助けて!豊作先生 素人農園芸ライターのベランダ菜園奮闘記

第2回

ベランダの夏は異常気象との闘い 〜トマトとオクラ〜

農園芸ライター 久野美由紀

2023/02/20掲載

約1年前、まだ寒い時期のある日、筆者は夏野菜に何を作るべきか、頭を悩ませていました。過去、たいていの果菜類に挑戦してきましたが、満足な結果を出せたことは一度もなかったからです。
豊作さんに相談すると、「夏野菜の王道といえば、やはりトマトじゃないかな?」というお返事。ただ、トマトは最初の栽培を含め、過去何度も挑戦し、失敗を重ねてきた品目です。花が咲かなかったり、ようやく着果したかと思えば尻腐れが続出したり。中玉やミニはいくらか収穫できたものの、期待したほどの数には届かずに終わりました。

「ちょうどいいじゃない。リベンジしてみれば」
確かに、自己流で何となくやってきた栽培を、見直すいいチャンスかもしれません。これまではすべてタネから作っていたので、今回もやってみたいと話したら、「本当にできる?」と言われてしまいました。
豊作さんいわく、トマトの育苗にはシビアな温度管理が必要で、素人がよい苗を作るのはなかなか難しいとのこと。成功したいなら、苗は購入すべきとのご意見です。

そんなに難しいのか……。タネをまけば苗は普通にできていた、と思っていました。ただ、その後の生育がもう一つだったのは事実。花が咲いて実もつくし、ベランダ栽培なんてこんなもの…と半ばあきらめていました。
でも、もしかしたら「できている」と思っていても、実はできていなかったのかもしれません。買った苗で作ればどのくらいとれるか、成果を見てみたいと思いました。

トマトは決まりとして、あと一つぐらい何かを…と言われ、オクラに決定。取材でいただいた「ヘルシエ」のおいしさが忘れられず、少し前に作ってみたのですが、やはり数がとれず不完全燃焼に終わっていました。
「オクラならタネからでもそこまで難しくないし、やってみたらいい」
こうして、春夏の栽培はトマトとオクラに決定したのです。

苗の購入 4月下旬

そして、4月下旬のある日、豊作さんにつきあっていただき、最寄りのホームセンターへ苗を買いにいくことになりました。連休中の植え付け需要を見込み、よい苗が豊富に出てくる時期です。
売り場に入れば、目の前は果菜類の苗で埋め尽くされ、多くのお客さんでにぎわっていました。今日の目的であるトマトのコーナーは、売り場の中でもひときわ豊富な印象です。

作るのは、大玉、中玉、ミニを1株ずつがいいなと思っていました。品種は、大玉が家庭菜園向けで栽培容易な「ホーム桃太郎EX」、中玉は過去に作って自分でも甘い玉がとれた「フルティカ」、ミニはやはり素人におすすめで安定して甘い「千果」が希望です。
実生苗、接ぎ木苗、どちらもありましたが、豊作さんいわく「失敗を避けるなら、接ぎ木苗にした方がいい」とのこと。病気に強いのもありますが、馬力があるので生育や収量が違ってくるのだそうです。

ただ、そのとき売り場にあった中で、希望品種の接ぎ木苗は「桃太郎トマト」と表示されたもののみ。これはおそらく「ホーム桃太郎EX」か、そうでなくても家庭菜園向けの品種でしょう。
とりあえずこれを買うとして、さて数十本もある中で、どれを選べばよいのでしょうか。茎が曲がっているもの、傷んでいるものなど、明らかに質の悪いものは避けられますが、それ以外のポイントがはっきりしません。

果菜類、特にトマトの場合、老化苗は絶対に買ってはいけません。1番花が咲いている程度ならいいのですが、花が落ちて小さい実がついているようなものは、植えてもまず回復しないからです。
植え付け苗のステージによって、活着力は変わってきます。ベストな状態は、花が咲く直前のものです。

今まで自分で育苗していたときは、仕事の都合で植え付けを先延ばしにすることも多く、苗に小さな実がついても植えずに放置していたことがよくありました。つまり、自分で失敗のもとをつくっていたということでしょう(汗)。

できれば店に苗が入荷する日を把握しておいて、その日か翌日に買いに行くこと。苗が売り場で詰めて並べられていたら、完全な密植状態になって、3〜4日も経てば徒長してしまうからです。店の人に入荷日を聞けば、教えてもらえることもありますよ。
入荷直後に行くのが無理なら、できるだけ管理のよい店を選びましょう。こちらの質問にちゃんと答えてくれるような店だと、苗の状態もよく保たれていることが多いです。

