2018/07/20掲載
「秋は夕暮れ。夕日のさして山の端いと近うなりたるに、烏の寝所へ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど飛び急ぐさへあはれなり。まいて雁などの連ねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし。日入り果てて、風の音、虫の音など、はた言ふべきにあらず」
皆様ご存知の『枕草子』の一節です。春はあけぼの、夏は夜、冬はつとめて…と清少納言はそれぞれの季節で好きな時間を記しています。秋は夕暮れとのことですが、カラスが山に帰り、風の音や虫の声が聞こえる時間と記していることから、夕方から宵の始めを夕暮れと清少納言は表しているようです。厳しい夏の暑さからほっと一息、そんな心持が手に取るようにわかる一文です。皆様にも清少納言のように季節を感じていただくため、植物園も夏から秋への衣替えが8月下旬から一気に始まります。秋のひととき、植物園へ出掛けてみませんか。
花壇ではコスモスやサルビア、オミナエシ、フジバカマなどが咲きそろい、温室では夏から咲き続けている珍しいバオバブの花や月下美人が皆様をお出迎えします。そして何と言っても紅葉です。紅く映えるカエデはもちろんのこと、植物園開園時からあると言われているフウノ木は、高さ約30メートルの木が燃えるように赤に染まります。また、珍しいところではニュートンのリンゴの木が実を付けている様子も見ることができます。
秋の花は出来るだけ長く楽しみたいものです。花壇や鉢で育てた草花の花もちをよくするには、二つのポイントがあります。
夏から秋にかけて気温が下がるにつれ、1回の潅水量を減らしていきます。特に気を付けなければならないのは晩夏です。残暑のあるうちは、しおれそうで盛夏の時期と同じようにたっぷり潅水しがちですが、朝に肌寒く感じれば潅水量を減らし始めましょう。目安として、10月初旬には盛夏の半分くらいの潅水量になるように減らしていきます。また、潅水は朝に行うのが基本ですが、できない場合は夕方に行い、気温の高い日中は行わないようにしましょう。
秋の花は次々に咲いてきます。咲き終わった花をそのまま放置しておくと、結実しタネを作ろうとします。そうなると、花よりも実やタネに水分や養分を優先的に送るので株が弱り花数がだんだん減っていきます。こまめに「花がら取り」を行えば長く花を楽しむことができます。花弁を取るだけではなく、茎から枯れた花全体を取るようにしましょう。
冬が近づくと、宿根草は越冬の準備を始めなくてはなりません。鉢物で耐寒性の強い草花は軒下に、弱いものは屋内の日当たりのよい場所に移動させます。花壇については新芽の出る所を2、3カ所残して切り戻し、特に耐寒性の弱いものは切り戻した後、株が見えないように市販の腐葉土で山を作って埋めてしまいます。その山をビニールで覆えば、より効果的です。
冬になるとご家庭では屋外で楽しめる植物の品種は少なくなります。また、屋内でも温度や日照の加減が難しく世話が大変です。そんな時におすすめなのが、サボテンなどの多肉植物です。ハオルチアなど、栽培も簡単で緑の少ないこの時期に目を楽しませてくれます。日当たりのよい窓際に置き、品種にもよりますが、潅水は月に1回程度で十分です。
サボテンの金鯱(きんしゃち)を始め、珍しい品種を50点、多肉植物ではユーフォルビアなどを栽培展示しています。またカトレヤやデンドロビウムなど、冬にも花が楽しめる蘭も皆様をお迎えいたしますので、ぜひご来園ください。
2024年
秋種特集号 vol.58
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春種特集号 vol.57