トマト研究歴約20年の“ミスター桃太郎”が語る「桃太郎トマトって、すばらしい!」

溢れんばかりのトマト愛を持ち、1日3個の桃太郎トマトを食す“ミスター桃太郎”こと、トマト研究家の唐沢明さん。本コラムでは唐沢さんが感じる「桃太郎トマト」の魅力を、存分に語っていただきます。

2019/07/22掲載

唐沢 明さん

Profile 唐沢 明さん

トマト研究家、大学で講師を務める。トマトのダイエット効果やトマト料理レシピなどの研究を中心に、トマト大好きサークル「トマト赤デミー」を主催。テレビ、雑誌、イベントなどへの出演も多数。主な著書に『夜トマトダイエット』(ぶんか社)、『トマトジュースダイエットレシピ』(サンクチュアリ出版)など(タキイの取り扱いではありません)。

唐沢明さんのトマト赤デミーWEBサイト
http://www.akira-dream.com/tomato/

第3回役に立つ!おいしいトマトの選び方
知ってるつもり?のトマトリビア

トマトの旬は夏だけ?

トマトは夏が旬で、それ以外は冬眠?かと思われがちですが、いやいやそんなことはありません。実は、露地栽培のほか、温室・ハウス栽培も行われているので実は一年中出回っているオールシーズン野菜なのです。
露地栽培なら6〜9月が旬で、6月から10月の夏秋もののトマトは北海道、福島、茨城産などが多く、一方、11月から5月の冬春ものは千葉、栃木、愛知、熊本産などが多いのです。そんな一年中「旬」のトマトのおいしい見分け方をいろいろな角度から見ていきましょう。

トマトの旬は夏だけ?

お教えします!唐沢流おいしいトマトの基礎知識

完熟出荷できる桃色トマトの元祖「桃太郎」。高糖度で甘くておいしい。誕生以来シリーズ全体で30品種以上が開発されている。
完熟出荷できる桃色トマトの元祖「桃太郎」。高糖度で甘くておいしい。誕生以来シリーズ全体で30品種以上が開発されている。

トマトは南アメリカの西部高原地帯が原産です。

16世紀にヨーロッパへと伝わりそこから世界中に広がっていき、日本には17世紀ごろ入りました。最初は「目で楽しむ」観賞用でした。意外ですね?

明治期には少しずつ「口で楽しむ」食用として利用されるように変化していきました。

トマトといえばファーストトマトを懐かしく思い浮かべる方も多いのでは?
それまでトマトは品種の変遷が続き、1950年以前は店頭に出るまでに追熟させるという青もぎトマトが主流でした。それを変えたのがファーストトマトです。1950年代、酸味は少なく果肉が多くて崩れにくいと広がっていきました。
その後、甘みと酸味のバランスが取れた日本独自の品種である「桃太郎」が開発され、このコラムでもご存知の通り、1990年以降「桃太郎」が流通しているトマトの主流となっています。比較的歴史は新しいかも知れませんが、「人生いろいろ、トマトもいろいろ」曲り道くねくねで、ここまでたどり着いたのですね。そういえば、ゲノム解析でさまざまなことがわかってきたヒトの歴史も、単線じゃない紆余曲折を経ての現在。トマトもヒトの歴史、道のりと同じに見えてしまうのは、私だけでしょうか?

やはり、「桃太郎」はトマトのエース的存在で、味よし、栄養よし、調理よし!の「三冠王」ですね!見た目の赤い完熟さを入れると、「四冠王」ですね!笑

トマトは生でサラダ、ジュースはもちろん、加熱料理にもソースにも活用できる万能の食材です。
トマトは生でサラダ、ジュースはもちろん、加熱料理にもソースにも活用できる万能の食材です。

トマトは生でサラダ、ジュースはもちろん、加熱料理にもソースにも活用できる万能の食材です。

サイズで分けたら大玉、中玉、ミニトマトの三種類

それぞれ代表的な品種をあげると、大玉トマトの代表格はシリーズ最新品種(2019年現在)の「桃太郎ネクスト」(左)、果重220〜230g。中玉トマトは「フルティカ」(中)、果重40〜50g、糖度が高くフルーティーな味わい。ミニトマトの代表は果重15〜20gの「TY千果」(右)。「フルティカ」「TY千果」はリコピンを豊富に含み、「ファイトリッチ」シリーズにラインアップされています。

サイズで分けたら大玉、中玉、ミニトマトの三種類

「トマトも見た目が9割?」
おいしいトマトのチャームポイントをマスター!

