月に播種し、9cmポットで仕立てて株が張ってきたら定植します。定植間隔は20〜25cm程度です。
主枝がひょろひょろと伸びることがありますが、草丈3cm程度で思い切って切り詰めてしまえば、かえって形のよい株になります。 |
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春まき草花は、多くの種類が熱帯から亜熱帯原産の高温性です。したがって温度さえあれば播種期にそれほど厳密にならなくても、だいたいうまく発芽して、それなりに秋までには咲かせることができます。栽培温度が上昇気温の時期(春〜夏)に当たるので、多少播種期が遅れても、その後に遅れを取り戻せるからです。
これに対し、秋まき草花は温帯地方原産の種類が多く、播種は下降気温の時期(夏〜秋)に行うことになるので、播種が遅れてしまうと、寒くなる前に十分なサイズに育たないため、その後の生育に大きな支障が出ます。かといって早まきし過ぎると、温度が高すぎて発芽しない種類もあります。秋まき草花は春まき草花に比べ、生態が複雑です。種類ごとにその性質に合った播種適期を、適切に選ぶ必要があります。
春まき草花も秋まき草花も、早まきをするためには、それぞれ低温、高温が発芽の阻害要因となるため、春まき草花の場合は加温、秋まき草花の場合は温度を下げる工夫が必要になってきます。 |
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播種 |
一般の秋まき草花の標準発芽適温は18〜20℃ですが、デルフィニウムやチドリソウはやや低い15〜17℃です。種子からの栽培にあたってはこの点に留意し、早まきし過ぎないことがポイントです。年内に観賞するハボタンやストックは、一般地では8月上旬ごろの早まきにします。
播種は播種箱や鉢にまくほか、連結式の育苗トレイにまく方法も近年普及してきました。移植に際しては、根を傷めないメリットがあります。一般に、本葉2〜3枚でそのまま定植するか、一度ポット上げしてから定植します。 |
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第1表:春まき草花と秋まき草花の違い
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春まき草花 |
秋まき草花 |
原産地 |
熱帯〜亜熱帯 |
温帯〜寒帯 |
発芽適温 |
20〜25℃ |
15〜20℃ |
生育期の適温 |
約20℃以下 |
約15℃以下 |
生育期間 |
春〜秋 |
秋〜初夏 |
播種適期 |
比較的長い |
短い |
播種期が遅れた場合 |
それなりに開花する |
開花に至らない場合がある |
播種期の制限要因 |
低温 |
高温、低温 |
早まきの注意点 |
栽培温度を上げる工夫が必要 |
栽培温度を下げる工夫が必要 |
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第2表:秋まき草花の種類別播種適期
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一般地での播種適期 |
品 目 |
7月下旬〜8月上旬
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ストック、ハボタン |
8月中旬〜8月下旬 |
デージー、パンジー、ビオラ |
9月中旬
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キンギョソウ、ナデシコ、ルピナス、セリンセ、アスター、リナリア、ローレンティア |
9月下旬〜10月上旬 |
デルフィニウム、チドリソウ |
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(1)適度に水を加えたタネまき用培土をかきまぜる。 |
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(2)セルトレイに土を入れて、板ですり切る。 |
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(3)十分に湿らせる。 |
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(4)1セル当たり2〜3粒ずつタネをまく。 |

(5)発芽後間引きを行い、トレイに根がまわったら、ピンセットでつまんで抜きとる。 |

(6)移植、定植用培土へ適度に水を加え、かきまぜた後ポットに詰め、移植を行う。 |

セルトレイを用いることで、移植時の植え傷みを軽減できる。 |
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定植地の準備
庭植えにする |
定植の10日ほど前までに、1平方メートル当たり消石灰15〜20gを定植予定地に均一にまき、20〜25cmの深さに耕して酸度調整をします。有機質として腐葉土またはピートモスなどを、1平方メートル当たり最低2kg入れます。固形肥料はその肥料の成分量によりますが、一般に1平方メートル当たり100〜150gを元肥として与えます。スコップなどを使い深く耕し、有機質や肥料を土に十分に混和させることが大切です。
排水性が悪いと思われる場所では、畝を高めに作ります。排水が十分な場所では畝を高さ0〜5cm(幅70〜80cm程度)、排水が悪い場合には高さを20〜25cm程度の高畝にし畝幅も狭めにします。 |
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コンテナ植えにする |
「タキイ花と野菜の土」など、市販の混合済み培養土を用いるのが無難です。特別の配合は必要ありません。花壇の土をコンテナ用に使う際は、水はけに注意します。 |
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冬季の苗管理 |
苗の生育が止まっているように見える冬季は、実は春に備えて地中に根を伸ばし続ける大切な時期なので、乾燥は厳禁です。霜や風の強い地方では寒冷紗被覆を行うとよいでしょう。ビニール被覆をすると、一層確実な生育が期待できます。
ただし、この場合、日中は十分な換気を行い、軟弱に育たないよう注意が必要になります。 |
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●タキイの培土 |
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▲タネまきに最適な
「たねまき培土」 |
▲セルトレイでの
タネまきにおすすめの
「セル培土TM-2 」 |
▲栽培全般に使える
「花と野菜の土」 |
▲ポットへの鉢上げ用の
「育苗培土」 |
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