2017/07/20掲載
本誌『タキイ最前線』2017年秋種特集号より連載スタートした「ここぴあ通信」滋賀県湖南市の市民産業交流施設「ここぴあ」内の直売所へ出荷される生産者の取り組みにクローズアップした本記事。ここでは、昨年11月に開催された「ここぴあ」オープンセレモニーの様子をご紹介します。
2016年11月5日、滋賀県湖南市にあるイオンタウン湖南の一角に、市民産業交流促進施設「ここぴあ」がオープンしました。初日から2日間はオープニングイベントが催され、まずは地元のジュニアバンドの演奏と谷畑市長らによるテープカットで華やかに幕が開きます。湖南市の未来を担う、期待の施設の誕生です。
「ここぴあ」は農産物直売所を柱に、1次産業だけでなく、2次産業、3次産業すべての経済活動の促進と、市民の交流や憩いの場となることを願って建設されたものです。地域には兼業の米農家が多く、近年は収入につながらなくなっていました。そこで、小さな畑を活用し、野菜を栽培して、少量でも利益の上がる直売所出荷をしてもらおう。高齢者や女性たちにも、外で働くことで元気になってもらおう。さらには後継者の育成にもつなげたい。そして、「農業の6次産業化」により市全体を活性化していこう。
こうした構想の拠点となるべく「ここぴあ」は誕生したのです。
店内には農産物がずらりと並び、それを求める方々であふれんばかり。直売所の魅力は、やはり地元の新鮮な野菜が豊富にそろうこと。そして、その土地ならではの魅力的な野菜が買えることです。
ただ、湖南市の特産といえば「下田なす」「弥平とうがらし」がある程度。何かほかにないかと、市内に研究農場をもつタキイに相談したところ、浮かび上がったのが「ファイトリッチ」シリーズでした。身体によいとされる機能性成分を多く含む野菜は、付加価値が高く、小規模農家が利益を上げるのにぴったりです。これを湖南市の新たな特産品にすべく、取り組む生産者には市よりタネや肥料を提供するなど、作付けを奨励していったのです。
タキイも協力し、生産者への講習会を開くほか、オープンに先立って行われた市民農業塾では農場見学、試食会なども実施。オープニングイベントには社員が応援にかけつけました。
まず、店舗入り口すぐの目立つ場所で、「ファイトリッチ」シリーズのタマネギ「ケルたま」、ニンジン「京くれない」を販売。タキイ社員がお客さんへ機能性をアピールすれば、「身体によい野菜が目玉価格で買える!」と、飛ぶように売れていきます。
また、売り場横のキッチンスタジオでは、研究農場の女性社員が中心となって「ケルたまドレッシング」料理教室を開催。「ケルたま」のドレッシング作りを実演し、それを使った簡単な料理を試食してもらうというものです。機能性成分たっぷりのタマネギと、手間いらずなのにおいしい料理はお客さんの関心を呼び、キッチンスタジオはぎっしり。「ケルたま」ドレッシングだけで味つけしたチャーハンと唐揚げは、試食した方々から「それだけでいいの?」「おいしい!」などの声が聞かれ、「ケルたま」は店内で販売中と知ってさっそく買いに行かれる方も目につきました。
料理教室に参加いただいたお客さんにアンケートを実施。健康と野菜を関連づけて考える方は多く、機能性成分ではリコピンやカロテンをよくご存知でした。
このキッチンスタジオは、今後、試食品の調理や加工食品の開発に用いることになっています。農産物をそのまま売るだけでなく、加工することで付加価値をつけ、産業として成り立たせるのがねらいです。ほかに地元食材を使った料理教室も予定されるなど、さまざまな形での活用が検討されています。また、館内には研修室兼会議室も設置し、会議、講習会、さらには市民の交流の場として、安価な料金で利用できるようにしています。
今後、施設西側農地では3000u規模の体験農園を整備し、観光から就農目的の本格的なものまで、いろんなレベルの農業体験を実施予定とのことです。また、平成30年からは、郷土料理や地元野菜を使ったメニューが味わえる、地産地消型のレストランもオープン予定のようです。
2日間のオープニングイベントには湖南市出身のWBCバンダム級チャンピオン(当時)の山中慎介選手や、地元ラジオ局なども取材に訪れ、大盛況のうちに幕を閉じました。「ここぴあ」はお客さんの心を引きつけ、その後も予想を上回る好調さを維持しています。ただ、これはまだ出発地点。市民産業交流促進施設として、「ここぴあ」が今後も進化していく姿が見られるに違いありません。
ニンジン「京くれない」のソフトクリームも目玉の一つとあって、ラジオ局も力を入れて紹介。
今後はほかの野菜でも開発の予定。
「ファイトリッチ」シリーズの一つ、ミズナ「紅法師」。シールで機能性成分のアントシアニンをアピール。
2024年
秋種特集号 vol.58
2024年
春種特集号 vol.57