リレー連載 京都府立植物園のガーデナーがご紹介! 飾る楽しみ、育てる喜び… 植物の楽しみ方ガイドリレー連載 京都府立植物園のガーデナーがご紹介! 飾る楽しみ、育てる喜び… 植物の楽しみ方ガイド

花や植物を身近に感じる暮らしは、生活に彩りと癒しを与えてくれます。これから園芸を始めたい方でも楽しんで取り入れていただける花や植物の親しみ方や育て方を、植物園のガーデナーに解説していただきます。
最終回「タキイガーデンの四季」
京都府立植物園 技術課主幹 田中 淳夫(たなか あつお)

2023/02/20掲載

昨今は地球温暖化によるものなのか、厳冬や猛暑の年が繰り返して続き、春秋を感じる期間も短くなったように感じます。当園でも露地のハイビスカスの開花期間が長くなり、パパイヤの結実が早まるなど、植物にも少なからず影響が出ているように思います。ただ、厳冬や猛暑でハボタンやヒマワリの花色が鮮やかになったり、春秋の期間が短くなってチューリップやコスモスの咲きそろいがよくなったようにも思います。気候変動による影響があったとしても、四季それぞれの彩りは絶えることはないようです。
春夏秋冬に色づく木々や草花を見に多くの方々が当園にお越しになります。今回は、当園のオフィシャルパートナーであるタキイ種苗株式会社からご提供いただいた種苗を管理している花壇(以下、タキイガーデン)を中心に植物園の四季の見所についてお話しいたします。

季節を感じる花壇づくり

タキイガーデンでは春から夏、夏から秋、晩秋から初春と年3期に分けて植え替えを行います。

【春】

春にはアグロステンマやダイアンサスをメインとして植栽します。カスミソウやジギタリスなどが入ることもあります。タキイガーデン近くの花壇は赤い色のチューリップで埋め尽くされるため、この花壇はちょうどよいアクセントとなっています。当園では桜とチューリップが見ごろを迎えるころに合わせて、タキイガーデンの草花が開花を迎えるようにビニールハウスでしばらく管理してから植栽を行います。

【春】

【夏〜秋】

夏はセンニチコウ、インパチェンスを主に植栽します。夏から秋の紅葉が終わるまでの長い期間にわたってタキイガーデンを彩る草花なので、定植前に十分深耕して根を張らせ、こまめに花がら取りを行うのがこの時期の重要な作業となります。また、各品種の草丈の高低差を利用し立体的に花壇をデザインします。ほかの花壇は、夏はヒマワリ、秋はコスモスと季節感のある草花を植栽し、チョウセンアサガオやパパイヤ、カンナ、ノゲイトウなど、比較的草姿が大きなものがメインとなります。また、フウセントウワタやオジギソウなど形が変わっているものや触って楽しめるものも人気で、来園者の皆さんが近くで体験できるよう花壇の縁取りに植栽しています。

【夏〜秋】

【晩秋〜初冬】

晩秋から初冬にかけては、園内の露地では最も花が少なくなる季節です。タキイガーデンはハボタンとビオラやパンジーを中心に花壇づくりを行います。特にハボタンは例年6種類以上の品種を規則的に並べて幾何学的なデザインをつくり、来園者の皆さんから好評を得ています。ほかの花壇もハボタン、ビオラ、パンジーが中心となりますが、早咲きのハナナである伏見寒咲花菜を園内各所に定植します。また、花の少ないこの時期、特設会場では約100種、1万株の草花が展示される「早春の草花展」を開催しており、来園者の皆さんに楽しんでいただいています。

【晩秋〜初冬】
【晩秋〜初冬】

このように、タキイガーデンを含め当園の花壇は四季を通じて季節感のある植栽を続けています。また、周りに立つ樹木とのバランスともマッチするように品種を選ばなくてはなりません。特に桜と紅葉は最たるものでここを間違えると園全体の風景がおかしなものになってしまいます。加えて植物の草丈も考慮し、見やすくて心地よい花壇に仕上げることが重要です。皆さんのお家にある庭やプランター、大鉢も同様です。季節の花を色や草丈を生かし、背景や見るときの目線と合わせてバランスを考えて植栽すれば、一段と草花を楽しめる時間が増えるでしょう。ぜひともその参考にタキイガーデンを見学していただけたらと思います。

今回取り上げた草花は初心者向けということもあり、紹介した栽培方法を行わなくても楽しむことができますが、ひと手間加えていただくとボリューム感のある、ワンランク上の華やかさを楽しむことができます。これからの季節に向けてぜひチャレンジしてください。