知っていました?
トマトには「ピンク」と「赤」があるって

トマトはピンク系と赤系に分類されます。
ピンク系は皮が薄く実が柔らかいので生でそのまま食べるのに向いています。日本で主流の大玉トマトの多くもピンク系になります。え?赤系ではないの?と思った人も多いかもしれませんが、ピンク系が主流なのも、トマトリビアですね!

一方で、味が濃厚で加熱するとうまみが増すのが赤系のトマトです。欧米ではこちらが主流です。
理由は?欧米ではトマトを加熱して食べることが多いんですね。

生で食べるならピンク系、加熱や加工して利用することが目的なら赤系のトマト。
知っとく!納得ですね。
店頭や八百屋でチェックしてみましょう。

知っていました?トマトには「ピンク」と「赤」があるって
日本のトマトはピンク系といわれてもなかなかピンとこない方も多いでしょう。でも、写真のようにトマトを輪切りにして光に透かして見てください。ちゃんとピンク色の見えるのですよ。一度お試しあれ。トマトがもっと好きになるかもしれません。

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おいしい大玉トマトの見分け方!

へたは★星状にピーンと立っているもの
をセレクトしよう!

緑色のへたが色鮮やかでみずみずしく、ピーンと立っているものを選びましょう。トマトは実よりもへた部分のほうが水分の蒸発が早いため、へたからさきにしおれていきます。ですからへたは鮮度を見分けるのにピッタリなのです。元気のないもの、黒ずんだもの、黄色くなったものは鮮度が落ちている証拠です。へたは時間とともに丸まってきます。これもあまり知られていない、トマトリビアですね。

へたは★星状にピーンと立っているものをセレクトしよう!
ヘタが青くみずみずしく、つんと立っているものを選んでください。写真は「桃太郎ピース」、酸味もあり食味のよいトマトです。

あとは、白いラインがチェックポイント?

意外に知られていないのが、トマトはへたの反対側のてっぺんから白い線が放射状に伸びているもの、ちょうど星のような形になったものほどうまみ、甘みが凝縮しています。放射状に白いラインがまっすぐ伸びているのがオススメシグナルですよ。

スターラインとも呼ばれる放射状の星形の線がおいしさの目印。
スターラインとも呼ばれる放射状の星形の線がおいしさの目印。写真は出荷直前の「桃太郎ネクスト」(JAうつのみやにて)

色、鮮やかにして形美しく

形がよくて赤色が鮮やかで均一なこと、美しいものはおいしいのです。写真は「桃太郎8」、夏秋どりの完熟トマトです。

色、鮮やかにして形美しく

断面チェック!カットしたトマトを見分ける

ゼリーがつまったものがおいしい

人は鏡で顔面チェックしますが、トマトは断面チェックあるのみです。
トマトを切ったときに中身のゼリー状のものがしっかりとつまっているものほど、うまみ成分が多くておいしいです。断面のゼリーがつまったものをセレクトするとトクトクですね。

ゼリーがつまったものがおいしい
ゼリーがつまったものがおいしい

おいしいトマトは水に沈む?

手でもって固くてずしりとしたものを

元SMAPの木村拓哉さんにテレビ番組で「おいしいトマトは水に浮くか?沈むか?」というトマトクイズを出題しました。トマトは完熟しすぎるとやわらかくなって、甘みも薄れてしまいます。大玉トマトもほかのトマトも表面が固く、ずしりと重たいものをセレクトしましょう。もちろん、木村さんは2秒で「沈む!」と答え、正解!トマトが沈むスピードよりも速かった!さすがです。
(そういえば、木村拓哉さんのトレードカラーも赤ですね)

手でもって固くてずしりとしたものを

ようこそ、さらにディープなトマト完熟ワールド!

トマトは店頭での日もちを考慮して緑色が残った状態で収穫されます。気温18〜20℃以上の環境であれば収穫後も追熟して赤くなり、うまみも増しますが枝付きで完熟したものにはかないません。トマトは枝について完熟したものの方が栄養価は高いです。
最近はミニトマトなど枝付きで見かけることが増えてきました。見かけたときは迷わず買いです! 迷わず、です。

ミニトマトは枝付きで売られていることがあります。見かけたら迷わず枝付きを買いましょう。写真はファイトリッチシリーズの「千果」
ミニトマトは枝付きで売られていることがあります。見かけたら迷わず枝付きを買いましょう。写真はファイトリッチシリーズの「千果」

え?意外?トマト保存知識の初耳学とは?

