2020/07/20更新
ホウレンソウ栽培は収穫・調製作業に大きな時間を取られます。農林水産省の調べでもホウレンソウ生産者が収穫・調製や包装・結束に費やす時間は、栽培作業全体のなんと6〜7割も占めています(第1図)。
出荷調製作業に時間がかかるホウレンソウでは、時間当たりにどれだけの束数ができるかが、出荷量を決める重要な要因となっており、品種には収量性はもちろんのこと、収穫作業性についても高いレベルが求められています。従来は収量性が高い品種は作業性が劣り、作業性が高い品種は収量性が劣る傾向がありましたが、タキイでは、収量性と作業性を高いレベルで両立した品種を目標に育成を進めてきました。
葉柄は太く、葉身のボリュームがあり、収量性がすぐれています。生育は旺盛なため適切な播種期で栽培すれば収量が期待できます。
作業性がよい品種は葉柄が細く、太い品種は折れやすい傾向がありましたが、葉柄を肉厚にすることで葉柄を折れにくくし、多収+作業性を実現しました。
「伸兵衛」「福兵衛」「タフスカイ」は根張りがすぐれており、過湿にも比較的強いため、露地栽培に適しています。
「伸兵衛」「福兵衛」「タフスカイ」「吉兵衛」はべと病レース1〜12、14〜15に抵抗性をもち、また、「タフスカイ」は高温期に発生しやすい萎凋病に強い耐病性をもっています。
ホウレンソウ生産者の大きな課題であった収量と作業性を同時にかなえ、また病気に強い「タフスカイ」「福兵衛」「伸兵衛」、まさしく生産者の声から生まれたシリーズといえるでしょう。
ここからは、それぞれの特長を各品種と比較しながら見ていきます。各品種の特長をつかんで使い分ければ、品種の切り替えもうまくできるはずです。
JAひだ高山管内/7月20日播種/8月19日撮影
静岡県浜松市/8月25日播種/9月29日収穫
中間地の8月中下旬まきでは株間を広め(7〜8p)に設定して、株張りを充実させます。
9月下旬以降のまきでは生育が停滞する可能性がありますので避けてください。
5〜7月の播種では抽苔する可能性があるので注意してください。生育中期までは潅水で生育をすすめ、後半は潅水を控え株張りを確保してください。
春の上昇気温下では生育が早くなる傾向があり、良品出荷のためにも播種適期に沿った栽培をおすすめします。また、低温下の生育は緩慢になるため、厳寒期どりの栽培は避けてください。
べと病はレース分化の起こりやすい病害です。総合的な防除を併用し、登録農薬による予防的な防除を心掛けてください。
福岡県久留米市/露地栽培/10月10日播種/11月26日収穫
茨城県/3月1日播種/4月19日調査
一般地の秋どりでは10月以降の播種がおすすめです。
9月まきでは葉色が淡くなり、株張りが不足するため避けてください。
秋どり種としては比較的抽苔が安定していますが、3月まきでは抽苔する可能性があるので避けてください。
茨城県/露地栽培/12月中旬どり
9月の播種では葉柄が細くなる傾向があり、10月中旬以降の播種がおすすめです。
草姿立性で伸長性にすぐれるため、やや広めの株間で株張りを充実させます。
「タフスカイ」「福兵衛」「伸兵衛」は「多収+高作業性」にすぐれる早生種で、秋から春まで幅広く栽培が可能です。
最後に3品種選択のポイントを簡単にまとめておきます。
幅広い適応性があり、さまざまな栽培環境で高い収量性を発揮!全国の主要産地でタキイホウレンソウを導入いただいております。
年内どり・春どりは「福兵衛」の高作業性・収量性、
冬どりは「伸兵衛」の伸長性が好評です。
生育が早く、株張りのよい「伸兵衛」が大好評!
秋冬ハウス栽培では「吉兵衛」で高収量!
マルチ・トンネルの密植栽培でも株張り、株ぞろいがすぐれます!
冷涼地の露地栽培でも耐湿性が強くそろい性にすぐれます!
2024年
秋種特集号 vol.58
2024年
春種特集号 vol.57