農園芸ライター 久野美由紀
2024/07/22掲載
夏の栽培は台風で強制終了となりましたが、気を落とす間もなく、秋冬のシーズンが到来しました。
今回挑戦するのは、まずロメインレタス「ロマリア」。前年、豊作さんにいただいた苗を植えたところ、ほとんど手をかけなくても収穫できました。しかし今回は、難しい真夏のタネまきと育苗も含め、すべて自分で行うことに。
また、根菜類も作りたいと相談したところ、ダイコン「紅三太」とカブ「スワン」をおすすめされました。「紅三太」はミニサイズで扱いやすいし、「スワン」は小カブ〜中大カブまで好みの大きさで収穫できるので、プランター栽培にはぴったりとのことです。
前年の秋冬は、ハクサイの害虫に悩まされ続けました。がんばってようやく駆除しても、またすぐ別の害虫にやられ、その度に生育は停滞。豊作さんに「収穫までもっていけたのは、ものすごく運がよかった」と言われたほどです。
今回こそは、害虫被害とは無縁で栽培を終える! 筆者は心の中で誓ったのでありました。
前回同様、今回も品目ごとに紹介したいと思います。まずは、最初に取りかかったロメインレタス「ロマリア」です。
昨年植えた「ロマリア」は特に栽培上の苦労はありませんでした。でも、それは最も困難な暑い中でのタネまきと育苗を、豊作さんにやっていただいたから。現に、自分でまいたハクサイとブロッコリーの発芽率はさんざんで、難しさを実感しました。
「ロマリア」の播種時期は8月中旬からとなります。お盆過ぎと8月末ごろの、2回に分けてまくとよいでしょう。高温下の発芽させにくい時期なので、涼しい環境で播種する必要があります。
資材では、タキイの「おてがる菜園セット」が、セルトレイと底面給水トレイ、被覆の「サンサンネット」もついていておすすめです。ただ、レタスは特に防虫ネットはかけなくてもよいので、そちらは「スワン」で使うとよいでしょう。
豊作さんのおすすめに従って、「おてがる菜園セット」を購入。「ロマリア」のタネも用意して、2023年秋冬作のスタートです!
「タネまきは2回に分け、最初はお盆過ぎに」という豊作さんの指示を受け、まずは8月18日に1回目のタネまきを行いました。
選んだ場所は、自宅ベランダの中でも最も日が当たりにくく、温度も上がりにくい北側の部分です。72穴と128穴のセルトレイを使用。あとは底面給水トレイにセットし、水を満たして終了です。
また、翌19日には実家の一戸建て玄関の軒先でもまきました。日があまり当たらず風通しもよい、なかなか好条件の場所です。自宅ベランダと実家の玄関先、2カ所でまけばどちらかが失敗してもなんとかなると思われました。
今は日陰に置いているとのことですが、発芽したらある程度光に当ててやってください。発芽状況を見つつ、場所を移動させるようにします。あまりバラバラに発芽しなければよいのですが。
1粒も発芽しなかったらどうしよう……。そんな心配もしましたが、待つこと4日、8月22日の朝に見てみたら、小さな緑の芽がしっかり顔を出していました。72穴セルトレイ分は12粒まいて10粒発芽、128穴は16粒まいて4粒発芽しています。セルトレイによって成績が違うのは、おそらく72穴の方が壁際でより日陰になり、気温も上がらない場所だったからでしょうか。豊作さんの指示通り、日当たりのよい所へ移動させました。
また、実家の128穴セルトレイ分は、翌23日に8粒中7粒の発芽を確認。比較的涼しい場所だったのが奏功したのかもしれません。自宅、実家とも思った以上に発芽してくれて、まずは一安心。その後、遅れて出た芽もなく、おおむねそろって生育していきました。
さらに1回目のタネまきから10日あまり、9月1日には実家、9月2日には自宅で2回目のタネまきをしました。9月に入って真夏の暑さもやわらぎ、1回目よりは発芽もしやすそうです。実家では、同じセルトレイの少し奥、日陰になる部分にまきましたが、自宅の方は数日留守にする予定だったため、発芽後の徒長を恐れて、最初からベランダの日なたになる所へ置くことにしました。
