有機栽培のすすめ−臣先生の実践講座−有機栽培のすすめ−臣先生の実践講座−

講師 臣 康雄さん

講師 臣 康雄さん

タキイ研究農場で野菜育種に従事し、退職後は大学客員教授や企業コンサルタントとして活動。有機栽培の普及にも積極的に取り組んでいる。

取材:農園芸ライター

久野 美由紀

久野 美由紀

2020/07/20掲載

「タキイ最前線」本誌で連載中の「有機栽培のすすめ」。本誌では、有機栽培を実践する市民農園におじゃまし、体験をレポートしています。ネット版では実践の具体的な方法を、講師の臣さんより伝授。第5回では、有機栽培でどうやって病害虫を防げばよいのか、具体的な方法をお伝えします。

第5回 有機栽培のための病害虫防除

連作を避けるには

久野

どんなに土づくりをして、しっかりした作物を育てても、それだけで病害虫は防げないのですね。

臣先生

そうだね。病害虫の大発生の要因の一つに連作があるんだが、狭い家庭菜園ではなかなか難しい。特にナス科の作物などは種類も多いしね。

久野

ナス、ピーマン、トマトがナス科とは知られていますが、ジャガイモも同じ科というのは、初心者には意外かもしれませんね。

臣先生

花を見れば分かるんだけどね。ナス科だけでなく、ウリ科、アブラナ科など、どんな野菜があるか知っておいた方がいいだろうね。

連作とは同じ種類(科)の作物を続けて作ることで、その障害にはいろんな要素があります。まず、その種類をエサにしている菌や虫ばかり増えていきます。また、作物の種類によって、根から吸い上げる養分に好き嫌いがあるため、同じものばかり吸収されて土の成分に偏りが出ます。さらに、作物は根から余分なものも吐き出すので、それが蓄積されたりして悪影響を及ぼすのです。
有機物を施して土づくりすることで、これらはある程度緩和されます。また、耐病性のある台木に接ぎ木した苗を用いる方法もあります。とはいえ、前年とは違うものを植える(輪作する)よう、普段から心掛けておいた方がよいでしょう。

表は、家庭菜園で作る主な野菜を、種類(科)ごとに分類したものです。これをよく見て、同じ科のものは続けて同じ場所に作らないようにするわけです。品目によっては、できれば間隔を3年以上あけた方がよいものもあり、連作を避けるには、いつ何をどこへ作ったか覚えておく必要があります。
もちろん、きちんとノートにでも記録しておいて、以前の栽培内容を確認しながら計画を立てられれば、それに越したことはありません。ただ、そのうち書いておこうと思いながらつい先延ばしにし、2年前、3年前にはどこで何を作っていたか、忘れてしまう人も多いことでしょう。
そこでおすすめしたいのが、畝ごとに科を決めておいて、年によって順に送っていくやり方です。夏野菜の場合、今年この畝でナス科の野菜を作ったとしたら、来年は隣の畝へ移動させ、その畝にはウリ科野菜を作る…という具合です。この方法なら、去年の場所さえ覚えておけばよく、輪作も容易になります。

野菜の科と品目

主な品目
アブラナ科 ハクサイ、キャベツ、ブロッコリー、コマツナ、ミズナ、ダイコン、カブ
ウリ科 キュウリ、カボチャ、スイカ、マクワ、ニガウリ
ナス科 ナス、トマト、ピーマン類、ジャガイモ
イネ科 スイートコーン
マメ科 エンドウ、ソラマメ、エダマメ、インゲン
ヒユ科 ホウレンソウ、フダンソウ
ヒガンバナ科 ネギ、タマネギ、ニラ、ニンニク
キジカクシ科 アスパラガス
セリ科 ニンジン、セルリー、パセリ、ミツバ
キク科 レタス、シュンギク、ゴボウ
アオイ科 オクラ
バラ科 イチゴ
サトイモ科 サトイモ
ヒルガオ科 サツマイモ

休栽期間の目安

品目 休栽期間
ハクサイ、キャベツ、キュウリ、インゲン、レタス、イチゴ 1〜2年
ナス、トマト、ピーマン類、ジャガイモ、エダマメ、ソラマメ、サトイモ、オクラ 3〜4年
スイカ、エンドウ、ゴボウ 5〜6年
カボチャ、スイートコーン、ネギ、タマネギ、ニンジン、サツマイモ
(コマツナ、ダイコン、カブ、ホウレンソウ)
連作可能
※カッコ内は春夏作での連作は不可

簡単な輪作方法

コンパニオンプランツの効用

臣先生

ある作物の隣に、別の作物を植えることで、よい効果が得られることもあるんだ。コンパニオンプランツという言葉を、聞いたことはないだろうか?