トマトの保存方法でよくやる間違いは常温保存。まだ青いトマトは常温で追熟させますが、すでに熟したトマトは常温で置いておくと鮮度がどんどんと落ちていきます。また保存温度が低すぎても、実がぶよぶよしてきて味や食感が落ちます。トマトは冷蔵庫の野菜室がちょうどよい温度です。ポリ袋などに入れて重ならないようにして保存しましょう(季節や台所の温度にもよります)。
さて、ここで、唐沢トマトミニクイズ!です。「冷凍保存や加工して保存もOK?NG?」さて、どちらでしょうか?
トマトはそのまま冷凍保存もできます。使うときは解凍してトマトソース、ミートソース、煮物料理など加熱して使います。トマトケチャップやトマトソースなどに加工して冷蔵・冷凍保存することもできます。

トマトは緑黄色野菜のエース!
リコピンで「赤い色素で白い肌」!GET

このコラムの読者のみなさまには耳にタコができるかも知れませんが、トマトといえばリコピン。トマトの赤い色素の元となるリコピンといえば、抗酸化作用や、がんや動脈硬化の予防効果ですね。トマトにはほかにも抗酸化物質であるビタミンCやβ-カロテンも豊富に含まれます。リコピンは赤い色の元ですから、色が濃いものほど多く含まれています。拙著『トマトのちから』(日東書院)『夜トマトダイエット』(ぶんか社)※でも解説していますが、ここでまとめておきましょう。
(※タキイでは取り扱いがございません)

カリウムやルチン、ビタミンB6も

トマトには血圧を下げるカリウムやルチン、脂質の代謝を助けるビタミンB6などを含有します。

クエン酸も活躍!

トマトには胃液の分泌を促進する働きのあるクエン酸も豊富に含まれています。クエン酸は肉のうまみを高める作用もあるんです。だからトマトと肉と組み合わせはおいしさ抜群なのですね。

機能性成分を豊富に含むファイトリッチシリーズのトマト。「桃太郎ゴールド」はシスリコピンを、「フルティカ」「CF千果99」はリコピン、「オレンジ千果」はカロテンを従来品種より多く含んでいます。
機能性成分を豊富に含むファイトリッチシリーズのトマト。「桃太郎ゴールド」はシスリコピンを、「フルティカ」「CF千果99」はリコピン、「オレンジ千果」はカロテンを従来品種より多く含んでいます。

<もっとトマト知識>
1年に2度楽しめる?夏秋トマトと冬春トマトをマスター

日本でトマトは生産時期に応じて「夏秋トマト」(7〜11月出荷)と「冬春トマト」(12月〜6月出荷)と2つに区分されます。
さて、最後にまたクイズタイムです。「夏秋トマトと冬春トマト、出荷量が多いのはどちらでしょう?」

答えは「冬春トマト」です。なんと全体の約57%も占めているのです。トマトは夏、と刷り込みがされている世代にはかなりのトリビアですね(2018年産野菜生産出荷統計/農水省より)。
近年の全国的な収穫量を見ると、生産量がこれまで少なかった冬春トマトが増加し、生産量が多かった夏秋トマトが減少しています。供給の周年化が進んでいるのですね。
さらに冬春トマト、夏秋トマトのそれぞれ産地を見てみると、冬春トマトは熊本18%、愛知11%、千葉9%と上位3県で全国の作付面積の38%のシェアを占めます。夏秋トマトは、茨城9%、北海道8%、千葉6%と上位1道2県で23%のシェアを占めます。

それぞれの地域の生産時期はその地域の日照量が多く冷涼である時期にほぼ重なっています。南北に長い日本では、トマトにとってもトマト好きな私にとっても幸せなことに、旬が半年ごとに循環しています。一年で夏のオリンピック、冬のオリンピックが2度楽しめるようなもので、しかもそれが毎年の周期とはありがたい最高の野菜ですね。これからの季節、またトマトワールドを満喫できる時期でワクワクしてきませんか?