ほかにも苗選びのポイントを、いろいろ教えていただきました。

明らかに曲がったりしなびたりしているのはもちろん、葉にかすれたような跡がついているものもよくありません。何度かストレスを受けていると思われるからです。葉の縁が黄色くなっているのも避けましょう。
逆に、成長点付近の葉色が薄くなっているのはよい苗です。ちゃんと新しい葉が出てきて、生育している証拠だからです。

豊作さんのアドバイスを聞きながら、「桃太郎トマト」のよい苗を選び、「フルティカ」や「千果」は後日買うことにしました。
また、オクラはすでに「ヘルシエ」のタネを注文していたのですが、豊作さんのすすめで苗も2株だけ入手しておくことに。

オクラは基本的に直まきした方が、根が直で伸びてよいのですが、春先はまだ寒すぎるので、まくのは霜の心配がなくなってから。ただし、それだと実がつくまで日数がかかるため、購入した苗も利用するとその分早くから収穫できます。

ならば…と、ちょうど売り場にあった丸オクラの「エメラルド」を購入。購入苗とタネからとで生育が比較できるし、同じ丸オクラの「ヘルシエ」と食べ比べてもおもしろそうです。
後日、その店へ出向いて「千果」の接ぎ木苗も手に入れ、いよいよ「夏野菜の季節スタート!」と、気分は盛り上がっていくのでした。

おそらく「ホーム桃太郎EX」だと思われる苗。20本以上の中から豊作さんに選んでもらった。
後日、自分で購入した「千果」の苗。ちゃんと選べているか少々不安。
いち早い収穫をと、購入した丸オクラ「エメラルド」。

トマトの植え付け 4月下旬〜5月上旬

苗を買ったらよい状態のまま植えてやりましょう。1週間も経てば一気に根が回ってしまいますから。
また、花房を正面に向けて植えると、後もずっと同じ向きに出るので作業が楽になります。

豊作さんに言われ、4月30日、手に入った苗から植え付けることにしました。
トマトは購入した大玉の「桃太郎トマト」とミニトマト「千果」。ともに接ぎ木苗です。大玉は手持ちの中で一番大きな鉢、ミニは9号鉢を選び、培養土は前回と同じくホームセンターで買い求めました。

4月30日植え付け。左が9号鉢に植えた「千果」、右が「桃太郎トマト」。単純に大玉を大きな鉢へ植えてみた。

よい苗を買ってそのまま植え付けた効果か、花は次々と咲き、5月10日ごろには大玉の一番花が落ちて5mm程度の実が確認できました。すぐにわき芽も出るなど生育は旺盛です。
少しだけ当てが外れたのは、ちゃんと花房を手前に向けて植えたつもりが、なぜか「千果」だけ向きが一定せず、2段目が支柱の方を向いてしまったことです。バタバタと作業したのがよくなかったのかもしれません。もっと落ち着いてやるべきでしたね(汗)。

5月9日、約10日で確実に生長している。
5月12日、大玉の1段目は二つ着果。早くも肥大しつつある。
いつもわき芽をとりを怠ってジャングル化させてしまうので、今回は早めにとって主枝へ栄養を回すぞ…とかたく?決意。
「千果」の2段目。1段目の花は手前に向けて植えたはずが、なぜか2段目は支柱の方向へ。

中玉の「フルティカ」は接ぎ木苗が見つからず、数軒の店へ何度か足を運んだのですが、連休が終わりに近づくにつれ売れ残りの老化苗が目立つようになっていました。このままでは買えなくなると、接ぎ木苗はあきらめ、まだ小さい実生苗を購入。半月ほどして10.5cmのポリポットへ植え替え、大きくなるのを待って5月26日に小さめのプランターへ植え付けました。
途中なかなか生育が進まず、ようやく花が咲き始めたとき、大玉とミニははるか先を行っている状態。買った苗のステージの違いで、ここまで差が出ることを痛感しました。

接ぎ木苗を探すのをあきらめ、購入した「フルティカ」の実生苗。植え付けるにはまだ小さい。
5月20日、ようやく花芽がついた苗を、10.5cmのポリポットへ移植。
5月26日、タマネギ収穫後のプランターへ植え付けた。

実家にも何か植えたくて、たまたま見かけた「桃太郎ゴールド」の実生苗を購入。あまり管理できないのでダメモトの栽培ですが、親が好きな品種なので少しでもとれればと思いました。