植物には、一緒に植えておくだけでよい効果が期待できるものがあります。
例えばマリーゴールドのセンチュウ防除効果は、よく知られています。センチュウは土中にいて、作物の生育に大きな被害を及ぼします。これは輪作してもそれほど減らないうえ、体長は1mmにも満たず手でとるのは困難です。しかし、マリーゴールドは根からセンチュウを駆除する物質を出すため、植えるだけで効果が期待できます。エンバクやソルゴー、ギニアグラスといったイネ科の植物も同様です。
また、スイートコーンは根が土中深くへ入り、畑を耕してくれるほか、強い吸肥力で余分な肥料を吸って生理障害を防止してくれます。サツマイモなど、肥料が多いとつるぼけを起こすような作物の隣に植えるか、あるいは前作で栽培してもよいでしょう。最後は刻んで土へ混ぜ込んでしまえば、土壌改良にもなります。

スイートコーンは土壌改良など、さまざまな効果を発揮する。

一般に植物には相性があり、種類によってよい作用をもたらすコンパニオンプランツも異なります。アブラナ科の野菜にはアオムシがつきやすいのですが、成虫であるチョウはキク科の作物を嫌います。そこで、アブラナ科のキャベツやハクサイの間に、キク科のレタスを植えておくと、アオムシの食害が防げることになります。
ほかにバンカープランツといって、作物の天敵を呼び寄せる植物もあります。アブラムシの天敵にテントウムシがありますが、クローバーを植えておくとそのテントウムシが集まってきて、アブラムシを食べてくれるのです。

久野

一緒に植えておくだけで、病害虫を予防することができるんですね!

コンパニオンプランツの一例

科・品目 コンパニオンプランツ 期待される効果
アブラナ科 全般 レタスなどキク科野菜 害虫(アオムシなど)の忌避
ハクサイ エンバク ウイルスの抑制
キャベツ(夏) ハコベ 生育促進
キャベツ(春) ソラマメ 害虫(アブラムシ)の忌避
ブロッコリー サルビア 害虫の忌避
コマツナ アカザ・シロザ 冬季の雑草抑制
ミズナ ニラ 害虫の忌避
ダイコン ニンジン 害虫の忌避
ハコベ 生育促進
カブ チャービル 生育促進
ニンジン・バジル 害虫の忌避
ウリ科 全般 長ネギ 土壌病害の抑制
キュウリ チャービル 害虫の忌避
ニガウリ ニラ 生育促進、土壌病害の抑制
ナス科 ナス ニラ 土壌病害の抑制
パセリ 生育促進
トマト ニラ 土壌病害の抑制
バジル 害虫の忌避
ピーマン類 ニラ 土壌病害の抑制
ラッカセイ 生育促進
ジャガイモ バジル 害虫の忌避
イネ科 スイートコーン ラッカセイ 害虫(アワノメイガ)の忌避
マメ科 エンドウ チャイブ 土壌病害の抑制
ソラマメ タマネギ 生育促進
エダマメ パセリ・ミツバ 害虫の忌避
インゲン ルッコラ 生育促進、病害虫予防
ヒユ科 ホウレンソウ 葉ネギ 硝酸濃度低下による品質向上
ヒガンバナ科 長ネギ ブッシュミント 品質向上
タマネギ クリムソンクローバー 害虫(アザミウマ)の忌避
カモミール 生育促進
ニラ アカザ・シロザ 生育促進
セリ科 ニンジン 小カブ・ラディッシュ 害虫の忌避
パセリ ナス 遮光による品質向上
キク科 全般 アブラナ科野菜 害虫の忌避
ゴボウ ホウレンソウ 生育促進
アオイ科 オクラ パセリ 生育促進
サトイモ科 サトイモ ダイコン 生育促進
ヒルガオ科 サツマイモ エダマメ 生育促進

