品種ピックアップ

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2025/7/25掲載

タキイ交配

ホウレンソウ「晩抽サマージェット」

極晩抽品種の決定版!
多収性・作業性・栽培性にすぐれ安定収穫を実現

ホウレンソウ「晩抽サマージェット」

「晩抽サマージェット」の特長
  • 生育遅延が起こりにくく栽培容易な極晩抽種
  • 葉柄太くしなやかで多収。収穫・調製が容易
  • 萎凋病に耐病性があり、べと病に強い

ホウレンソウは日長で抽苔が促進されます。抽苔すると市場価値が著しく下がるため、長日期となる4〜6月の栽培に用いる品種には晩抽性が必須です。特に、北海道の6月まきは日本で一番の長日条件となるため、抽苔のリスクが最も高く、品種には極晩抽性が必要です。一方で、極晩抽性品種は一般的に生育が遅く、不良環境下で生育が停滞しやすい特性があるため、生産地では気温や乾湿の影響を受けにくく栽培が安定しやすい極晩抽性品種が求められていました。
2022年発表の「晩抽サマーヒット」は晩抽性、多収性、作業性を兼ね備えた品種として本州冷涼地を中心に現在評価をいただいています。「晩抽サマーヒット」の特性をもちながら、さらに栽培性の高い極晩抽品種を目標として育成を進めてきたのが「晩抽サマージェット」です。
「晩抽サマージェット」は北海道をはじめ本州主要産地での継続的な試験の結果、高いレベルの極晩抽性、栽培性とともに、当社ホウレンソウのコンセプトである多収性と作業性の両立を達成できたため、2024年に発表いたしました。

タキイ茨城研究農場 神田 拓也

品種特性

栽培が容易な極晩抽種

晩抽性が極めて安定しており、北海道の4〜7月まきでも栽培可能です。極晩抽種の中では高温や乾燥条件での生育遅延が起こりにくく栽培しやすいことが特長です。

多収で在圃性にすぐれる

大葉で葉柄が太るため株張りがよく多収を期待できます。徒長しにくく、生育がじっくりしている在圃型のため、収穫適期幅が広く計画的な出荷が可能です。

栽培を安定させる耐病性

べと病抵抗性はレース1〜15・17・19・20をもち、春のべと病対策に適応できます。萎凋病には中程度の耐病性をもちます。

収穫・調製が容易

草姿は立性で、葉柄もしなやかで折れにくく収穫・調製作業がストレスなく行えます。

適作型

適作型

栽培ポイント

生育ステージに応じて、潅水を実施

過度な乾燥条件では多収の特長が発揮できない場合があります。特に生育中盤(本葉5〜6枚)以降は、1回の潅水量を多めに実施することで葉肉が厚くなり、1株当たりの重量が増加し、株張りがよくなります。

遮光資材を活用した高温時の温度管理

  • 発芽までは、遮光率の高い遮光資材(80〜90%)で地温を下げることが重要です。
  • 発芽後、遮光率の低い遮光資材(30〜40%)に切り替え、立ち枯れが心配な時期まで地温の上昇と乾燥を防止します。
  • 本葉4枚目以降は、株張りを充実させるため基本的には遮光を外しますが、曇天が続いたあとの高温時など生育に影響を与える場合は、天候に応じた遮光管理が必要です。遮光資材の上げ下ろしが難しい場合は、遮光率が低い遮光資材(30〜40%)を使用します。
  • 収穫時は、遮光率の高い遮光資材を収穫前日に掛けておき、しおれを防止します。

遮光管理のタイミング

本州冷涼地での「晩抽サマーヒット」との使い分け

「晩抽サマージェット」の生育は「晩抽サマーヒット」よりも2日程度遅く、より在圃性があります。
「晩抽サマーヒット」を基軸に栽培しながら、特に徒長しやすい時期は「晩抽サマージェット」に切り替えることで、より在圃性が期待できる栽培体系となります。

左:晩抽サマージェット 右:晩抽サマーヒット

北海道・本州冷涼地における推奨作型表

北海道・本州冷涼地における推奨作型表

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