オクラの植え付けとタネまき 4月下旬〜5月上旬

オクラは、まず購入した2株の「エメラルド」を、トマトと同じ4月30日、2本仕立てになるよう9号鉢へ植え付け。順調なら、タネから栽培するより一足早く収穫できるはずです。

4月30日、2株の「エメラルド」を2本仕立てになるよう植え付け。
5月9日の状態。トマトに比べて生育はゆるやか。

タネからの「ヘルシエ」は、直まき分として8号鉢二つを用意。一方は1粒まき、もう一方は2粒まきにして、小さめの鉢にはどちらが適しているか比べることにしました。
5月9日にタネをまくと、4〜5日ですべて発芽。双葉のまましばらく動きがありませんでしたが、それでも徐々に大きくなっていきました。

「オクラを作るならこれ」と決めていた「ヘルシエ」。スーパーでは見かけることが少ない、大好きな品種。
5月9日、8号鉢へタネまき。土はタマネギが植わっていたものを再利用。4〜5日ですべて発芽した。左は2粒まきで2本仕立て、右は1粒まきで1本仕立てにする予定。写真は5月20日の状態。
5月26日、発芽してから双葉のまま動きがなかったが、やや大きくなってきた。

また、この時点ではまだタマネギが植わっているプランターを利用するため、苗も作ることに。直まき分と同じ5月9日、ポリポットへ2粒まきにしました。予定では1カ月〜1カ月半後、タマネギ収穫を終えて空いたプランターに植え付けられるはずです。
ただ、このポット育苗分だけなぜか発芽がそろわず、いくつかは芽も出ませんでした。苗が足りない場合を考え、5月26日に追加で播種。こちらは問題なく発芽したので、おそらく先の分は筆者のまき方が悪かったのでしょう。

5月9日にタネを2粒まきしたが、発芽がそろわず生育もよくない。5月20日でもこの状態。
5月26日に再度タネをまいたものは、そろって発芽し生育もよい。写真は6月1日の状態。

発芽しない原因としては、温度不足、水不足、または水分の過剰による腐敗などが考えられます。温度は十分な時期なので、最も可能性が高いのはやはり水不足。特にオクラは硬実種子なので、最初にしっかり吸水させないと発芽しない(できない)場合があります。
「ヘルシエ」のタネは、吸水しやすいようレーザーで小さなキズがつけられていますが、このような処理をしていれば大丈夫、というわけではありません。十分吸水できていないから、発芽しなかったりムラが出たりした…と考えるのが自然でしょう。

トマト初期生育 5月中旬〜

植え付け後は、どれもまずまず順調に育っていきました。
ただ、やはり「桃太郎トマト」と「千果」は勢いがよいし、それに1段につく花がこれまでよりずっと多いのです。以前大玉を作ったときは、1段に2花か多くて3花しかつかず、しかも食べられるトマトになるのは一つだけ。あとは花が落ちたり、着果しても実が肥大しなかったり、尻腐れが出たりで、1株全体で小さな玉が4果程度しか収穫できませんでした。
ところが、今回は2段目など5花もついていて、花が落ちたらちゃんと実ができています。今までは無縁だった摘果も、行う必要がありそうです。

5月20日、見る度に生長が分かるほどの勢い。
大玉は2段目の花が咲き始めた。
ミニの2段目。花芽が多くついていて、まだ増えそうな気配。

特に変わった管理はしていません。わき芽とりを怠らず、水やりは日に一度たっぷりと。以前の失敗要因の一つに、水の不足もあったので、必ず鉢の底からしみ出すまで与えるよう心掛けていました。
成長点付近の葉が強く巻いていたので、追肥は控え、ようやく落ち着いてきた6月1日に、「野菜の充実肥料」をパラパラまいてやりました。
好調な一番の理由は、やはり接ぎ木苗を選んだことでしょう。栽培に不慣れな人間は、まず苗の力に頼るべきだと実感しました。とはいえ、遅れていた実生の「フルティカ」も、徐々に勢いが増してきているし、もしかしたら以前よりは筆者の技術も上がっているのかもしれません(たぶん)。

5月26日、植え付けたばかりの中玉(右)も加えて撮影。
6月8日、中玉も勢いづいてきた。

ただ、そのまま順調とはいきませんでした。なんと、大玉に尻腐れが発生してしまったのです。着果したものが多すぎて、樹の負担が大きかったのでしょうか? 水切れは尻腐れの大きな要因なので、かなり気をつけていたのですが……。