実家の玄関先では、まいた5粒がすべて発芽。風通しのよい環境は芽出しに向いているようです。ただ、1回目分はやや日当たりが不足しているのか、どうも徒長ぎみなのが気になります。
自宅ベランダの方は、不在の間に強い雨で流されたのか、双葉が出ているのは半分以下。それでも、1回目分は徒長せずにしっかり育っていて、自宅と実家のよい苗を組み合わせれば十分まかなえそうでした。
育苗はつきっきりでもない限り、それほど思うようにはいきません。あまり完璧を求めるより、必要な苗数が確保できればよし、と考えてください。
理想は日のよく当たる所ですが、不在時に日照りで枯れてしまうよりは、多少日当たりの悪い場所で徒長したとしても、その方がよい場合もあります。
確かに、枯れるより徒長する方が、まだマシですね。あまり心配しすぎないようにします。
必要な苗が確保できればよし、とのことですが、1回目分は自宅ベランダの方が元気そうだし、2回目分は実家玄関先が発芽、生育とも良好なので、それを使えばよいでしょうか。1回目はそろそろ植え付けできそうです。
と、ここまではなかなか順調に進んでいた「ロマリア」栽培ですが、筆者の場合は必ず途中で何か起こるのですね。
夏の間は何度も異常な高温が報じられましたが、9月に入ると残暑はありつつも少しずつ涼しくなり始めていました。ところが、9月10日を過ぎたころ、突如真夏の気温が戻ってきて、おそらくはその暑さが、思わぬ形で影響を与えることになったのでした。
9月14日のこと、実家にいた筆者は、いつものように玄関先へ苗の様子を見に行っていました。徒長も少しは回復し、生育を見るのが楽しみだったのですが、その日の様子は明らかに前日とは違っていました。突然、葉がボロボロになっていたのです。
前年、何度も害虫と格闘させられた、嫌な記憶がよみがえりました。とはいえ、苦しんだのはあくまでハクサイで、同じベランダで栽培していた「ロマリア」は被害なし。なので、レタスの害虫については、ほとんど心配していませんでした。
けれど、これは明らかに害虫のしわざです。そう確信して調べてみると、ほどなく体長2pほどの緑の虫が、底面給水トレイの側面にへばりついているのを発見。筆者は半分パニックになりつつ、ほかにもいるはずと必死で苗を調べました。結果、計3匹を見つけ、即座に駆除しました。
被害はこれで収まらず、翌日、自宅ベランダの苗に似たような食害痕を発見。そして、おそらくは実家と同じ種類の虫が、近くの元気な葉にとりついて、おいしそう?に食事していたのです。サイズも実家のと似たようなもので、ほぼ同時期に発生したのは間違いないと思われます。
前年は害虫とは無縁だったのに、突然の被害。しかも、距離がかなり離れた自宅ベランダと実家玄関先で、同じ時期に同じ虫が現れたとなれば、このところの高温の影響を疑わざるを得ません。
自宅ベランダでは最初の1匹しか見つからなかったのですが、まだセルトレイのどこかにひそんでいる可能性は十分あります。被害の多い苗は除いて、残りをポリポットへ移植し、離れた場所へ置いてみました。
本来はこのあたりで植え付けを考えていたのですが、どこに害虫が残っているか分からない状態では、とても行うことなどできません。少しだけ様子を見ることにしました。
そして、実家へ戻ってみたら、恐れていたことが起きていました。1回目タネまき分に続いて、少し離していた2回目分へも被害が拡大。セルトレイの中に緑の幼虫がうじゃうじゃしています。しかも、なんとか駆除しようと必死で探して15匹も捕獲したのに、翌日には11匹見つかって、収まる気配がありません。
その翌日からはさすがに数は減りましたが、入れ替わるかのようにバッタがやってきて、盛大に食害を始めました。何度か捕殺しても、おそらく玄関の横にある庭に生息していて、数匹とったぐらいではどうにもなりません。さすがにこれはもう無理だと悟りました。
これはヨトウムシかオオタバコガでしょうか。いずれにせよ、ガがタマゴをを産みつけているので、今から農薬なしでやるのは厳しいかもしれません。すでに播種時期は過ぎていますが、この暑さですから、ダメもとでまき直しも選択肢に入れてみては?
