静岡県 JAとぴあ浜松管内 温暖な気候を生かした施設園芸で、味にこだわるホウレンソウ作り集団 「福兵衛」はぴったりの品種

2020/07/20掲載

地域概況

浜松市は、都市部、平野部、沿岸部、中山間地域がそろう環境です。繊維、楽器、輸送用機器の三大産業を中心として、近年では産学官の積極的な連携により、高度な技術の集積が進みつつあります。地形もさまざまでそれを生かした農業が展開されていますが、歴史のあるトマトやセルリーの栽培などが有名です。西区ではタマネギやチンゲンサイ、菊やガーベラなどの花きが生産され、昭和50年代くらいから葉ネギ栽培も大規模に行われています。

静岡県JAとぴあ浜松

JAとぴあ浜松管内「ホウレンソウ協議会西支部」

葉ネギを栽培していた生産者の中から、連作障害対策および新規作物での多角化のため、ホウレンソウに取り組むグループがあります。

JAとぴあ浜松管内のホウレンソウ協議会西支部、新野敏晴会長が率いる5名の方々です(別途水耕1名)。ホウレンソウ栽培は、ハウス面積13haで取扱価格4億1000万円を稼ぎ出しています。

メンバーの大半は葉ネギの周年栽培と複合経営で、7年前にハウスで栽培する新規作物としてホウレンソウに取り組み始められました。3~5年でホウレンソウの取り扱い額が葉ネギを超えました。現在ホウレンソウの好調さを受けて、部会全体で2・1haのハウス増設が計画されています。

左から粟倉さん、谷野さん、田さん、鈴木さん、袴田さん。ホウレンソウに取り組んでよかったと部会の作付け意欲も高い。
左から粟倉さん、谷野さん、田さん、鈴木さん、袴田さん。ホウレンソウに取り組んでよかったと部会の作付け意欲も高い。

部会のこだわり

部会の栽培は施設栽培を中心に取り組まれています。そのためべと病の不安は少なく、品種選びは耐病性以外の特性が重要です。出荷の特長一つ目は、200gの出荷が主流の中、35〜36pの丈で150gの出荷袋で差別化します。

二つ目は「味」へのこだわりです。主に食味を判断する担当は袴田さん。導入にあたっての品種選定では試験したホウレンソウをゆでた状態で見極めるため、ホウレンソウが嫌いになるほど食味試験をされたそうです。中でも「福兵衛」はお気に入りの味でした。肉厚でホウレンソウらしい味。色も悪くありません。栽培性も含め部会の総意を得て導入となりました。

150g35cmでの出荷。
150g35cmでの出荷。

秋〜春「福兵衛」を中心に

立性で密植気味にも対応。
立性で密植気味にも対応。

作型は個人で異なりますが、夏場は避けて年5作、8月25日の盆明けごろから秋作がスタート。10月10日以降の作型から2月いっぱいまで「福兵衛」が作付されます。

また、温暖な浜松市では、厳寒期に一部「伸兵衛」も役立つ場面はありますが、ほぼ「福兵衛」で続けられるとのこと。作型の幅が広く使いやすいと大変好評いただいていました。

具体的に「福兵衛」の使いやすさを部会の方にお聞きすると、「葉軸に弾力があり、折れにくい」と感じておられます。これには圃ほ 場で収穫にあたっておられたパートの方々も作業がはかどると同意されていました。

「見た目にボリュームがある」というのも好まれる要素です。立ち姿でボリュームがあり当地の35cmでの出荷規格にも適しています。

さらに「発芽がそろう」と皆さんが口にされていました。副会長の田さんは、昨年も今年も一粒も欠株がないほど抜群の発芽ぞろいだったと感心されていました。気候条件によって毎年良好とはいかないかもしれませんが、発芽の勢いがあるようです。

播種にあたって部会では、15cm幅、4条まきの真空播種機を使われていますが、株間は各人の条件で異なっています。撮影させていただいた谷野さんハウスの土壌は、弾力のある赤土で、有機質主体で土づくりに力を入れられています。ネギとの輪作で連作障害を回避するというのも相乗効果を狙ってのもので実際反収が向上しているそうです。加えて食味の向上にもつながるそうです。谷野さんは潅水についても発芽をそろえるために、最初は潅水チューブで土壌が乾かないようたっぷりと水を浸透させ、発芽後は均一に潅水するよう天井からの潅水施設で散水されています。

撮影をさせていただいた谷野さん。ハウスで収穫中の「福兵衛」。2月5日撮影で播種後65日程度の草姿。
撮影をさせていただいた谷野さん。
ハウスで収穫中の「福兵衛」。2月5日撮影で播種後65日程度の草姿。
ボリュームがあり葉軸に弾力があるので収穫時折れにくい。下葉の整理も楽。
ボリュームがあり葉軸に弾力があるので収穫時折れにくい。下葉の整理も楽。
部会様の声

田さん(副会長)
「福兵衛」は比較試験した中でも抜群に評価が高かったとのこと。根が強く病気が出ない。中でも発芽とそろいのよさが驚きだったそうです。

袴田さん
食味担当の袴田さんは歯ごたえがあり、おひたしにしたときにホウレンソウらしいコクも残って一番おいしく感じたとのこと。部会で唯一機械収穫をされる袴田さん。「福兵衛」は立ち姿で折れにくく、機械収穫にも向いているとのことでした。

鈴木さん
トマト栽培から5年前にホウレンソウ作りへ転換。「福兵衛」は株張りのよさがお気に入り。5人の中では途中参加の鈴木さんですが、ホウレンソウを導入してよかったと後悔はないと力強い。