品種ピックアップ

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2025/7/25掲載

タキイ育成

レタス「ヒートガイ」
農林水産省品種登録出願中(品種名:TLE595)

高温期の結球と形状が安定!
玉肥大がよく耐病性にすぐれた極晩抽種

レタス「ヒートガイ」

「ヒートガイ」の特長
  • 高温干ばつ環境下でも結球が安定
  • 肥大良好、形状が安定し高い秀品率
  • 高温期に発生しやすい病害に強い

レタスは冷涼で乾燥した気候を好む作物で、夏は標高の高い地域や高緯度地域を中心に気候をいかした栽培が行われています。しかし、近年はこのような地域も夏の気温が著しく上昇したり、干ばつや短時間の集中的な降雨などが増えています。一方、サラダの主役として欠かすことのできないレタス類は、業務需要の増加とともに、より安定した出荷が望まれています。
このようなことから高温耐性にすぐれ、夏に発生しやすい各種病害に強く、変動する気象条件下でも生産が安定する品種を目標に育成を進め、2024年、「ヒートガイ」として発表いたしました。栽培性・秀品率・耐病性の各特性を高いレベルで併せ持ち、高温期にレタス生産を行われる方には特におすすめしたい品種です。
品種特性と栽培ポイントや品種の使い分けを記しますので、参考にしていただければ幸いです。

タキイ長野研究農場 石田 了

品種特性

高温干ばつ環境下での安定性

高温結球性が安定しているので、夏の干ばつ環境下の栽培でも生育のスピードが安定しやすく、定量の出荷が要望される契約栽培でも計画的な出荷が望めます。また、降雨が続く条件下においても斑点細菌病や軟腐病の発生が少ないので、このような環境下の栽培でも安定した出荷が期待できます。

すぐれた商品性

葉色はツヤのある濃緑色で玉肥大は良好です。球芯は細く葉柄基部の幅が広く、中肋はなめらかで秀品率が高い品種です。
結球内部の葉の重なりは順序よくきれいで適度な空間があり、業務需要では作業性がすぐれます。

尻部の形状が乱れにくく、秀品率が高い。

尻部の形状が乱れにくく、秀品率が高い。

左:他品種 右:ヒートガイは球内部の葉の重なりが順序よくきれい。

左:他品種 右:ヒートガイは球内部の葉の重なりが順序よくきれい。

各種病害に強い

土壌病害ではフザリウム菌によるレタス根腐病レース1とレース2に対して耐病性をもつほか、黒根病にも耐病性があります。また、降雨によって発生しやすい斑点細菌病や軟腐病、湿度が高い環境で発生するべと病にも比較的強いので安心して栽培できます。

他品種

他品種

ヒートガイ 他品種と比べて軟腐病の発生が少ない。

ヒートガイ 他品種と比べて軟腐病の発生が少ない。

適作型

適作型

栽培ポイント

施肥量

肥大がよいので施肥量は従来品種に比べて同等あるいは1〜2割減が適します。多肥栽培向き品種を栽培していた場合は2割程度減肥します(多肥栽培向き品種を10a当たり10kgで栽培されていた場合は8kg程度が適当)。
肥大のよい品種を使用していた場合は同等の施肥量が適します。

潅水のタイミング

高温で生育が停滞気味のときに干ばつでさらに生育が抑制されると、結球に必要な葉の大きさが確保できず、結球遅れや生育のバラつき、不結球症状を引き起こす場合があります。これらを避けるため高温期の栽培は潅水設備のある圃場で作付けを行い、干ばつ時は必ず潅水を行ってください。
効果的な潅水のタイミンングは芯葉立ち上がり〜結球初期の前後1週間です。例えば、芯葉立ち上がりステージのときに土壌が乾燥気味で、その先の週間天気予報を見て雨が期待できない場合は必ず潅水を行うようにします。このタイミングであれば比較的少量の水でも効果は高く、病害の発生も最小限に抑えることができます。

適期収穫

結球性がよく生育スピードが安定している、比較的熟期の早い品種です。弊社の「シーカー」に比べると3〜4日程度早熟なので、取り遅れにならないよう収穫労力に見合った作付けを行い、適期で出荷することが大切です。

病害対策

腐敗病の防除は従来品種と同様に行ってください。外葉形成期から結球初期のステージに銅剤を中心とした予防散布を徹底します。降雨が続いて化学農薬による防除が難しい場合は生物農薬を利用することもご検討ください。施肥、潅水、収穫を適切に行うことも病害発生の低減につながります。
べと病は多くのレースがありますので、耐病性品種に頼りすぎず、育苗ハウスの風通し改善や循環扇による通風などで湿度を下げて発生を防ぐとともに、薬剤防除なども併せて行うことが大切です。

夏秋どり品種の使い分け

高温期の栽培に適する品種として「ヒートガイ」「アリスト」「シーカー」「サマーガイ」などがあります。

高冷地の7〜9月どりや準高冷地の7月、9〜10月どり、中間地・暖地の10月中下旬どりなど耐暑性と耐病性が必要な作型は「ヒートガイ」をおすすめします。
シーカー」もほぼ同じ作型に適しますが、やや気温が低い時期でも肥大や形状が安定する点をいかして、高冷地の7月上旬どりや9月上中旬どりに栽培して「ヒートガイ」とリレーするとより安定した栽培が可能です。

さらに気温が高い準高冷地の8月どりや中間地・暖地の10月中下旬どりは、高温結球性がよりすぐれる「サマーガイ」や「アリスト」が適します。

結球レタスの適作型(収穫期)

※べと病は菌の種類によって発病する場合がございます。

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