やはり、まき直すしかないんだろうな。実家玄関先の惨状に、再度タネから育てる覚悟はしました。それでも一縷の望みをかけて、9月20日、自宅へ戻ってみれば……。なんと、ポリポットの苗にその後食害された痕跡はなく、健康な青々とした葉が伸びてきていたのです!
ついた虫が駆除した1匹だけだったのか、それともポリポットに植え替えて場所移動させたのがよかったのか……。理由は分かりませんが、とにかくこの苗なら植え付けできます。
苗が使えるとなれば、善は急げでさっそく植え付けを始めました。
いつも使用している大きめのプランターに、タキイ「いきいき育つまじめな野菜の土」を投入。よさそうな苗を3株選び、植え付けて水をやれば完了です。ただ、害虫の被害が身に染みていたので、予定外ですが少しの間だけ防虫ネットで被覆し、侵入を防ぐことにしました。
数日経っても虫の気配はなく、株自体もしっかり活着して順調に生育しているようでした。
約10日後の10月1日には、次の植え付けを行いました。自宅ベランダで2回目に作った苗は、雨に叩かれたりしてダメージを受けていましたが、なにせ実家玄関先の苗が全滅してしまったので、これを使うよりほかありません。幸いその後は問題なく、9月末には十分な大きさに育っていました。
1回目と同様に植え付け、ネットで被覆。もう少し涼しくなり、害虫の危険が少なくなれば外す予定です。
先に植え付けた株は、葉がかなり育ってきているし、前年の経験からしても、「後は何もしなくても収穫できる」と思われました。
ただ、植え付けすべてで問題がなかったわけではなく、6日後に一つトラブルを発見。左の1株だけが、根元からちぎれたようになって、倒れていたのです。
実は、この現象は初めてではなく、前年にも同じことがありました。植え付け翌日、1本だけがしおれていて、持ち上げてみたら根から完全に切り離されていたのです。また、今回の育苗時にも1本同様に倒れていたことがありました。
最初はネキリムシを疑ったのですが、この現象が起こるたびに周囲の土を探ってみても、虫らしきものは見当たりません。もしどこかにひそんでいたら、ほかの株もやられるはずなのに、被害は一切出ていないのです。
そして今回は、この株を植えるときだけ、根元を少し揺らしてしまったのが気になっていました。そういえば、苗が倒れたのもポットを移動させた後でした。
どうやらこれば、筆者が少々荒っぽく扱ったため、根元が傷んでしまったことが原因の気がします。ほかの品目では、植え付け時に根元を傷めたことなどなかったのですが、同じように作業してもレタスは少し繊細なのでしょうか。もっとていねいに扱うべきだったと反省しました。
欠株になったところは、予備の苗をそっと植え付けました。
順調のようで何よりです。
多少のトラブルはつきもの。100点を目指さず80点でいきましょう。
9月はまだまだ暑い日が多かったのですが、さすがに10月に入ると涼しさが増してきました。10月14日には防虫ネットを取り外しましたが、害虫の気配はなく、ようやく秋冬野菜にとってよい気候となったようです。
気がかりなのは、2回目分で後から補植した株が、隣の株に圧されていることぐらい。1回目分は早くも抱合(結球)が始まりました。
上の写真で分かるように、10月21日の段階ではかなり抱合が進んでいました。これなら次は収穫できそうだし、大好きなシーザーサラダが食べられる!と、期待は高まる一方です。そして1週間後、帰宅してワクワクしながらベランダへ降りてみたら……。そこには目を疑うような光景が広がっていました。なんと、収穫間近だった3株すべてが、見事にトウ立ちしていたのです。
ありえない現象に、一瞬凍りついたようになりつつも、何が原因か頭の中で探りました。やはり、秋になっても気温が下がらなかったせいでしょうか。そういえば10日ほど前に、突然夏の暑さが戻ってきたような日がありました。