害虫の防ぎ方

久野
無農薬栽培をしている方は、たいてい害虫には困ってらっしゃいますよね。ほかにも方法はありますか?
臣先生

薬剤を使わなくても、ある程度は防除できるものだよ。

害虫を防ぐというと、まず防虫ネットを思い浮かべる人が多いかもしれません。害虫の侵入を物理的に阻むもので、発生する虫の大きさによってネットを選びます。細かい目合いのネットであれば、小さなな害虫も防げますが、あまり細かいと風通しが悪くなる弊害も出てきます。目的に応じたものを使うようにしましょう。
また、シルバーマルチも効果的で、アブラムシ類やアザミウマ類を寄せつけにくくなります。ただし、作物が生長してマルチの表面を覆うようになると、効果が薄れてくるのが難点です。

ただ、資材はもちろん利用すればよいのですが、まずは作物をいつも観察することです。
害虫そのものを見つけてとるのはもちろん、フンや食害の跡を発見すれば、どこかに潜んでいると見当がつけられます。そして、探しているうちに、だんだん「こういう所にいる」と分かってくるのです。
やはり虫はやわらかい部分を好むものが多く、成長点の先の方に集まりやすくなります。例えば、ソラマメの先端にはよくアブラムシがつくものです。発見できれば、天敵のテントウムシを集めてきて放すとか、しごいてとるとか、場合によっては先端部だけ切り取ってしまうなどの対策をとることができます。ソラマメは下の方に莢がつくので、ある程度生長したら、それより上の部分はなくてもよいのです。

秋冬野菜の場合は、気温が下がると虫が出なくなるので、タネまきの時期を少し遅らせるという方法もあります。ただし、近年は暖冬傾向が続き、いつまでも虫が生き残っていることもあれば、年によっては予想外に早く冬がやってきたりします。
広い面積があれば、タネを数回に分けてまくこともできますが、家庭菜園では難しいでしょう。極端に播種をずらすのは、避けた方が無難です。
遅くまく場合は、保温資材を活用するのも一つの手です。ベタがけは不織布などを直接作物の上にかけておく方法で、手軽に保温が可能で霜よけにもなります。ビニールトンネルはアーチ型のトンネル支柱を挿していき、その上をビニールで覆う方法です。手間はかかりますが保温効果が高く、ビニールを隙間なくかけておけば防虫効果も期待できます。

アオムシはアブラナ科野菜全般の大敵。色が似ているので、よく観察して見逃さないようにする。

下に、よく見かける害虫をいくつかあげておきますが、タキイのホームページにはさらに詳しい病害虫情報が掲載されています。品目ごとの病気、害虫、生理障害が、豊富な写真やイラストとともに解説してあるので、ぜひ参考にしてください(→病害虫・生理障害情報)。

害虫の主な発生時期と特性

害虫名 主な発生時期 特性など
アオムシ、コナガ 春〜秋 アブラナ科全般の葉を食害し、ひどいときは食い尽くされる。
ヨトウムシ 春と秋 夜に活動するためこの名がある。キャベツやハクサイの玉の内部へ侵入し、食害する。
テンントウムシダマシ 春〜秋 ナス科植物の葉を食害。葉裏に卵を産みつける。
キスジノミハムシ 春〜秋 アブラナ科野菜に被害を与え、成虫は葉を、幼虫は根を食害する。体長約3mmと小さいため、ネットをかけて成虫を防ぐ。
ネキリムシ 春と秋 土中に潜み、根を食害する。土を浅く掘って確認する。
コガネムシ(幼虫) サツマイモやイチゴの根を食害する。作物の元気がないときなどは、土中を確認する。
アブラムシ 若葉や成長点などやわらかい部分につく。ウイルス病の原因ともなる。
ハダニ 春〜秋 葉裏に潜み、汁を吸う。体長約5mmと小さく、水をスプレーして吹き飛ばすか、牛乳のスプレーで窒息させる。
アザミウマ 春〜夏 花の被害が多いため、咲き終わったら摘みとるようにする。
久野
いろんな方法を使えば、かなり効果はありそうですね。
臣先生

完全ではないがね。もちろん、野菜を出荷している場合は「失敗した」では済まされないけれど、家庭菜園はある意味気楽なもの。少しぐらい虫に食われてもいい、という割り切りも必要だな。