有機栽培のすすめ−臣先生の実践講座−有機栽培のすすめ−臣先生の実践講座−

講師 臣 康雄さん

講師 臣 康雄さん

タキイ研究農場で野菜育種に従事し、退職後は大学客員教授や企業コンサルタントとして活動。有機栽培の普及にも積極的に取り組んでいる。

取材:農園芸ライター

久野 美由紀

久野 美由紀

「タキイ最前線」本誌で連載中の「有機栽培のすすめ」。本誌では、有機栽培を実践する市民農園におじゃまし、体験をレポートしています。ネット版では実践の具体的な方法を、講師の臣さんより伝授。第3回は、前回に引き続き土づくりを取り上げ、堆肥や肥料の使い方を詳しく解説します。

第3回健全な作物を育てるための土づくり2

堆肥の施し方

久野

第2回では、堆肥の手に入れ方や残さ堆肥の作り方を教えていただきました。では、実際にそれらをどう施せばよいでしょうか?

臣

畑へ混ぜ込むのが一般的だが、それを含めて、ほかのやり方も解説してみよう。

土壌改良的に堆肥を施す場合、絶対的な数値ではありませんが、10a当たり4t程度が基準だといわれています。本誌連載中の市民農園では、畝一つを1.5×8mでつくっており、堆肥の必要量は一輪車3〜4杯程度になります。それを作付け前に畝の全面へ散布し、耕して混ぜ込むのです。
ただし、堆肥の種類によって施し方は多少異なります。それについては次項で詳しく説明します。
また、通常の栽培では酸度調整のため石灰も一緒に施すことがありますが、有機栽培で鶏ふんなどを施していれば、特に必要ありません。苦土石灰や消石灰は入れすぎると土壌がカチカチになり、過度にアルカリ性へ傾くとホウ素など微量要素の吸収が抑えられてしまいます。もし施す場合は、かき殻などを原料とした有機石灰を用いましょう。


また、少し変則的な施し方として、畝の間の通路(畝間)を利用する方法もあります。
まず、山林などで落ち葉(広葉落葉樹)を集めてきて畝間へ敷きつめ、米ぬかまたは鶏ふんを適当に振っておきます。すると、人が通る度に踏みつけられ、それが土と混ざりあったりすることで分解が促進されます。畝の野菜を収穫し終われば、次は落ち葉を敷き詰めた部分を芯にして、畝を立てるのです。
手軽に土壌改良ができるうえ、畝間のぬかるみも避けられます。臣流の方法です。

山林で集めてきた落ち葉を畝間へ敷き詰める。

手軽な土壌改良法
久野
これなら簡単だし、堆肥を積んでおく場所がなくてもできますね!

堆肥や肥料の材料別特性

久野
これで土づくりはバッチリですね。
でも、ほかに肥料分も必要ですよね? 市民農園では鶏ふんを使っていますし……。
臣

これまで話してきた堆肥は、どちらかといえば土壌改良的な役割をするもので、もちろん野菜を育てるには栄養的に足りない。だから、何をどう加えていくか、だね。

自然の動植物が原料なので、材料によって性質はさまざまです。土壌改良目的で使うものもあれば、肥料目的で使うものもあります。
土壌改良的な効果があるのは、炭素成分が多い繊維質のもので、稲わらやもみ殻がそれにあたります。一方、チッソ成分の割合が高いものは、有機質としては比較的速効性で、肥料として使えます。2カ所の市民農園で利用している鶏ふんは、速効性があって誰でも手に入れやすい安価な資材です。

堆肥のつくり方

いろいろな有機物のC/N比表はC/N比といって、有機物中の炭素(C)とチッソ(N)の比率を表したものです。この数値が大きいほど炭素成分(繊維質)が多く、土壌改良的な性質が強いことになります。微生物がよく活動して最も分解されやすいのは、C/N比が20〜25ぐらいのもので、数値が大きくなるほど炭素(繊維質)の割合が高くなり、分解されにくくなっています。そういうものは、土へ混ぜ込むだけでは効果が現れるのに時間がかかります。
また、C/N比の高いバークやおがくずをそのまま施すと、分解に足りないチッソ分を土壌中から収奪することになるため、作物にチッソ飢餓が起こります。さらには、バークなどに含まれる揮発成分が、野菜に障害を与える恐れもあります。

そこで、C/N比の高いものを堆肥化するには、チッソ分の多い(数値の小さい)ものを一緒に入れるようにします。例えば、C/N比が60〜80の稲わらには、5〜10の鶏ふんや油かすを加える…といった具合です。比率が300のおがくずなどは大部分が炭素のため、チッソ分が多いものを大量に入れる必要があります。
こうして、C/N比が20〜25くらいになるよう調整して堆積し、数回切り返すことによって発酵を促進させ、中熟以上になったものを施します。

