岐阜県JAにしみの海津トマト部会 県下一の冬春トマトの産地に大玉で秀品率高い「桃太郎ネクスト」が導入!

2020/07/20掲載

海津トマト部会鷲野耕治さん(右)とJAにしみの海津集出荷センター臼井祐一さん(左)。鷲野さんの「桃太郎ネクスト」圃場にて。
海津トマト部会鷲野耕治さん(右)とJAにしみの海津集出荷センター臼井祐一さん(左)。鷲野さんの「桃太郎ネクスト」圃場にて。

地域概況

県下一の冬春トマトの産地

JAにしみのは岐阜県の南西部に位置し、大垣市・海津市・安八郡(神戸町・輪之内町・安八町)・養老郡(養老町)・不破郡(垂井町・関ヶ原町)をエリアとしています。県下有数の穀倉地帯として、冬春トマト、冬春キュウリ、イチゴ、コマツナ、葉ネギ、ミズナなど多くの特産品があります。なかでも冬春トマトは県下1位の生産量を誇り、夏秋トマトの代表産地である飛騨地方とともに、岐阜県の周年トマト生産を担う重要産地です。

岐阜県JAにしみの

JAにしみの海津トマト部会

海津トマト部会(田中英雄部会長)は、部会員数69名、作付面積21haで作型は抑制+半促成(0.5ha)、長段(10.5ha)で、出荷期間は10月〜6月、年間出荷量は平成31年産で4117.2tと、JAにしみのの冬春トマト生産において中心となる産地です。平成15年に他の部会に先駆けて、岐阜県が取り組む農産物の認証制度「ぎふクリーン農業」の認証を受け、マルハナバチを導入して、農薬の散布量を減らすなど「安全・安心・健康なトマト」の栽培に取り組まれています。また、部会のオリジナルブランド「美濃のかいづっ子」を展開し各市場で販売して差別化を図っています。

地元の小中学生が考えたイメージキャラクターが目印の「美濃のかいづっ子」。
地元の小中学生が考えたイメージキャラクターが目印の「美濃のかいづっ子」。

出荷先は主に、地元岐阜を中心に愛知、北陸(福井・富山・新潟)などの市場と地元のファーマーズ(直売所)で、「地産地消」に根差した生産を行われています。

産地の要望は大玉に栽培できる品種

海津トマト部会では、大玉になるトマトにこだわり、「CF桃太郎J」を長く栽培されてきました。近年、被害が拡大し問題となっているトマト黄化葉巻病については、産地全体で防虫ネットと粘着シートを活用して徹底的にコナジラミ防除を行うことで被害を最小限に防いでいます。

また、近年、従来の抑制と半促成の2作から、8月定植の促成や長段栽培が増えてきました。そんななかで長期栽培に適する馬力があって、大玉でしかも食味のよい品種が求められていました。こうして導入されたのが、大玉傾向で食味がよく秀品率も高い「桃太郎ネクスト」です。2年の試作期間を経て平成30年より本格導入され、本年で導入2作目の栽培になります。

鷲野さんのトマトハウス。産地では防虫ネットと粘着シートを活用した徹底的な耕種的防御でトマト黄化葉巻病の被害を最小限に防いでいる。
鷲野さんのトマトハウス。産地では防虫ネットと粘着シートを活用した徹底的な耕種的防御でトマト黄化葉巻病の被害を最小限に防いでいる。
冬季の受粉にはマルハナバチを使用。
冬季の受粉にはマルハナバチを使用。

馬力があって秀品率の高い「桃太郎ネクスト」

管内の生産者鷲野耕治さんの圃場に伺いました。鷲野さんは海津トマト部会の元・技術長で「桃太郎ネクスト」を試作のころより栽培いただいています。

ハウス2カ所、総栽培面積は50a(20aと30a)の土耕、年1作の長段栽培で、本作はすべて「桃太郎ネクスト」を導入されています。定植は9月3日、2本仕立て10.5cmポット苗を10a1000本植えで、台木は「グリーンセーブ」を使用しています。

