鈴木農場・伊東種苗店 店主
鈴木 光一(すずき こういち)
私は、福島県郡山市で現在まで30年間、野菜の直売所を経営してきました。また、縁あって平成8年より種苗店も兼営することになり直売所とタネ屋の両面から農業を考えるようになりました。日本農業が進む方向性のひとつは、本当にお客さまが欲しいと思える「価値のある商品づくり」をしていくことだと感じています。そのためにも、野菜の品種選びをしっかり行いましょう。
鈴木農場・伊東種苗店 店主
鈴木 光一(すずき こういち)
私は、福島県郡山市で現在まで30年間、野菜の直売所を経営してきました。また、縁あって平成8年より種苗店も兼営することになり直売所とタネ屋の両面から農業を考えるようになりました。日本農業が進む方向性のひとつは、本当にお客さまが欲しいと思える「価値のある商品づくり」をしていくことだと感じています。そのためにも、野菜の品種選びをしっかり行いましょう。
2019/02/20掲載
昨年の春、大学を終えて長男(四代目)が帰ってきました。家業である農業と種苗店を継ぎたいということでした。
就農して彼が新しく取り組んだのが、
でした。いずれも販売力の強化につなげるものでした。
具体的には、飲食店が常に必要としているサラダ野菜を周年作付けすること。旬のものをおいしくつくること。また、その旬のものを少し前倒しして作付けすること。こちらから新しい品目、品種を提案すること。売り場で目をひく彩りのよい野菜を作付けし、おしゃれに陳列することなどでした。
鈴木農場四代目が、飲食店のために作った旬の野菜メニューリスト。
四代目はSNSでの情報発信にも積極的だ。
また、旬の野菜メニューリストをつくり飲食店さんに渡すこと。インスタグラムやフェイスブックといったSNSを利用して農場の情報を発信することも併せて行いました。
その効果は顕著で、お店やマルシェには「インスタ見ました」といった若いお客さんや、新しい飲食店の方々もお客さんとして確実に増えてきています。
継続して参加している郡山市の「開成マルシェ」。四代目が力を入れる直売会は毎回大勢の人でにぎわう。
わが家は小さな野菜直売の専門店です。多くの方に来ていただくというよりは、その価値をわかっていただけるお客さんに選ばれる直売所になればよいと考えます。つまり専門性を売りにできるお店です。
種苗店についても同じように考えています。私が20年前に目指したタネ屋は、直売所出荷の農家さんが来てくれる専門店でした。自分が直売農家であるのでそれを極め、同じように直売所出荷を行っている農家さんへ「タネ」と「情報」を提供できる店になればと考えていました。
今、タネはホームセンターやネット通販など、どこでも購入できます。そんな時代に、お客さんに種苗店に来ていただくには、専門性がとても大切だと考えます。私も種苗店を引き継ぐ前は農家としてタネを買いに種苗店に行ってました。そこでタネだけでなくたくさんの情報を得ていました。売れてる品種は何か、まき時期や栽培方法はどうするのか、出荷やパッケージの方法、また価格の情報など、種苗店はあらゆる情報を得ることができる、究極の専門店なのです。
郡山市の鈴木農場・伊東種苗店。郡山の野菜とタネが並ぶ店頭では商品に目を奪われがちだが、種苗店は生産から販売まで、まさしく地域農業の情報ハブとして存在しています。そしてその情報が人と人をつないでいきます。
今、種苗店の役割は専門店として多岐にわたっています。
など、生産から販売まで幅広い分野で専門性が求められています。
特に地域においてこれからの担い手となる若い農業者との連携は、農業の将来を考えるうえでとても大切です。種苗店がその専門性を生かして、地域農業をどうするかというところまで積極的に関わることも必要なことだと考えます。
筆者と「郡山ブランド野菜」を作る生産者たち。お客さんが本当においしいと喜んでくれる、“味”にこだわりのある野菜を作ろうと集まった面々です。
「郡山ブランド野菜」は味わいと栄養価、郡山の土地に合った品種を、すべて200〜300種類ほどの中から吟味して1年に1度、たった1つを選び出しています。本当においしい野菜を作り、「これはただのニンジンじゃない。300種類の中から選んだ渾身のニンジンなんだ」と伝え、食べていただくことで、お客さんに喜んでいただき、また農家も収益をあげていく、これが「郡山ブランド野菜」の根本の考え方です。
私のところでは、15年前から「郡山ブランド野菜プロジェクト」を地元の若手農業者とすすめています。新規就農者などもメンバーに加わり、品目、栽培面積、生産量も増えています。大切なことは、野菜を作ってちゃんと収益に結びつけていくことだと考えます。農産物を、価値のある商品としてきちんとプロデュースしていくことです。
そしてタネは、そのとても大切な要素のひとつです。これからは、タネから食卓の料理を考えていくような農業が必要になってくるのだと思います。
農家が利益をしっかりとあげていくために必要とされる種苗店になっていく、これがこれからの目標です。
四代目が就農し、農場・種苗店はもちろんのこと、郡山ブランド野菜プロジェクト、マルシェなどさまざまなプロジェクトも大きく加速していきます。
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