酸素供給期間が1日以内と短いですが速効性があり、散布直後から酸素を供給します。潅水時に液肥と同じ要領で10a当たり10ℓを1週間から10日に1回施用します。
厳寒期・猛暑期で根の活性が低下している場合や、酸素が欠乏していて根が弱っている場合は、肥料の吸収力も落ちているため「MOX」を施用してから液肥を使用することをおすすめします。
2020/01/29更新
近年の異常気象により梅雨の長雨、夏の猛暑、ゲリラ豪雨、台風など自然災害に見舞われることが多くなっています。これらの災害による湿害、根傷み。または、土壌不良条件における定植遅れ、活着不良などに効果があると注目を浴びているのが酸素供給剤です。
「酸素供給剤」とは、土壌に酸素を供給し、根の呼吸を助けることで根張りをよくし、健全な作物の生育を促すものです。
タキイはこれまで、1カ月に340ℓ/袋の酸素を供給する「ネハリエース」、3カ月供給する「ネオカルオキソ」の2種類の酸素供給剤を販売し好評を得ていました。しかし3カ月程度の持続力だと、例えばトマトの定植時期の4月に施した場合、暑さで根が傷みやすい8月、台風が襲来しやすい9月など酸素が必要な時期には供給が切れてしまうことになります。
そこで2017年8月にタキイオリジナル資材として登場したのが「オキソパワー5」です。これは、従来より2カ月持続力がパワーアップして、約5カ月にわたり400ℓ/1袋の酸素を供給する持続型酸素供給剤です。また新たに速効性の高い液剤の「MOX」(酸素発生量200ℓ/1本)も登場し、これらを使い分けることで、理想の根域環境をつくりだし、より栽培安定を図ることが可能となりました。この度は、タキイの酸素供給剤の特徴と産地での施用事例をとおして、その効果と活用法をご紹介します。
それぞれのタイプをご紹介!
水が滞留することで、溶存酸素量が低下し根が酸欠になることによって、根傷みや生育不良が起こります。
九州農業試験場 二井内氏より調査(昭和28年)
位田氏より、水温25℃で試験(昭和35年前後)
各生育ステージに畝の肩まで湛水し24時間、被害率を調査
酸素供給剤は土壌の排水性(物理性)を改善するのではなく、滞留した水の溶存酸素が減少するなかで、水と反応して酸素を供給することで根の酸素欠乏を防ぎ、湿害を起こしにくくするという効果があります。
④「ネオカルキソ」「MOX」を処理したポット苗は、①無処理の水没なしの苗よりも根が育っていることが分かります。
以下は、実際に酸素供給剤を施用した場合の効果を検証したものです。
水の溜まりやすい丘陵地の下での施用事例
「オキソパワー5」は土壌中の水分と反応しますが、乾燥条件でも緩やかに分解が進みます。高温条件では植物の根の酸素の要求量が高まるので、乾燥・干ばつ条件でも一定の効果を望むことができます。
湿害は地上部では根傷みによる葉先の枯れ、地下部では根腐れによる根の先端の褐変などがあります。酸素不足で根が肥料を吸収できないことが、葉の黄化などの生育不良が起こる原因ともなります。
(土中酸素濃度20%時を100%に換算)
(引用、位田氏、1956年より)
このように、酸素供給剤によって土壌の酸素濃度を高めることで、特にネギなどでは以下のような効果が期待できます。
圃場:茨城県下妻市 処理場所:土質は粘土質が強く雨水がたまりやすい場所 結果:定植8月中旬から1カ月で降水量250mm
果菜類であるトマトなどでも生育促進、なり疲れの防止などの効果が期待できます。
酸素供給期間が1日以内と短いですが速効性があり、散布直後から酸素を供給します。潅水時に液肥と同じ要領で10a当たり10ℓを1週間から10日に1回施用します。
厳寒期・猛暑期で根の活性が低下している場合や、酸素が欠乏していて根が弱っている場合は、肥料の吸収力も落ちているため「MOX」を施用してから液肥を使用することをおすすめします。
酸素供給期間は約3カ月、本剤を元肥として全面散布し混和することで、根の呼吸を助け、根の張りを改善します(10a当たり40〜60kg)。
約5カ月と酸素供給期間が長く、元肥として土壌混和(10a当たり40〜60kg)して使用します。施設・露地栽培を問わず、植え付けから収穫までの栽培期間が長いイチゴやアスパラガスなどの品目にもおすすめです。
「ネオカルオキソ」「オキソパワー5」、どちらの酸素供給剤も葉菜、根菜、果菜類同様に使用できます。
「オキソパワー5」の姉妹商品で追肥型、速効性の酸素供給剤。約1カ月間で320ℓの酸素を供給。表面散布での使用も可能のあので、緊急時の対処でも活躍します。
「ネオカルオキソ」または「オキソダッシュ1」は培養土1m2当たり2〜3kg混和します(花卉類も同様)。「MOX」は100倍以上に希釈して葉面散布、または潅水します。チッソ成分は含まれていないため徒長は促しません。
湿害軽減とともに、土壌微生物の活性化、有機肥料の分解促進などによる生育促進が期待できる「酸素供給剤」。しかし、土壌の排水性自体が向上するわけではありません。
基本となるのは土づくりや排水対策です。これらをしっかりと行い、健全な土壌づくりを心掛けてください。
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