6月8日、2段目の手前の実がわずかに黒くなっていて、尻腐れの兆候がうかがえる。
6月12日、少し黒くなっているだけかも…の願いもむなしく、たった4日でご覧の状況に。
結局2段目の2果がやられてしまった。

尻腐れは、土中のカルシウムをうまく吸収できない場合に起こります。水の不足は主な要因ですが、逆に多すぎても根傷みが出て吸収できていない可能性があります。水は乾きすぎない程度に与えてください。
また、肥料が強すぎても尻腐れは発生します。今はまだ肥料が効きすぎているように見えるので、追肥はしばらく控えてください。着果しているので、今後は肥効も落ち着いてくると思われます。
なお、日当たりが悪いと、吸収したチッソを光合成で消化しきれない場合があるので、肥料は少なくてもチッソ過多の症状が現れることがあります。

水は多すぎても少なすぎてもダメなのですね。肥料が多すぎてもダメだし、日当たりが悪いと肥料が少なくてもチッソ過多になるとは、トマトって本当に繊細な植物です。
夏季の日当たりは問題ないので、とりあえず水のやりすぎに注意し、追肥もしばらく控えることにしました。

「千果」の方も花はたくさんついているのですが、下の葉が枯れてきているのが気がかりです。単にその葉が不要になったからか、それとも何かの病気でしょうか?

ミニの下の葉が黄色く枯れかかり、薄茶色の斑点が見える。

下葉の変色は、上部に実がついてその葉が不要になったか、もしくは葉かびの可能性もあります。
前者の場合、着果位置の下の葉は不要になるので、その葉の養分が実の方へ移り、微量要素の欠乏症が起こるのが原因です。
後者の葉かびの場合は、葉の裏にかび状の胞子が見えます。原因としては、日照不足や加湿などが考えられます。
どちらの場合も、枯れた葉は切ってしまって大丈夫です。

葉をめくってもかび状の胞子は見当たらなかったので、単にその葉が不要になったような気がします。ただ、下の葉が込みすぎて、日照不足になった可能性も否定できません。
枯れた葉を切りとり様子を見ましたが、その後上の葉へ広がることはありませんでした。

オクラ初期生育 5月中旬〜

オクラはというと、「ヘルシエ」がタネからゆっくり生育している間に、購入苗の「エメラルド」はどんどん伸びていきました。これなら「エメラルド」は早めに収穫できそうです。苗からとタネから、どちらも試して正解だと思いました。

5月28日、左の「エメラルド」と右二つの「ヘルシエ」は、かなり差が大きい。

ただ、何もなかったわけではありません。まだ「エメラルド」が小さかったころ、気がついたらアブラムシがびっしりついていたのです。そういえば、以前作ったときも被害を受けた覚えがありました。アブラムシはよほどオクラが好きなのでしょう……。
豊作さんから「無農薬なら牛乳スプレーという手も」と教えてもらったのですが、かびが生えたり、暖かさで腐ったりしても嫌なので、とりあえずセロテープでペタペタと物理的に取り除くことにしました。
数日繰り返すとほとんどいなくなり、牛乳には頼らずに済みましたが、成長点付近の葉がかなりボロボロになってしまいました。

5月13日、気がつけばアブラムシがびっしり……!
セロテープで丹念に取り除き、翌日にはこの状態に。残ったアブラムシも数日で退治できた。
生長してくると、葉のダメージが明らかに。ただ、これ以上の被害はなかった。

ポリポットで育苗中の「ヘルシエ」にも、一部アブラムシはついてしまいました。この被害は必ずあるものとして、早期発見を心掛けないといけないのでしょうね。
気温が上昇してくると、アブラムシの姿も消えていきました。ほかに虫の被害はなく、購入苗の「エメラルド」も直まきの「ヘルシエ」も順調そのもの。6月上旬には「エメラルド」の最初の花芽が確認できました。

6月9日、直まき「ヘルシエ」が目立って大きくなってきた。
6月9日、「エメラルド」の花がそろそろ咲きそうな気配。
6月10日、「エメラルド」の葉の切れ込みが深くなり、肥料切れのサインが。この後追肥を行った。

育苗中のポット苗だけ、少々忙しくしていて作業できず、老化させてしまいましたが、プランターへ植え付けるとなんとか根づいてくれたようで、しっかり育っていきました。

6月23日、老化してすっかり根が回ってしまった苗を、ようやく植え付けた。
どちらも2本仕立てで植え付け完了。この後の生育が心配されたが、思いのほか順調に育ってくれた。

