鈴木農場・伊東種苗店 店主
鈴木 光一(すずき こういち)
私は、福島県郡山市で現在まで30年間、野菜の直売所を経営してきました。また、縁あって平成8年より種苗店も兼営することになり直売所とタネ屋の両面から農業を考えるようになりました。日本農業が進む方向性のひとつは、本当にお客さまが欲しいと思える「価値のある商品づくり」をしていくことだと感じています。そのためにも、野菜の品種選びをしっかり行いましょう。
鈴木農場・伊東種苗店 店主
鈴木 光一(すずき こういち)
私は、福島県郡山市で現在まで30年間、野菜の直売所を経営してきました。また、縁あって平成8年より種苗店も兼営することになり直売所とタネ屋の両面から農業を考えるようになりました。日本農業が進む方向性のひとつは、本当にお客さまが欲しいと思える「価値のある商品づくり」をしていくことだと感じています。そのためにも、野菜の品種選びをしっかり行いましょう。
2017/07/20掲載
直売所は生産者が自分の名前で直接消費者に商品を販売する場所です。いかに自分の商品がほかのものと違うかをアピールしていくことが大事です。自分の商品の「売り」は何なのか、その価値をつくり出し、しっかり表現し伝えていくことが大事になります。自分の商品の価値とは品種やその特性、栽培方法、栄養価、糖度などについて、ほかとの違いを考えていけばよいのです。作ってきた物の中身それが価値になりますし、それがない場合は価値をつくればよいのです。
「郡山」をブランド化したように、自身の商品の価値を見出しそれを的確にアピールすることが「商品価値」を生み出すことにつながる。
中でも「おいしさ」はとても重要です。「おいしさ」が伝わればリピーターになってくれます。
では野菜の「おいしさ」とは何でしょうか。今、言われていることは、ひとつは、「甘さ」です。これは「糖度」が高いということや、「さわやかな甘み」「酸味などとのほかの味のバランス」がよいこと、「味の濃さ」などです。また、「やわらかさ」「食感のよさ」も大事です。皮がやわらかい、もちもちしたよい食感、歯ざわりのよさなども「おいしさ」につながっています。
「らしさ」も重要です。トマトらしい、キュウリらしいと言ったその品目らしさが重要です。また、見た目のみずみずしさや昔懐かしい風味なども「おいしさ」の重要な要素といえます。
収穫前の「ケルたま」。倒伏7日後ぐらいが収穫の目安。
播種は9月上中旬。近年温暖化の傾向により少しずつ播種期は遅れている傾向があります。我が家では9月15日ごろにしています。
セルトレイやペーパーポットで、ネギ用播種培土を使い、ハウスでの育苗をしています。潅水ができることでスムーズな発芽を促進させることができます。
10月下旬〜11月上旬に定植します。「穴あきマルチ黒9515」などの穴あきマルチを使用して深植え、浅植えにならないようにしっかりと植え付けます。冬を越す時の苗の大きさが抽苔(ちゅうだい)に影響しますので、お箸くらいの大きさを目安に越冬させます。また、我が家では冬マイナス10℃になることもあり、越冬時、不織布を使ってトンネルをつくり寒さと風対策をしています。
2月下旬〜3月上旬、雪や天候の状況を見てトンネルを除去して追肥を行います。微量要素を効かせることで食味や保存性が高まると考えていて、三要素が入った肥料のほかに貝化石粉末などのカルシウム剤も一緒に施肥しています。
また、圃場の排水性が大切ですので、明渠(めいきょ)などで水がたまらないような圃場づくりもあわせて行います。
べと病などの防除は大切です。保存中の腐敗などの原因になりますので、予防散布をしっかりと行います。
倒伏してきたら収穫をします。晴れが続く日をみて地干しを1〜2日間行います。我が家では茎と根を切り、コンテナに入れてその後、風通しのよい倉庫に保管します。扇風機を使い風をあててしっかり乾燥させると保存性は高まります。
料理人にも人気の「ケルたま」。
加熱することで甘みが増しおいしい。
レストランや飲食店からの引き合いの多いものにペコロスがあります。
いかに大きさを小さくそろえるかが大切です。我が家では、2月中旬に播種を行い、4月中旬に定植を行います。ベッドをつくり、株間1〜2cm、畝間10cmの密植で作ります。収穫は6月下旬〜7月上旬になります。収穫後はしっかり乾燥させておくことが大事です。まるごと1個で使え、加熱調理すると甘くなる人気の「ケルたま」ペコロス。ぜひ栽培に挑戦してみてください。
秋冬の野菜にはこれらの要素を価値として表現できる品目がたくさんあります。本誌「タキイ最前線」にて、我が家の直売所でも人気のタキイさんの品種をご紹介しています。ぜひ本誌もあわせてご覧ください。
皮色、芯まで濃橙色。カロテン豊富で甘み強くおいしい「オランジェ」。
じっくり火を入れることで抜群に甘くなる「ケルたま」。料理人の間でも評価が高い。
短根で肌が白い可愛らしいルックス、煮物にも生食にも最適の「三太郎」。
アントシアニン豊富な赤紫ミズナ「紅法師」。鮮やかな色彩とくせのない食味でサラダ野菜の新定番として活躍。
糖度が高く味の濃さが際立つ「京くれない」。リコピンとカロテンの両方を含み、味と栄養価の2つの価値を併せ持つ理想の差別化野菜。
2024年
秋種特集号 vol.58
2024年
春種特集号 vol.57