肥料的に使えるものでも、材料によって成分は大きく異なります。植物を育てるのに必要な三要素である、チッソ(N)、リン酸(P)、カリ(K)の含有量もバラバラです。
大半は肥効が緩やかなため、基本的に元肥として用いることが多いのですが、比較的速効性があって追肥として使えるものもあります。
各堆肥の特徴や施し方、組み合わせ方を、ざっと説明してみましょう。

発酵鶏ふん

鶏のふんを発酵させたもので、安価で入手しやすいため、2カ所の市民農園でも肥料として使用しています。チッソ、リン酸、カリを含んで効果が高く、特にリン酸が豊富で花や実の生長を助けます。
有機資材としてはかなり速効性があるので、元肥だけでなく追肥にも使えます。元肥には作付けの1週間ほど前に土へ混ぜ込み、追肥には株間などに穴を掘って埋めておきます。

なお、「発酵」と書かれてあっても、業者によってはただ乾燥させただけの鶏ふんもあります。そのようなものを施すと、土中で分解する際に熱やガスを発生させ、根を傷めるもとになるので気をつけましょう。もしアンモニア臭がしたら、まだ分解の途中だということ。その場合は、元肥として作付けの1カ月前には施すようにし、追肥には十分発酵したもののみ用いましょう。
鶏ふんは石灰分を豊富に含むため、使っていれば土壌の酸度はおおむね適切に保たれます。ただし、鶏ふん主体で連作すると、石灰分の影響で土がかたくなりやすいので、2年に一度は牛ふんなども入れてやるとよいでしょう。

魚粉

魚を加熱して水分と脂を除き、乾燥させて粉末にしたもので、価格は高めですが、近くに魚の加工場などがあって安価で入手できる場合はおすすめです。チッソとリン酸を多く含むほか、微量要素も豊富で作物をおいしくする効果があります。
比較的速効性があるため、元肥と追肥の両方に適します。元肥には作付けの2週間ほど前に土へ混ぜ込み、追肥には株間などに穴を掘って埋めておきます。このとき、虫などが寄ってこないよう必ず土を被せましょう。なお、カリはほとんど含まないので、草木灰などと併用します。

骨粉

豚や鶏などの骨を高温で加圧蒸製し、乾燥させて細かく砕いたもので、特にリン酸の含量が高く、チッソやカルシウムも多く含みます。
骨粉に含まれるリン酸は「く溶性」といって、根や微生物が分泌する有機酸に少しずつ溶けていき、徐々に吸収されます。緩やかな肥効が長く持続するため、元肥として用いましょう。作付けの1カ月前には散布しますが、このとき堆肥も一緒に入れると、微生物の働きでリン酸がよく溶け出し、効果が早められます。また、ぼかし肥の材料としても使えます。

バットグアノ

コウモリのふんが堆積して化石化したもので、リン酸を多く含みます。また、カルシウムや微量要素も豊富で、果実をおいしく(甘く)する効果があります。
肥効が緩やかで長く続くため、元肥に向きます。できれば作付けの1カ月前には、堆肥とともに施しておきましょう。なお、チッソとカリはほとんど含まれないので、油かす(チッソ)や草木灰(カリ)など、ほかの材料も必要です。

油かす

ナタネやダイズから油を搾りとったもので、チッソが多く含まれます。肥効が緩やかで元肥に向き、土中の微生物を活性化させるので土づくりの効果もあります。また、水に溶かして発酵させ、液体肥料として使ってもよいし、ぼかし肥の材料にもなります。
土中で分解する際に有機酸やガスを発生させ、根を枯らすことがあるため、最低でも作付けの2週間前には施しましょう。なお、表面にまくと虫の発生原因になるので、土へよく混ぜ込むようにします。不足するリン酸やカリは、骨粉やバットグアノ(リン酸)、草木灰(カリ)などで補います。

米ぬか

玄米を精米した際の副産物で、リン酸が多く、チッソとカリもある程度含みます。マグネシウムやその他の微量要素も含み、また糖分やたんぱく質が土中の微生物を活性化させて土づくりを助けます。
分解に比較的時間がかかるため、元肥として用います。作付けの2週間以上前に施しましょう。
なお、一般に肥料として販売されている米ぬかは、脱脂米ぬかといって、精米したときに出る生の米ぬかから油を搾って除いたものです。生の米ぬかは、そのまま土へ入れると害虫などが集まってきたり、急速に分解が進んで熱やガスを発生させたりするので、土へ直接施すのではなく、ぼかし肥の材料として使うとよいでしよう。


素材ごとの成分表を参考に、茎や葉など樹を育てたいときはチッソの多いもの、花や実をつけたいときはチッソは少なめでリン酸が多いものを選んでみましょう。
厳密に「この野菜にはこの肥料」のような規則はありません。ただ、同じものばかり入れていると成分に偏りが出るし、微量要素も不足してくるので、家庭菜園ではいろんなものをミックスして、バランスをとっていくようにしましょう。
基本は、植え付け前に1〜2割ほど土に混ぜ込みますが、定期的(3〜4カ月ごと)に入れてもかまいません。