トマト収穫開始 6月中旬

大玉の「桃太郎トマト」は、2段目の2果と3段目の1果が尻腐れでダメになりましたが、残りは今のところ大丈夫のようです。その後は特に異状なく、6月17日に初収穫。1段目はもう1果残っているし、2〜4段目もどんどん収穫していけそうです。
しかも、以前は最大でも95gほどの玉しかとれなかったのに、今回は最初の小さめの玉でも90g近くあって、あとはさらに大きい玉ばかり。本当に、苗を植え付けただけでとれてしまった感じです。

ミニの「千果」も鈴なりといってよいほど実がついていて、収穫まであと少し。2果だけ尻腐れが出てしまいましたが、たくさん実がついているとこれぐらい大したことはないと思えてきます。出遅れた中玉の「フルティカ」も、1段目は中玉サイズに肥大してきました。

6月17日、大玉が真っ赤に色づいた。ついに収穫開始!
最初の玉は89g。残りはこれより大きくなりそう。
大玉の3段目より上にも期待大。
ミニの1段目。そろそろ色づいてもおかしくない。
ミニにも二つだけ尻腐れが出た。でも、これぐらい些細なことと思える。
遅れていた中玉の1段目。ようやく大きくなってきた。

なお、実家で育てていた「桃太郎ゴールド」は、わき芽が伸び放題になってしまい、まめに管理できない状況でトマトは無理と実感。それでもいくつか収穫はできたので、色と食感が楽しめました。

実家の大玉「桃太郎ゴールド」。管理ができず成功とはいえなかったが、それでもおいしい実がいくつかとれた。

オクラ収穫開始 6月下旬

「エメラルド」は、最初の花芽が確認できた2週間後に初収穫。花は次々咲いているので、これからいくらでもとれそうです。
実はこれまで「エメラルド」は食べたことがなかったのですが、本当にやわらかくて、くせがないおいしさにびっくりです。

6月19日、「エメラルド」には花も実もどんどんついてきた。
6月23日、ついに初収穫。3本とることができた。

オクラの花ってきれいですよね。昔初めて見たとき、「これなら部屋に飾れるんじゃ? 」なんて思ったぐらいです。実際は朝咲いて昼にしぼんでしまうから、切り花にはできないけれど、ベランダで育てれば毎日目でも楽しめるのがよいですね。

かわいらしい美しさに、目も癒される。

酷暑の影響 6月末

こうしてトマトもオクラも収穫が始められ、あとは秋の初めまでたくさん食べられる…と喜んでいた矢先のことでした。6月の終わりごろ、数日留守にしていた間に、過去にない異常な暑さがやってきて、帰宅したときはほぼすべての株がシナシナになっていたのです……。
もちろん、留守でも給水はできるよう、水を満たしたバケツから土面へひもを垂らしておいたり、鉢を底面給水トレイに入れたりと、対策はしていました。ただ、これまでの6月なら十分でも、2022年の6月には通用しなかったのです。

急いでたっぷりと水をやり、様子を見ました。一晩経つと葉は再び生き生きしてきて、なんとか回復したかのようでした。ただ、その影響は思った以上に大きかったのです。

5月27日の夜に帰宅し、惨状を見てすぐ水やりしたが……。翌日確かめると、葉がチリチリと焼けたようになっていた。
トマトはどれも似たような状態。
5月29日、全体を見ると葉はそれなりに茂っているようだが……。
「エメラルド」は葉がかなり落ちてしまった。
直まき「ヘルシエ」は、水をやって一晩経っても回復しない。

春夏野菜は、気温の上昇と同時に生育スピードも上がるため、必要とする水分量も多くなります。トマトなどは1日に1株で2Lが必要といわれます。家をあける場合、特に夏場は細心の注意が必要です。
まずは天気予報をきちんとチェックすること。暑さと水不足の恐れがあれば、日陰に移動するなど対策をとることです。
また、ベランダは日当たりがよいと、コンクリートの輻射熱で思った以上に温度が上がります。鉢と土の温度も上がるため、根がバテて生育不良になりがちです。株元を何かの資材で遮光してやれば、影響の軽減が期待できます。
これらの対策をとっても間に合わないことはありますが、ダメージを少なくはできたかもしれません。

