リレー連載 京都府立植物園のガーデナーがご紹介! 飾る楽しみ、育てる喜び… 植物の楽しみ方ガイドリレー連載 京都府立植物園のガーデナーがご紹介! 飾る楽しみ、育てる喜び… 植物の楽しみ方ガイド

花や植物を身近に感じる暮らしは、生活に彩りと癒しを与えてくれます。これから園芸を始めたい方でも楽しんで取り入れていただける花や植物の親しみ方や育て方を、植物園のガーデナーに解説していただきます。
第5回「樹々の中で季節を感じる〜花木の育て方〜」

2020年2月20日更新

京都府立植物園 技術課主幹 田中 淳夫(たなか あつお)
植物園の風景

寒い毎日が続き、植物園のサクラやナノハナも寒さに耐えるため身をすくめているようにも見えます。でもこの寒さが、春に咲くサクラやナノハナにとって実は重要な環境条件の一つとなっています。これらの花芽は盛夏から晩秋の間(8〜11月)に形成され、厳寒期の12月中旬ごろになると休眠状態に入り花芽の生育が止まります。休眠した花芽は一定の低温を受けて休眠から目覚めます。これを休眠打破といって、目覚めた花芽は春の暖かい気温で生長し開花に至ります。

最近、サクラやナノハナの開花時期がおかしいとよく情報
番組などで聞きます。確かに目覚めた花芽が春の低温推移で生育しない事が一つの要因かも知れませんが、もしかすると冬の低温が足りずに花芽が休眠打破することができず開花が遅れているのかも知れません。「春眠暁を覚えず」は中国唐代の詩人、孟浩然(もうこうねん)が詠った漢詩ですが、暖冬の年はサクラやナノハナは春になっても寝ぼけてしまっているようです。

四季を彩る花木

さて、これまでの連載では一年草や宿根草など花壇やプランターで楽しむ内容をご紹介してきましたが、今回は花木についてお話ししたいと思います。

植物園では一年を通じて樹木の花を楽しむことができます。樹齢の経った大きな樹木も多く、離れて全体を見渡すのも壮観ですが、樹木の懐に入って下から咲き誇る花々を見上げるのも一興です。

春は咲き誇るウメ、モモ、サクラ。特に京都府立植物園の夜桜のライトアップは幽玄な雰囲気を醸し出します。夏はサルスベリ、ムクゲ、キョウチクトウの花が夏の青い空に映え渡り、秋にはキンモクセイの香りが園を包みます。そして冬はツバキ、ロウバイ。たとえ雪を被っていても、春が来るのを待つように凛とした姿を見せます。毎年決まった時期に花を咲かせる樹木を見れば人生が豊かになるような気がしますね。

ウメ
ウメ
モモ
モモ
ライトアップされた夜桜
ライトアップされた夜桜

サルスベリ
サルスベリ
ムクゲ
ムクゲ
キョウチクトウ
キョウチクトウ

キンモクセイ
キンモクセイ

ツバキ
ツバキ
京都の隠れた紅葉スポット。お気に入りの1枚を撮影してみては。
ロウバイ

家庭で花木を育てるには

ご家庭で花木を育てる場合、細やかな栽培管理は樹種によって異なりますが、共通するポイントがあります。

ポイントその1 定植管理

定植管理の植物

購入した苗を庭に定植したが、生育が遅かったり、枯れてしまったりなどの相談をよく受けますが、いくつかのポイントを押えて管理すれば難しいものではありません。
定植は新芽が出る前の寒い時期(12月下旬〜3月上旬)がよいでしょう。苗は購入して根の部分が乾かないうちに定植しますが、すぐに植えられない場合は鉢に土を入れ仮植えし、たっぷり潅水してください。

地面に苗の根の部分が縦に2つ入る程度の穴を掘り、土に完熟堆肥を混ぜたものを穴の1/2程度の深さまで入れます。苗を置き、半分まで穴を埋め戻します。埋め戻した土に隙間ができないように細い棒で根を避けて土をつつきます。
次に、土が十分湿るまで、ゆっくりとまんべんなく潅水しましょう。水が土に染みわたれば残りを埋め戻します。地表に苗木を囲む様に土手を作り、その内側に十分潅水します。最後に支柱を立て苗木にしっかり固定しましょう。肥料は定植から1カ月後に樹に触れないよう施用します。

鉢植えの場合は、根部体積の倍ほどの容量鉢を用意してください。鉢底ネットを底に敷き鉢底石を1/5程の深さまで入れ、その上に1/3まで培養土を入れます。培養土は赤玉土、腐葉土、川砂を6:3:1でよく混ぜ合わしたものを使うとよいでしょう。あとは地植えと同じで苗を鉢に置き、半分程を培養土で埋めて十分に潅水し、再び培養土で埋めて支柱を立てます。

ポイントその2 整枝剪定

整枝剪定は樹種や定植する場所などで、切る枝の選定は千差万別ですが、不要な枝を落とすだけでも育成は旺盛になり樹形も整ってきます。小枝の選定は梅雨明けの初夏に行いましょう。

代表的な不要な枝について列挙します。まず最も目立つのは「1枯れ枝」。病害虫の発生源になることもあるので自然落下を待たず、すぐに切り落としてください。「2返り枝」は幹に向かって内側へ伸びる枝で、「3下がり枝」は下に伸びる枝です。双方ともに風通しや日当たりを悪くするので不要です。「4立枝」はまっすぐ真上に伸び、樹勢が強すぎる枝なので早めに切り落としましょう。地際株元から伸びる枝を「5ひこばえ」と言います。樹形を乱すので根元から切り落としましょう。ひょろひょろ伸びているのは「6徒長枝」と言って、健全な生育が望めないことから根元から切り落とします。

その他にも、同じ位置から四方に枝が伸びる「7車枝」、複数の枝が平行に伸びる「8平行枝」、枝が交差すように重なる「9交差枝」は、日当たりや風通しを考えて間引きします。これらの枝を落とすだけでも生育はかなりよくなるでしょう。

定植管理の植物

ポイントその3 病害虫防除

花木の病害は草花と違い一気に拡大する傾向にあります。害虫や病気の葉など一つでも確認したら、その周辺を観察してください。そして少しでも広がっているようなら、すぐに切除または薬散防除をおすすめします。

これからの季節、寒さの中にも一つずつですが春が見つかり始めます。そして3月の終わりには植物園でもサクラが一気に花開き始めます。最初にお話ししたように、冬の低温で溜めたエネルギーが開花という発現で私たちに春を伝えます。春という花の祭典は冬のおかげであり、そこに向けた栽培管理がその一瞬にかかっているのかも知れません。

京都府立植物園のタキイガーデンでも季節を感じる…

植物園の観覧温室前に設けられたタキイオリジナル品種で構成されている「タキイガーデン」では、
美しい花が季節の移ろいを感じさせてくれます。
四季折々の花をぜひお楽しみください。

キャンディプリンス

ホワイトマーベル

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