「『ネクスト』のよさは、大玉に栽培でき食味もよく秀品率が高いこと」

特に秀品率については、これまで主に栽培されてきた「CF桃太郎J」より高く、これまでA品・B品で60%程度だったものが「桃太郎ネクスト」では80%を超えました。 

栽培性においても、「花つきがよく、1月でも花落ちが少ない。馬力があって長期栽培に向く品種」と高い評価をいただきました。花つきについてはよすぎるくらいなので、摘果は欠かせないとのことで、現在は1段4果どりとして秀品率を高めています。

「ネクスト」栽培の勘所は、水と肥培管理で、「CF桃太郎J」よりは水が多く必要との見立てで水切れや肥料切れには敏感なので、これを切らさない管理が重要になります。

また、「ネクスト」は葉が大きいので蒸れやすくならないよう、定植時の株間を55cmと広めにとり通気をよくすることで病害を防いでいます。

トマト栽培を始めて四十数年の鷲野さん。試作は「ネクスト」以外に「桃太郎ホープ」「桃太郎ピース」も栽培。「ネクスト」は大玉になり食味よく秀品率も高いと評価いただいている。
トマト栽培を始めて四十数年の鷲野さん。試作は「ネクスト」以外に「桃太郎ホープ」「桃太郎ピース」も栽培。「ネクスト」は大玉になり食味よく秀品率も高いと評価いただいている。
栽培性と産地の求める大玉を実現できる「桃太郎ネクスト」。
栽培性と産地の求める大玉を実現できる「桃太郎ネクスト」。
9月3日定植、10月20日から収穫開始、長段どりで6月末まで出荷を行う。
9月3日定植、10月20日から収穫開始、長段どりで6月末まで出荷を行う。
10.5cmポット2本仕立て苗を使用。2本仕立てにすることによって苗の栽植本数を減らすことができる。
10.5cmポット2本仕立て苗を使用。2本仕立てにすることによって苗の栽植本数を減らすことができる。

新規就農者も増えて今後の発展に期待

新規就農者も増えて今後の発展に期待

海津トマト部会の部会員は50〜60代が中心ですが、後継者や新規就農者など20〜40代の若い年齢層も着実に増えている活気のある産地です。

特に、「トマト独立ポット耕栽培システム」を始めとした養液栽培の生産者が増えているのが特徴です。これは、岐阜県就農支援センターが主体となり、海津地区におけるポット耕栽培での冬春トマトの就農支援を行っている関係で、5年間で15名の新規就農者が増えました。来年も1名増える予定です。従来からの土耕に加えて養液栽培の生産者が増えたことで生産量もアップしています。

食味にこだわる産地に欠かせない「桃太郎ネクスト」

「普通、トマトの季節は夏秋ですけれど、冬春時期に安定出荷を行い、年中供給できるようにしていきたいですね。地産地消で地元の人にたくさんトマトを食べてもらいたい」

JAにしみの海津集出荷センター臼井祐一さんは、岐阜県の冬春トマト産地としての使命を感じておられます。

現在、品種構成は「CF桃太郎J」「桃太郎ネクスト」で全体の6割程度、他社品種も4割程度入っていますが、JAとしては共選で出荷していくにあたって玉ぞろえをよくし、品質を安定させるためにも、もう少し品種を絞りたい方針です。

しかし、臼井さんは食味のよさや秀品率を求めるなかで、「桃太郎」は重視したい品種だと考えています。「当地で昔から栽培してきた『桃太郎』は外せない品種だと思っています」

大玉と食味にこだわる海津トマト部会、これからも市場の求める品質に応えるために、栽培性と食味を立した「桃太郎ネクスト」が一助となることを願います。

「『桃太郎』は当地に欠かせない品種」と臼井さん。昨シーズンにデザインを一新した出荷箱を手に。
「『桃太郎』は当地に欠かせない品種」と臼井さん。昨シーズンにデザインを一新した出荷箱を手に。

(この記事は2020年1月に取材したものです)