鈴木光一のズバリご指南〜人の集まる魅力の売り場づくり〜鈴木光一のズバリご指南〜人の集まる魅力の売り場づくり〜

鈴木農場・伊東種苗店 店主
鈴木 光一(すずき こういち)

鈴木農場・伊東種苗店 店主 鈴木 光一

私は、福島県郡山市で現在まで30年間、野菜の直売所を経営してきました。また、縁あって平成8年より種苗店も兼営することになり直売所とタネ屋の両面から農業を考えるようになりました。日本農業が進む方向性のひとつは、本当にお客さまが欲しいと思える「価値のある商品づくり」をしていくことだと感じています。そのためにも、野菜の品種選びをしっかり行いましょう。

本誌『タキイ最前線』2017年春号よりスタートの新連載「鈴木光一のタキイ品種レビュー」。種苗店、農園、マルシェを経営する筆者に「直売で売れる」タキイ品種をご紹介いただいています。ここでは本誌では紹介しきれなかった、筆者の考える「商品価値を高める」ための野菜作り、販売のポイントなどを公開します。

2018年春種特集号連載記事はこちらから

2018/02/20掲載

第3回ブランド化の具体例「郡山ブランド野菜」

農産物の価値を高めて販売することがこれからの直売農家にとって大切であることをこれまでお話しさせてもらいました。個人の農家が創意工夫をして価値をつくり伝えていくことも大切ですが、グループで、直売所として、また地域としてこれらを行い、地域特産品、ブランド野菜を作ることも大切です。

今回は、私の住む郡山で取り組んできた「郡山ブランド野菜」プロジェクトについてご紹介します。

敢えて地域の伝統野菜ではなく、 新たに味わい・栄養価・個性・郡山の土地との相性を見極めて厳選された「郡山ブランド野菜」
敢えて地域の伝統野菜ではなく、 新たに味わい・栄養価・個性・郡山の土地との相性を見極めて厳選された「郡山ブランド野菜」

商品価値をつくり、それを表現する

スタートしたのは2003年。郡山で新たな特産品を自分たちの手でつくろうと、、このプロジェクトはスタートしました。品目のコンセプトは

郡山ブランド野菜のコンセプト

  • @おいしさ
  • A栄養価が高いこと
  • B個性的であること
  • C郡山の気候・風土に合っていること

としました。

作目・品種は在来品種でなく、各種苗メーカーから出されている交配種からセレクトしました。

目標は毎年一品ずつ新しいブランド野菜をプロデュースすること。ターゲットは郡山市民に向けての販売として、市民の皆さんが自慢できる商品にすることでした。また、単位面積当たりお米の10倍の売り上げにするという目標を掲げ、生産者もこれを作ることで利益を得られるようにと考えました。

郡山ブランド野菜3つの特長

  • @市場受けする形の統一性や保存性の高さよりも、本当においしい品種であることを重要視して選定しています。
  • A栽培勉強会を頻繁に開催し、栽培方法の統一、生産履歴の管理を徹底することで、品種のぶれを解消しています。
  • B栄養成分や味覚の分析により、おいしさの可視化をしています。

郡山ブランド野菜の顔ぶれ

一部をご紹介します

ささげっ子(インゲン/6〜10月)

ささげっ子

甘みとインゲンらしい風味、サクッコリッとした小気味よい食感を併せ持ち、脇役から主役にもなれるインゲン。サイズが小ぶりのため、フレンチなどのお皿にも美しく映え、使いやすいとシェフからも人気を集める。

佐助ナス(ナス/7〜10月)

佐助ナス

生で食べられるほどのやわらかさと甘みをもつ衝撃のナス。加熱するととろけてしまうほど、みずみずしくアクも少ないので、サラダや漬物にも。福島の方言「さすけない」は「差支えない」という意味。生で食べても「さすけない」ほどおいしいことから命名された。

グリーンスウィート(エダマメ/7〜9月)

グリーンスウィート

つややかな緑色で、人気の茶豆にも負けないほど甘いと香りが高い。収穫間際、畑では甘い香りが漂う。人気のあまり真っ先に店頭から消えてしまうことから、「郡山プランド野菜」の第1号に認定された。味にこだわった郡山の野菜作りのきっかけとなったエダマメ。

万吉どん(タマネギ/6〜3月)

万吉どん

抗酸化性にすぐれ、動脈硬化や糖尿病の予防に効果が期待できる成分「ケルセチン」が従来の品種より豊富。糖度も高く、加熱調理向きのタマネギ。ローストすると煮詰めたように甘みが凝縮され、散きのおいしさに。期待高まる機能性野菜の一種。

ハイカラリっくん(ネギ/6〜9月)

ハイカラリっくん

収穫時期は、ネギ栽培で非常に難しいとされる夏。やわらかく、ネギ特有の香りを保ちつつも、加熱するとトロリとした甘みが絶品。白根の部分はもちろん、葉の部分こそ食べていただきたい一品。煮る、焼く、薬味のほかにも、浅漬けなど、実に多様な料理として楽しめる。

おんでんかぼちゃ(カボチャ/8〜9月、11〜1月)

おんでんかぼちゃ

ホクホク系で、栗のようなおいしさ。1株から数個のカボチャを収穫する一般的な栽培に比べ、収穫する実を一つだけ残し残りは選定するr1株1果どり」という珍しい手法で栽培。収量は少なくなるがその分栄養を一つに集中させるため、うまみが凝縮される。

めんげ芋(サツマイモ/11〜12月)

めんげ芋

甘みが強く、しっとりとなめらかな舌触り。後口もサッパリ。加工しなくてもそのままでスイーツのような味わいで、焼き芋にもおすすめ。2014年12月野菜ソムリエサミットで二つ星獲得。

御前人参(ニンジン/11〜2月)

御前人参

高カロテンで甘みの強い品種。細長い形が目を引く。ジュースにすると、フルーティーな甘さで、他のニンジンとの違いが歴然とするほどのおいしさ。ニンジンくささが少なくさっぱりとしているため、ニンジン嫌いの方にも好評。

紅御前(ニンジン/11〜2月)

紅御前

御前人参の姉妹品種。リコピン&カロテンを併せ持つ高い栄養素が特長。金時ニンジンのような鮮やかな赤ニンジン。生絞りジュースにすると、柿のような甘みに。加熱してもうまみが増し、鮮やかな色合いが食欲をそそる。

冬甘菜(寒じめキャベツ/11〜2月)

冬甘菜

生で食べても唸るほど甘く、葉がぎっしりとつまったキャベツ。加熱するとさらに甘みは増し、煮込んだエキスは出汁のようにコクとうまみがある。一番甘い芯の部分まで、まるごと堪能できる。2014年12月野菜ソムリエサミットで二つ星獲得。

緑の王子(ホウレンソウ/12〜3月)

緑の王子

アクが非常に少ないため、サラダなどの生食も可能。加熱の場合も、短時間で済むので、栄養価も損なわずおいしく食べられる。畑のホウレンソウの中で真っ先に鳥に食べられてしまうほど、甘みが非常に強く味わいがある。

など

今年14年目、これまでに13品目のブランド野菜を作ることができました。
皆さんの評価も高く、一般消費者はもとより飲食関係者などにも使っていただけます。既存の在来固定種を使ってのブランド化ではなく、種苗メーカーの品種を使ってのブランド化なので全国どこでも取り組めることだと思います。お客様の魅力を感じる、そして価値のある商品づくりをすることで新しいニーズをつくっていくことがこれからは、大切なことだと思います。
※郡山ブランドの野菜の青果、種子などの取扱はタキイではございません。