病害虫なら対応次第でなんとかなっても、トウ立ちしたものはどうにもなりません。筆者はすっかり意気消沈してしまいました。
断言はできませんが、「高温短日」条件が影響したかと思われます。
平年であれば、盆明けは播種適期なのですが、今年はその後も高温が続き、結果的に適期より早まきしたのと同じような条件になったのではないでしょうか。ベランダで日照不足もあるかもしれません。
「高温短日」条件ですか……。確かに、タネをまいてからも異常な高温が続いたので、結果的に早まき状態になったというのは納得です。しかも、自宅ベランダは日当たりが悪くなってくる時期なので、「短日」条件にも当てはまります。10日前の暑さなど、悪い条件が重なってしまったのかもしれません。
なお、「高温」と聞いて、植え付けから少しの間ネットをかけていて、中の温度が上がった可能性も…とも思ったのですが、数日後に同じ苗を植えていた実家でもトウ立ちが発生。これは1回目の余り苗を実家へ持ち帰り、庭の植木鉢で栽培していたもので、被覆などしていなくてもトウが立っています。ネットの有無はたぶん関係なく、やはり異常な高温下でのタネまきと育苗が、一番の原因のように思われました。
立ってしまったものは仕方ないので、苦いかもしれませんが、葉をかきながら消費してみては?
「トウ立ちしたものはまずい」という先入観があったので、食べる勇気が出なかったのですが、苦労して栽培したことを考えると、このまま捨ててしまうのも惜しい気がします。豊作さんのすすめに従い「葉をかきながら消費」してみることにしました。
もう11月7日になっていて、出てきた花芽はかなり伸びています。発見の翌日にとったものは、まだロメインレタスらしさが残っていたのに、今では何の野菜か分からない外観です。
まずは発見翌日にとった株。これは思ったよりちゃんとレタスの味がしていて、微妙な苦みはあっても普通に食べられる程度です。続いて、発見から10日後にとった株。さすがに少し苦みとかたさは増していますが、食べられないこともありません。ただ、伸びてきた花茎の部分はとても苦くてかたく、一口で断念。トウ立ちした部分がまずいのは、まあ当たり前かもしれませんが、同じ株でも本来レタスになるはずだった部分は、そこそこ普通に食べられるのが意外でした。
さすがに苦かったようですね。トウ立ちすると花芽の方に養分をとられるため、えぐみが増すのかもしれません。
トウ立ちしてすぐなら、ちゃんとレタスとして食べられることが分かったのはよかったです。とりあえず、自家消費するには問題なさそう。トウ立ちが進んで苦みが増す前に収穫することですね。
1回目のタネまき分は悲惨な結果に終わりましたが、幸いまだ2回目分が残っています。個体によって出来不出来はありますが、ようやく抱合も始まりました。1回目と比べて生育が遅いとばかり思っていたのですが、うまくいった前年の記録を確認してみたら、ちょうど2回目と同じような進み具合だったのですね。つまり、1回目が早く育ちすぎたということで、今回は遅めにまいてちょうどよかったのでしょう。
後まきの分が抱合しているとのこと、よかったです。
今年のような極端な天候では、なかなか適期を把握するのが難しかったかもしれませんね。
2回目分はその後も旺盛に育ちました。気がかりなのは、生育のよい中央の株に左右がやや負けた感があることで、日が経つごとにその傾向が強まっています。11月12日の段階で、中央はかなり抱合が進んでいますが、左は植え直しの出遅れが響き、狭いスペースに追いやられて苦しそうだし、一方の右の株はなぜか葉がまとまらず、3カ所で抱合しようとしています。植え遅れの分は仕方ないにせよ、前年はバラバラに抱合することなどなかったので、なぜこうなるのか見当もつきません。
それでも中央の株だけは何とかなる、と期待をしかけていたら、11月18日、なにやら不穏な動きを発見。6日前は閉じていた株の先端が、やや開いて新しい葉が顔をのぞかせていたのです。もしやこれはトウ立ちした葉では……!?