トマト栽培後半 7月〜

一度は回復したかに見えたトマトですが、さらにその翌日になると、ダメージが次々に現れてきました。
まず、大玉が次々と尻腐れに見舞われ、3段目より上の計10個がダメになりました。色づきかけていたものと、まだ小さかったものだけが無事で、各段になんとか生き残った実が1〜2果ずつついている状態です。
中玉とミニは尻腐れこそありませんでしたが、全体に焼けてしまったようで、特にミニは成長点付近もやられており、黄色というか薄茶色になってしまっています。

6月29日に8果、翌日に2果、計10果が尻腐れでダメになってしまった。
7月1日の全体像。回復するどころか、ダメージが進んでいる。
成長点は黄色く焼けてしまって、回復の見込みがなさそうに見える。

それでも、生き残った果実はとり続けられました。皮肉なことに、株自体は息も絶え絶えなのに、実だけは真っ赤に色づいていきます。大玉も、筆者にしてはかなり大きなものがとれました。うれしいのですが、なんだか微妙な気分でした。

6月29日、一番大きな玉がとれた。
ミニはまさに鈴なり。好調なだけにしくじりが悔しい。
ミニの重さは15g。以前はもっと小さなものしかとれなかった。
中玉はようやく1段目が色づいてきた。
終盤にとれた「フルティカ」。真っ赤に色づいただけでなく、素晴らしく甘かった。
これが1日の収穫量。計3株しか植えていないことを思えば、十分かもしれない。

トマトは今ついている実だけでなく、これから咲く花芽にもダメージがあります。もし生育が回復したとしても、大玉は着果自体の可能性が低いでしょう。
中玉とミニは本来草勢が強いので、少しでも新芽がつけば回復できるかもしれませんが確証はもてません。
とりあえず、実のついている所より下の枯れた葉を切りとって、風通しよく整理してください。付け根ギリギリでなく数cm離れたところで切ると、勝手に離層ができて落ちます。
全般に草勢も弱いので、もし成長点が伸びてきたら、潅水がてら薄めの液肥で勢いがつくまで追肥してみてください。

アドバイスの通り、枯れた下葉を切りとると、一気に株が寂しくなってしまいました。果たして成長点は復活してくれるのでしょうか。

枯れた下葉を切りとった状態。望み薄に見える。

その後も成長点が伸びる気配はなく、絶望的な状況になってきました。ただ、少しずつわき芽は出てきたので、あとはこれに期待するしかないかもしれません。

わき芽の枝が細すぎて、花は咲いても実をつけるのは難しいかもしれません。草勢が弱いと自然落花します。水や肥料をやっても暑さから根がバテて吸収できず、すぐに草勢が回復するのは難しいでしょう。
もう少し涼しくなると回復するかもしれませんが、今咲いた花が収穫できるまで40〜50日ぐらいはかかるので、日にち的に厳しいかもしれません。

どの株からもわき芽は出ましたが、結局のところほとんど花をつけることはありませんでした。

オクラ栽培後半 7月〜

対照的に、オクラは驚異の復活を見せてくれました。
一番大きく育っていた「エメラルド」は大部分の葉が枯れて落ち、半分裸のようになってしまいましたが、ついていた実はしっかり肥大し、成長点付近も生き生きしています。そのうちわき芽があちこちから伸びてきて、花をつけるようになりました。

直まきの「ヘルシエ」もぐったりして、葉も数枚枯れたりしましたが、数日で復活。花もポツポツ咲いて収穫も始められました。老化苗を植え付けて心配された育苗「ヘルシエ」は、まだ株が小さかったのが幸いして、わずかに葉が枯れた程度でほぼダメージなし。7月20日ごろには初めて花が咲きました。

7月5日、ダメージの大きかった「エメラルド」(左)と直まき「ヘルシエ」だが、かなり回復してきた。
「エメラルド」は実もついている。
植え付けから間もなかった育苗「ヘルシエ」は、ほぼ影響は見られない。
7月7日、直まき「ヘルシエ」は1本仕立て、2本仕立てとも収穫開始。この時点では、やや1本仕立ての方が勢いよく見える。
7月16日、直まき「ヘルシエ」2本仕立て。徐々に1本仕立てに追いついてきた。
7月20日、左から「エメラルド」、直まき「ヘルシエ」2本仕立て、直まきヘルシエ1本仕立て、育苗「ヘルシエ」プランター。ほぼ完全に回復した。

オクラは問題ないようですね。肥料が十分効いているのか、草勢が強いようにも見えます。思ったほど丈が伸びてないのは、水不足の影響もあったかもしれません。今のところ、イボ果も出てないようでよかったです。
草勢コントロールを兼ねて、収穫を始めたら、そのすぐ下の葉まで切りとった方がよいでしょう。特に一本仕立て株は草勢が強くなりすぎ、実がかたくなることもあるので。