夏秋完熟トマトの「桃太郎」シリーズ。左から順に「桃太郎8」「桃太郎ワンダー」「 桃太郎セレクト」。
夏秋完熟トマトの「桃太郎」シリーズ。左から順に「桃太郎8」「桃太郎ワンダー」「 桃太郎セレクト」。
冬春トマトの「桃太郎」シリーズ。左から順に「桃太郎ネクスト」「 CFハウス桃太郎」「 CF桃太郎はるか」 。
冬春トマトの「桃太郎」シリーズ。左から順に「桃太郎ネクスト」「 CFハウス桃太郎」「 CF桃太郎はるか」 。

宮城県サンフレッシュ小泉農園「桃太郎ネクスト」

今回は、宮城県気仙沼市のサンフレッシュ小泉農園さんのトマトをご紹介します。
品種は「桃太郎ネクスト」を栽培されています。

東日本大震災時に壊滅的な被害にあわれた気仙沼市で、稲作をしていた畑をトマト栽培に転用し、栽培面積2haもの大規模栽培をされている農園です。

2012年、東日本大震災の翌年に「復興トマト」という企画ツアーがあり、私と「トマト赤デミー」のメンバーが東京駅からバスで宮城県内の名取、気仙沼に入り、トマト農家の方と一緒にトマトの苗を植え、その後収穫に行くという経験をしました。すくすくトマトが育ち、震災復興への明るい光にもなりました。

「桃太郎ネクスト」は低温・少日照下での生育安定性と耐暑性をもち、長期栽培で多収を狙える強勢さを目標に開発された品種。硬玉で肥大のよい冬春用トマトです。
「桃太郎ネクスト」は低温・少日照下での生育安定性と耐暑性をもち、長期栽培で多収を狙える強勢さを目標に開発された品種。硬玉で肥大のよい冬春用トマトです。

小泉農園は多連棟ハウス、オランダ式の長期どり栽培で、高度環境制御システムによる最先端のトマト作りに取り組まれています。
そこでとれたトマトは表皮がかたく、糖度が高く、酸味、甘みのバランスもよく、文字通り、「太陽の光いっぱいに浴びた完熟トマト」で美味でした。一度食べると、忘れられない濃厚な味で、リコピンもたっぷりですので、生食だけでなく、パスタやカレー、味噌汁、鍋など、さまざまな料理に使えます。
仙台市場では「まろやかで適度な酸味と甘みがありおいしい」と食味の点でも高い評価を得ています。

東日本大震災により多くの農家が被災し水田は見るも無残な状況になり、家と仕事を失った本吉町小泉地区。
そこで小泉農園は最新式のオランダ栽培技術方式を取り入れ、土をまったく使わない養液栽培に取組むことを心に決めたそうです。しかも2haの大規模トマト栽培です。良質なトマトを、それも年間を通じて一定数量収穫できる点も魅力だったようです。
被災地の風評被害に耐えうる良質なトマトを作るという目標、少しでも地元の雇用拡大の助けとなればという思いには、津波に負けない東北人の強さを感じます。
そして健康志向の高まりの中で、光輝くトマト一つひとつに希望を託そうという高い志に感動いたしました。

ハウスの目の前に広がる小泉海岸はかつて波乗りのメッカだったそうです。
8年という歳月とともに海は再び力を取り戻し、またサーファーの集う場所となりつつあります。
農園が作るトマトがサーフボードに乗り、全国にそして海を渡り世界にはばたけるように 「波乗りトマト とまたん」と命名したそうです。
復興の担い手として、気仙沼の名産品として「とまたん」の発信に社員全員が取り組んでおられます。
平成から令和へ、時代が変わっても、震災があっても、美しい海岸とおいしいトマトは不変で、今後も唯一無二な存在で、地元の農家や消費者に笑顔の花を咲かせることでしょう。

最新の高度環境制御システムを備えたハウスで養液栽培に取り組む小泉農園。収穫された「桃太郎ネクスト」は糖度が高く濃厚な味で、まさしく太陽の光をいっぱい浴びたトマト。出荷箱にはイメージキャラクター「とまたん」が描かれている。小泉地区のトマトが波に乗り海を渡り、「世界にはばたけ」と願いが込められた。
最新の高度環境制御システムを備えたハウスで養液栽培に取り組む小泉農園。収穫された「桃太郎ネクスト」は糖度が高く濃厚な味で、まさしく太陽の光をいっぱい浴びたトマト。出荷箱にはイメージキャラクター「とまたん」が描かれている。小泉地区のトマトが波に乗り海を渡り、「世界にはばたけ」と願いが込められた。