実際はどうか分かりませんが、とにかく残り3株の中で唯一まともに生育している株です。これがトウ立ちしてしまったら…と思うと、恐怖を覚えてしまいます。できればあと1週間ほど待ちたかったのですが、最悪の場合を考えて収穫してしまうことにしました。
調理の際に中を確認してみたら、幸いトウ立ちではなかったようで、やや早めながら葉がきれいに重なっています。食べると、以前味わった「ロマリア」の歯ごたえやみずみずしさが、ちゃんと感じられました。
とりあえずは一安心。あとは、生育がいびつになっていた左右の株が、少しでも正常に育つことを願うだけです。
残る2株は、なかなか思うように生育しませんでした。圧迫していた株がなくなっても、さすがに11月なかばを過ぎると、勢いづくのは難しそうです。
それでも12月に入るころには、左側の小さかった株も育って、抱合も進んできました。ただ、3カ所で抱合している右側の株は、一つひとつが貧弱すぎ、今後どこまで大きくなるかは不明です。
天候は相変わらず不安定で、寒い日が続いたかと思えば、突然最高気温が20℃を超えるような日もあり、野菜にかかるストレスも大きそうなのが気がかりでした。
そのまま年も明け、そろそろ収穫を考え始めた1月8日、恐れていた事態は起こりました。なんと、三つに分かれて抱合していた右の株が、そろってトウ立ちしていたのです。分かれて抱合し始めた時点で、まともなロメインレタスでとることはあきらめていましたが、小さいなりに楽しんで食べるつもりだったのに……。これ以上の生育をあきらめ、とってしまおうとした矢先のことでした。
なお、このプランターの横で、2回目の余り苗を栽培していたのですが、やはり1株が二つに分かれて抱合し、同じようにトウ立ちしていました。そちらは隣の株に圧迫されていたわけではないので、原因はやはり季節外れの高温ではないでしょうか。
三分割になった株は、おそらく育苗中の虫の食害で、中心部の成長点が障害を受けていたのかもしれません。正常なものと比べて生育遅れは否めませんが、出荷するわけではないし、自家消費する分には問題ないでしょう。あまり神経質にならず、植えてある状態のまま、随時葉をかきとりながら消費していった方がよかったのでは?
気温の変動があまりに激しかったので、トウ立ちだけではなく、三分割の原因もそれだと思い込んでいました。確かに、苗の時期に食害されたことを思えば納得です。
そして、小さな株が抱合するまでがまん強く待つより、ある程度生育した時点で少しずつかきとっていけばよかったのですね。そうしていれば、少しでも食べられたはずです。
さて、現時点で1回目、2回目合わせて6株植えたうち、収穫できたのは1株だけで、残るは小さな1株のみ。幸い抱合は進んでいて、もう少し中が詰まれば…という段階です。早くとりたい気持ちを抑え、あと少し待つことにしました。
その後も少しずつ抱合は進み、玉のボリュームもいくぶん増してきた気がします。ただ、1月28日になると、外葉がなんだかぐったりしてきました。どう見ても、今まで見てきたトウ立ち株と似た雰囲気です。これ以上待っても太らないだろうし、なによりトウ立ちだけは勘弁と、急いで収穫することにしました。
ミニサイズではあるものの、とりあえずは2株目の収穫です。6株植えてロメインレタスになったのは3分の1。残念な結果ではありましたが、それでも最後に収穫して終われたことに、少しだけ安堵したのでありました。
正直なところ、栽培前はこれほど苦労するとは思ってもいませんでした。
前年は本当に苗を植え付けただけで、なんの苦労もなく収穫までできました。同じベランダに植えていたハクサイが、害虫に苦しめられたのとは対照的に被害もなく、どれもきれいに抱合し、すぐ収穫しなくてもトウ立ちなどしませんでした。なので、暑い中の発芽さえうまくいけば、後は問題ないと考えていたのです。
それが、発芽だけはまずまずうまくいったものの、苗は害虫にやられ、特に実家の玄関先ではバッタにも食い尽くされて全滅してしまいました。
街中のベランダということで、虫の害が出ることはあまり予想していませんでした。ちょっとこちらも甘く見ていましたね。暑い時期は虫の活動も活発なので、育苗中は日差しと暑さ対策も含め、ネットをかけておくべきだったと思います。庭のあるご実家の方は必須でした。
ただ、観察をまめにすることで、早めに被害に気づき、対策がとれたのはよかったです。農薬を使わないなら、育苗本数が少ない場合は、物理的に手で補殺するのが現実的です。
幸い、残った自宅ベランダの苗は順調に生育、植え付けするも、突然1回目分3株がトウ立ち。2回目分は株に勝ち負けが出たり、葉がバラバラになったりと、ほぼすべての段階でトラブルに見舞われました。
一番の原因はやはり、記録的な高温の可能性が高いと思われます。トウ立ちには、おそらく豊作さんのいわれるように、育苗時期の暑さで早まきと同じ状態になったことが関係しているのでしょう。また、平年並みの気温が続く中で、突如夏の気温が戻ることが多かったのですが、思い返せば決まってその後に何かが起こっていました。急激な気温の変動は、野菜にとってもストレスになったのではないでしょうか?