アドバイスを受けて、さっそく収穫が始まっていた直まき「ヘルシエ」の下の葉を切りとりました。それから間もなく、育苗「ヘルシエ」も収穫できたため、これも同様に行いました。
「エメラルド」はダメージからすっかり回復しましたが、葉だけは切れ込みが深いままなのが気になります。追肥はしているのですが、あまり改善しないので再度追肥してみました。

7月29日、下葉を整理していくぶんスッキリした。
育苗「ヘルシエ」にも花と実がたくさん。
追肥をしても、「エメラルド」の葉は細いまま。

オクラは収穫が始まったら、とにかく水と肥料を切らさないように気をつけましょう。

ただ、そのまま最後まで順調にはいかないのが残念なところ。お盆の直前、またしても猛暑で葉を枯らしてしまったのです(泣)。
6月末の水不足に懲りて、今回は下からの給水も行い、万全に対策したつもりでした。なのに、たった3日間で、青々と茂った株が無残な状態に変わり果ててしまいました。
特に、サイズ的に底面給水トレイへ入れられないプランターが一番ひどく、もっと上からの給水を増やすべきだったと思います。来年もこのような暑さがやってくるなら、ほかにも対策が必要だと感じました。

8月12日、上と下から給水対策はしたつもりが、またしてもこのような惨状に。

最近では、プランターにも大型のものや水やりを軽減できるものなど種類があります。底面給水の仕組みを備えたプランターを、用いた方がよかったかもしれませんね。

それでも、オクラという植物は相当暑さに強いのですね。こうなっても成長点は生き生きしたままで、今後も収穫は望めそうな気配です。
ただ、さすがにその後は、全体に疲れが見えるようになってきました。先にも書いたように、「エメラルド」は追肥しても葉の切れ込みが深いままだし、直まき「ヘルシエ」も成長点付近の葉が大きくならなず、育苗「ヘルシエ」も花が咲かなくなってきました。
8月後半からは「ヘルシエ」の変形果も増えてきました。横にばかり太って縦に伸びなかったり、曲がってしまったり。「エメラルド」も変形果こそ出ませんが、実が以前より細くなっています。栽培後半ともなると、いろいろ不具合が出てくるものでしょうか。
お盆過ぎから場所によっては午後に日が当たらなくなっていたので、とりあえずオクラ全部を最も日が差す位置へ移動させてみました。

オクラを最も日当たりのよい場所へ。
左の「ヘルシエ」はお盆前、右は8月21日に収穫。8月後半のものは太短くなってしまった。
9月5日収穫、「ヘルシエ」の曲がり果。

写真を見る限り、直まき「ヘルシエ」は大人しい生育で、そろそろ肥料切れに見えます。水分不足も影響し、草勢が落ちて変形果実が増えるものと思われます。
育苗「ヘルシエ」は草勢も強く、プランター なので根の張るスペースが広いので、本来ならこちらの方が順調であってもおかしくないのですが、過去の水切れの影響が出ているのかもしれません。
いずれにせよ、変動要因が多すぎて、どれがどう影響したのか、推察するにはかなり難しいですね。

肥料切れかもしれない…とのことで、追肥の量を少し増やしました。場所移動を含め、どれが効いたのかは分かりませんが、変形果は少し減り、育苗「ヘルシエ」もまた花をつけ始めました。ちょっとした条件の変化で、状態はガラッと変わるものですね。

暑さがやや落ち着いてきて、バテていた根っこが動き出した…といったところでしょうか。吸収できなかった肥料分が吸えるようになり、なり疲れも回復してきたのではないかと思われます。

確かに、8月末から異常な高温がなくなって、通常の夏の暑さに落ち着いた気がします。葉は小さいままだったりして、前のような勢いはないのですが、それでも花はよく咲いて実もついています。
植えた本数がそこそこ多いので、どれか調子が悪くなってもほかでカバーでき、収穫自体はずっと順調です。多いときは1日に7〜8本とれ、9月5日には14本と今季最高の収穫量となりました。

栽培を終えて

秋冬野菜を植えるため、オクラは9月下旬で終わりにしましたが、株の勢いはなくなっているのに最後までよく実をつけてくれました。「エメラルド」は猛暑による水切れで、7月上中旬に半月ほどとれない期間はあったものの、それ以外はずっと収穫し続けられました。直まき「ヘルシエ」も花が咲き始めてからは途切れることがなかったし、育苗「ヘルシエ」も植え付けが遅れたもののまずまずだったと思います。