久野
一口に堆肥や有機肥料といっても、材料でこんなに効果が違うのですね。
臣

与えすぎないように注意して、少しずつ増やしていくことだね。自分なりのやり方を見つけていこう。

ぼかし肥のつくり方

久野
いろんな材料を入れた方が、土にはよいのですね。
臣

自分で材料を混ぜ合わせて、ぼかし肥をつくっておくのもいいね。元肥、追肥と便利に使える。

ぼかし肥とは、有機物を使ったある程度の速効性をもつ肥料で、いくつかの材料を混ぜ合わせ、発酵させたものです。よく使われるのは米ぬかや油かすなどですが、チッソ分を含むものなら何でもよく、自分の好みや都合で材料を選び製作することが可能です。
ぼかし肥は元肥はもちろん、追肥として使っても安心。いくらかまとめてつくっておけば、必要なときに利用できて便利です。

材料の選び方

よく使われるものは米ぬかや油かすですが、ほかに魚粉、鶏ふん、牛ふん、草木灰、有機石灰など何でもよく、野菜や果実の皮、コーヒーかす、茶殻といった生ゴミも入れることかができます。大きな野菜くずなどは多少砕いておく必要がありますが、とにかく身近にあるものでかまいません。
例えば、
  米ぬか + 油かす
この二つはどちらも三要素を含みますが、米ぬかはリン酸が、油かすはチッソが豊富で、組み合わせることでバランスのよい肥料となります。チッソの割合を増やしたければ油かす、リン酸を増やしたければ米ぬかを増やせばよいのです。
ほかに鶏ふんや魚粉もチッソとリン酸が豊富だし、草木灰ならカリやカルシウム、かき殻などの有機石灰ならカルシウムや微量要素が補えます。手に入るものの中から、目的に応じて決めていきましょう。

つくり方

材料を適当な容器に入れ、水をジョウロでかけながら、よく混ぜていきます。水は材料の1割程度を用意しますが、材料によって水分含有量が異なるため、状態を見ながら少しずつ加えるようにしましょう。目安は、握ると固まり、指で突くと砕ける程度です。握ったときに水分がしたたるようだと湿りすぎで、発酵中に腐敗する原因ともなります。
続いて発酵させるための種菌を加えます。私は納豆を利用しましたが、自然の中で手に入る土着菌を入れてもよいでしょう。これは山林の落ち葉に付着していたり、畑の土に含まれていたり、さまざまな場所に転がっています。納豆の場合はすり鉢で砕いて少量のぬるま湯に溶かし、材料によく混ぜ込みます。

水をかけながらよく混ぜる。

でき上がったら紙袋に詰め、さらにビニール袋へ入れて密封します。このとき、できるだけ空気が入らないようにしてください。屋内のじゃまにならない所へ置き、そのままの状態で1〜2カ月待って発酵させます。
気温が高いほど速く発酵が進みます。袋を開けて、甘酸っぱい香りがしていれば完成。白いかびがあっても問題なく、混ぜてしまっていいのですが、もし青かびや赤かびが生えていたら取り除いてください。
乾燥させれば発酵が止まるので、浅めの容器やビニールシートなどの上へ、塊は砕いて広げておきましょう。数日経って乾燥したら、土嚢袋などに詰めて保存しておきます。必要に応じて使えるので便利ですが、大量につくって長く保存しても肥料としての効果がなくなってしまうので、数カ月〜半年以内には使い切ってください。
なお、これは「嫌気性発酵」のつくり方ですが、「好気性発酵」といって、密封せずに途中で数回切り返しながらつくる方法もあります。手間はかかりますが、10日〜1カ月で完成します。

元肥には作付け前に畝の浅い部分に混ぜ込み、追肥には株元へパラパラと薄くまくようにします。効果が高いので、少しずつ与えるようにしてください。

ビニール袋へ入れ、密封する。

堆肥とぼかし肥の判定

久野
甘酸っぱいにおいがすれば、ちゃんとしたぼかし肥ができたということですね。
臣

においは分かりやすい判定材料だね。堆肥やぼかし肥をつくってみて、果たしてうまくできたかは気になるところだ。少し例をあげてみよう。

堆肥(またはぼかし肥)を手にとってにおいをかいでみましょう。甘酸っぱいにおいがすればよいのですが、どぶのようなにおいがしたら完全な失敗で、畑にまくと害を与えてしまいます。

また、アンモニア臭がしたら未熟堆肥で、まだ発酵途中のため、このまま施すと畑で発酵が進んで野菜の根などに悪影響があります。バーク堆肥の場合は樹のにおいがすることがあり、これも未熟堆肥です。
また、前回も紹介しましたが、ミミズを入れてみれば簡単です。腐敗したものや未熟なものだと逃げ出してしまうので、よく観察してみましょう。

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