続々と導入が進む!単為結果ナス PC筑陽

~営利生産者の皆様へ 栽培の手引き~

2020/07/20掲載

「PC筑陽」の品種特性

ナスの通常営利生産においては、花粉受粉やホルモン処理などの着果作業が必須で、全労働時間の30%を占めると言われます。タキイではこの着果労力削減を目指して育成を進め、単為結果品種「PC筑陽」の品種化を実現しました。「PC筑陽」は強い単為結果力をもつ一方、良食味やトゲなし特性も併せ持つため、筑陽の既存産地で注目され、作付けが急速に拡大しつつあります。

強い単為結果力

通常品種が着果の難しい条件下でも、「PC筑陽」は高い着果率を示します。また他社の単為結果性品種と比べても気候条件に左右されにくく、強い単為結果力を発揮します<第1図>
<第1図> 柱頭除去花の通常着果割合(%)

トゲなし

ヘタにトゲがなく安全・安心!
PC筑陽はヘタにトゲがなく安全・安心!
ヘタや茎葉にトゲが発生しないため果皮を傷めず、栽培管理や選果輸送時において安心して取り扱えます。

良食味

「PC筑陽」は果皮・果肉ともやわらかく、焼きナスやマーボーナス、浅漬などの幅広い調理にあう良質の肉質で品質の心配もありません。
良食味

高い秀品率

強い単為結果力により、従来品種と比べ石ナスや曲がり果の発生が少なく安定した秀品率を示します。またガク割れ等の発生も少なくA品率が向上します<第2図>

高い秀品率

「PC筑陽」の栽培ポイント(初期)

強勢で馬力のある「筑陽」とは異なり、「PC筑陽」は開花した花が全て着果肥大する成り込みタイプのため、しっかりとした根張りと追肥主体の肥培管理が上作へのポイントとなります。中〜後期以降の草勢低下を招かないよう、初期からの樹作りを意識した栽培を目指しましょう。

圃場準備

完熟有機物堆肥を投入し、根張りに最適な圃場を目指す。畝を作る際は、心土にある程度の水分を確保しておく。

台木選定

発根力の旺盛な「トナシム」との相性が最適。また「トルバム・ビガー」や「トレロ」も適する。

定植適期

「筑陽」の定植適期より数日前の1番花がまだつぼみの状態の若苗定植がベスト

定植後の活着促進
定植直後の株元潅水によりスムーズな発根を促す。活着が思わしくない場合は、発根剤を利用して根張り確保に努める。
定植後は株元潅水で活着を促進。
定植後は株元潅水で活着を促進。
活着不良時は発根剤の活用が有効。
活着不良時は発根剤の活用が有効。
摘花point

樹作りを優先させるため、定植後は1番花の摘花を徹底する。草勢が弱い場合はさらに2番花も摘花する。なお、分枝花については適宜除去し1段1花の着果とする。

仕立て方point
1株当たりの着果負担を軽減し4本仕立てよりも2〜3本仕立て栽培が推奨。また、初期生育では草勢を落とさないよう主枝は立ち気味に誘引し、早く寝かして草勢を落とさないよう注意する。
初期の主枝は立ち気味に誘引。
初期の主枝は立ち気味に誘引。
肥培管理point
最初の果実が肥大してきたら早めに追肥をスタートし、その後も草勢を見ながら肥効が切れないよう連続的な追肥に努める。1回当たりの追肥量は、液肥でチッソ量1.0s/10a、粒肥では畝肩部にチッソ量2〜3s/10aを目安に施用する。一度に多量の肥料を施さず、施肥回数を増やすことで「筑陽」より2割程度肥料増量とするのが目安。
果実肥大や草勢を見て早めに追肥。
果実肥大や草勢を見て早めに追肥。

「PC筑陽」の栽培ポイント(中〜後期)

主枝管理

株の生長に伴い、強い主枝から順に寝かせて誘引し各枝のバランスを調整する。また主枝の摘芯は筑陽より早めの7段前後で行い、できるだけ側枝の伸長を促す。

側枝管理point
着果肥大を促すため側枝は第1花と上葉1枚残して早めに摘芯し、収穫後は1芽残して切り戻す。芽の動きが活発な高温期にこの管理が遅れると、花数過多を招き草勢回復が難しい。
側枝は1花残しで摘芯。
側枝は1花残しで摘芯。
「1芽切り戻し」を徹底する。
「1芽切り戻し」を徹底する。
摘葉

過度の摘葉は草勢低下を招きやすい。本種は「筑陽」より小葉のため、葉面積確保のためにも摘葉は遅めの方がよい。なおできるだけふところへの採光を意識し、内向きの本葉から優先して摘葉する

潅水
厳寒期でも定期的な潅水を行い、高温期は生育旺盛となるため1株当たり日量3〜4ℓの潅水量を施用する。また高温乾燥期は通路潅水も併行し、ハウス内湿度の確保に努める。
高温乾燥期は通路潅水を併用。
高温乾燥期は通路潅水を併用。
温度設定point

厳寒期はハウス内の最低気温を14℃目安で保温に努め、日の出前から早朝加温で徐々に温度を高めながら、午前中25℃を目安に管理する。また、厳寒期は地温の確保も重要となり、小ダクトでの株元加温や潅水時の水温管理にも注意が必要。

収穫サイズpoint
草勢低下時での2ℓサイズ以上の大果収穫はなるべく避ける。安定出荷を目指すためにもM〜Lサイズでの定期的な収穫が理想
定期収穫で草勢維持に努める。
定期収穫で草勢維持に努める。
病害予防

すすかび病や灰色かび病は草勢低下でも発生しやすくなるため薬剤防除と併せ、肥培管理や栽培管理も抜かりなく行う。また、果実に花殻が付着している場合は適宜除去する。

「PC筑陽」の上作ポイント まとめ
1.初期の株作り

若苗定植、強勢台木への接ぎ木、1番花の摘花、発根剤施用

2.草勢維持

早めの追肥、適正な潅水量、側枝切り戻しの徹底、M〜Lサイズ収穫

3.最適環境の設定

夜温確保(厳寒期)、湿度確保(高温期)