2018/02/20掲載
底冷えがまだまだ続く京都。でも、小春日和に風を嗅ぐと少しだけ春の薫りを感じるのは、いにしえの都人も同じだったのでしょうか。それを知る由はありませんが、間違いなく春を待ち焦がれている心持ちは、今も昔も変わらないことでしょう。
花は桜木と言ったのは一休和尚とのこと。四季が移ろうこの国で寒さが和らぐ桜の季節に、私たちが日本を感じて深く魅入られるのも当然かもしれません。
京都府立植物園でも桜が咲き始めると大勢の方々が訪れます。園内の450本の桜には、日中はもちろんのこと、ライトアップされた夕刻にもカメラを手にした人々が枝下へ集われます。
桜と合わせるため、花壇には紅色系のチューリップを植栽しています。意外に思われるかも知れませんが、この組み合わせは互いに花の美しさを引き立てます。本来なら菜の花で日本の原風景を作るのが常套(じょうとう)ですが、茎が長い菜の花では緑色が映えてしまいます。一方、桜を背景とし花壇に咲き並ぶ紅いチューリップは、薄いピンク色の桜とコントラストを成し春の訪れを強く印象付けます。
また、その他の花壇もパステルカラーのチューリップやキンギョソウ、ダイアンサスをミックスして華やかに春を演出し、桜が終わる春半ばにはハナビシソウやアイスランドポピー、ワスレナグサ、デルフィニウムが咲きそろいます。暖かくなってきた陽光に合わせて、暖色系から寒色系まで新たな年度を迎えた喜びを演出するためです。小さな子どもからおじいちゃん、おばあちゃん、若いカップルも花壇の前でにこやかに春を謳歌(おうか)しています。
春を彩る花を上手く栽培するにはいくつかのポイントがあります。まずはいかに株張りをよくするかです。
タネから作る場合は太陽の光が十分に確保できるように播種、間引きを行います。冬から春先は日射量が少ないので、ほかの作期より2〜3割広めに間隔をとります。本葉4枚展開くらいまでは潅水を控え、やや乾かし気味に作って徒長を回避します。苗から購入される方は節間の詰まった葉色の濃いものを選びましょう。
鉢植えの場合は市販の培養土で大丈夫ですが、花壇の場合は土がしまらないように燻炭(くんたん)などを混ぜて通気性をよくします。目安としては花壇に水まきをして乾いたときに、表面にひび割れができるようなら土がしまっている証拠です。根が伸びにくくなるので燻炭を混ぜて改善する方がよいでしょう。
苗は深植えや浅植えにならないように定植しますが、株下に少し盛り土をすれば鉢土が潅水で崩れても安心です。また、生育初期は一時に大量の潅水を行うのではなく、面倒ですが少量の水を何回もあげる方が株張りはよくなります。
このように管理して株間が見えないほど株が張れば、春の美しい花が皆さんのお庭を彩ってくれます。
さまざまな色を花壇に散りばめがちですが、同色系を平行方向に並べ、立体方向には違う色を寄せて植えると印象的な花壇になります。例えばパステル色系のチューリップを奥に、手前に青系のビオラを並べると春らしい花壇を演出することができます。
京都府立植物園は大正13年の開園以来、永く京都府民に愛され続け、今年平成30年には開園95年目を迎えています。日本の公立植物園で最も多い、年間約90万人弱の来園者が訪れます。
この時期、京都府立植物園には桜や花壇のほかに、彩りの丘ではクリスマスローズやシクラメン、温室では球根ベゴニア、ジェイドバインが春の到来を告げています。皆さんのお家でも春を迎えるお花の準備はいかがですか。
2024年
秋種特集号 vol.58
2024年
春種特集号 vol.57