9月12日、終盤の「エメラルド」。葉は小さく勢いはまったくないのに、実だけはついている。この後さらに花が咲き、9月27日まで収穫できた。

収穫数も記録していたので、表にしてみました。

収穫数
エメラルド 49
ヘルシエ 直まき 2本仕立て 27
1本仕立て 22
育苗 左側 20
右側 15

やはり、収穫の早かった「エメラルド」は数が多いですね。6月末の猛暑で葉が落ちた際は、なかなか次の花が咲かず20日ほど収穫できなかったのですが、それ以外は最初から最後までよい働きをしてくれました。
直まきの「ヘルシエ」は、当初こそ1本仕立ての方が生育がよかったものの、途中で逆転し、最終的には2本仕立ての方が多くとれました。8号鉢に2本は無理かなと思っていたのですが、わりに育つものですね。
育苗→植え付けの「ヘルシエ」は、作業が遅れたこともあって、直まきには及びませんでした。ただ、プランターで土の量が多かったからか、調子が出始めてからは一度にとれる数が多く、後半に活躍してくれました。

また、「エメラルド」と「ヘルシエ」、どちらも丸オクラで大差ないと思っていたら、食べてみるとけっこう違いがありました。やわらかく、とてもおいしい点は同じでも、「エメラルド」は20cmを越えてもやわらかいのに対し、「ヘルシエ」は筋が少し口の中に残るようになります。やわらかさという点では「エメラルド」でしょうか。
ただ、「ヘルシエ」の特長はやはりその粘りで、大きくなればなるほど強くなります。大きくなりすぎたものをすりおろして、お好み焼きの生地に混ぜてみると、ヤマイモにも負けないほどふわふわで、最高においしくできました。逆に「エメラルド」のお好み焼きは少し物足りなかったので、やはり適材適所が大切ですね。

「ヘルシエ」を生地に混ぜたお好み焼きは、驚くほどふわふわ。

一方、トマトは異常高温により途中で終了となりましたが、前半の生育は素晴らしく、接ぎ木苗の効果はまさに絶大でした。致命的な水不足さえなければ、どの品種ももっととれていたのは間違いありません。

収穫数
桃太郎トマト 10
フルティカ 28
千果 97

数を見ると、やはり「千果」の多さは群を抜いていますね。「フルティカ」も出遅れさえなければ、もっととれていたと思います。「桃太郎トマト」は大量の尻腐れを出しましたが、助かった果実は最後まで収穫できました。
「桃太郎トマト」はなめらかで、「フルティカ」は後半のものが抜群の甘さ、「千果」は常に安定した甘さ。高温対策さえしっかりやれば、今後もよいものがとれると確信できました。

「桃太郎トマト」と、実家でとれた「桃太郎ゴールド」。うまく使えば見た目に華やかな料理になりそう。

2022年の気象状況では、仕方ない面もあるでしょう。水切れへの対応は、つきっきりでもない限り難しいものがあります。それに、気温の高さはいかんともし難く、根がバテてしまって養水分の吸収が悪くなり、肥料はやっていても肥料不足に陥ることもありえます。
来年も栽培するなら、今度こそ底面給水できるプランターを検討した方がよいでしょう。また、コンクリート面が日差しで焼けて高温になると、根がバテる要因にもなるので、段ボールか何かで囲ってプランター周りを遮光してもよいかもしれません。

やはり、この異常気象は厳しかったということでしょう。それでもきちんと収穫するため、特にトマトのような作物だと、底面給水できるプランターはあった方がよさそうです。段ボールでの遮光も含め、夏の栽培は何より高温対策が重要だと痛感しました。

まあ、家庭菜園では100%を目指すのではなく、せいぜい80%か、ベランダ菜園なら60%程度が現実的かと思います。ある程度収穫して楽しめたら、早めに諦めて次の作物につなげるのが得策かと、個人的には思いますよ。

こんなものも作ってみました

苗売り場を見回っていたら、どうしても欲しくなって、甘長トウガラシ「甘とう美人」とこどもピーマン「ピー太郎」の苗を衝動買いしてしまいました。どちらも普通のピーマンより特長ある品種で、食べられて大満足です。あまり手をかけられなかったので、次はちゃんと作って、もっとたくさんとりたいですね。

左が「ピー太郎」、右が「甘とう美人」。どちらも大好きな品種。
手はかけなくても、そこそこ収穫できた。