作型表には地域の気候などを考慮し、その品種を作るうえで生育適期になる期間が表示されています。しかし、近年は気候の変動幅が大きく、作型表の頭と尻尾の時期は、若干、栽培の難易度が上がってきたと感じます。特に夏まきの場合、早めの時期はリスクが高くなるようです。
今回は、もう少し栽培のしやすい9月上中旬まきを選ぶか、あるいは早い段階でのまき直しをすすめた方がよかったかもしれません。ちなみに、前回お渡しした苗は9月10日まきでした。これは「中間地」ではなく、「暖地」の適応期間になります。逆に遅れすぎると、十分大きくならなかったり、抱合しなかったりすることもあるので、どちらのリスクを選ぶかは考え方次第です。
最近の気候変動に、作型表がすべて対応するのも難しいと思われます。なので、家庭菜園などでは作型表の範囲の中で、比較的リスクの少ない時期を選ぶのがおすすめです。
お盆過ぎは今年の気候では暑すぎたし、かといって遅くまきすぎるのもリスクがあるということですね。となると、やはり8月下旬から9月10日ごろまで、段階的にまいておくのが一番確実でしょうか。特に、9月になっても気温が下がらないときは、遅めにまく必要がありそうです。
そして、苗の間はネットを張って害虫の侵入を防ぐこと。そうすれば、もう少しは収穫率を上げることができるのではないでしょうか。
「苗半作」という言葉があるように、本来苗作りは品質や生育に影響の大きい、大変重要な作業です。少量の苗を育てるのもかえって難しく、買った方が気を使わなくてよい、手間もかからず簡単だとは思います。
ただ、ちょっと変わった品目や品種を作りたいときなど、どうしてもタネから作る必要が出る場合もあるでしょう。その場合は、必要本数ギリギリではなく、少し多めに播種する。時期をずらして段まきすることでリスクを抑える。そうすれば、収穫時期を分散することもできます。
育苗するか苗を購入するかは、結果重視かプロセス重視かなど、それぞれの優先順位で決めてもらえばよいでしょう。
収穫できた貴重な「ロマリア」は、念願のシーザーサラダにしていただきました。以前、取材でレストランにうかがったとき、「ロマリア」の葉を丸ごと器のように使い、その中へサラダの材料を盛りつけていたのが斬新で、ずっと記憶に残っていたのですが、せっかくなので真似させてもらうことに。
筆者の「ロマリア」だと少々サイズが足りず、葉を2枚重ねて置いたため、「映える」とまではいきませんでしたが、少しはレストラン気分を味わえて、自己満足はできたのでした。
ロメインレタス「ロマリア」と並行して行ったダイコン「紅三太」栽培の模様は7月29日(月)に、カブ「スワン」栽培は8月5日(月)に更新する予定です。
どうぞお楽しみに!
2024年
秋種特集号 vol.58
2024年
春種特集号 vol.57