品種ピックアップ
2023/7/20掲載
品種ピックアップ
2023/7/20掲載
コマツナは栽培が比較的容易であり、栽培期間が短く、年間で最大7〜8回作付け可能なため、周年での雇用型経営で規模を拡大しやすく、また耐暑性を生かして夏場の葉物野菜の安定出荷が可能なことから、近年の作付面積、出荷量ともに増加傾向にあります。しかしコマツナは、ほかの軟弱野菜同様に出荷調製作業の時間がかかるため、時間当たりにどれだけの袋数、束数ができるかが出荷量を決めるポイントであり、大規模化を進めるためには、ますます収量性と収穫作業性を兼ね備えた収益性の高い品種が求められます。
また、近年の異常気象の影響で、特に高温期の収穫では徒長による株張りの低下、石灰欠乏症やカッピングなどの生理障害の発生など安定した栽培が難しくなっています。
このような背景から、タキイでは高温期の栽培でも株張りがすぐれ、収穫・調製作業がしやすく、在圃性・耐暑性にすぐれ、生理障害や病害に強い耐性をもつ品種の育成を目標に開発を進めました。そして、産地で複数年の試作を行った結果、目標通りの特性が確認できましたので、この度「夏蒼天」として発表する運びとなりました。
タキイ茨城研究農場 神田 拓也
❶葉柄が太り、葉枚数が多いため株張りがよく収量性が非常に高いことが一番の特長です。
❷草姿が立性で葉柄が折れにくいため収穫・調製作業が容易です。
❸生育がじっくりしており、徒長しやすい時期の栽培でも葉柄が間伸びしにくく在圃性にすぐれます。
「夏蒼天」は葉柄が太り、葉枚数が多いため株張りがよく、葉と軸のバランスや葉ぞろいがよい。
耐暑性があるため、高温期の栽培でも石灰欠乏症やカッピングに強いため、夏どり栽培での良品出荷が可能です。
夏どり栽培で問題になる萎黄病と、多湿条件で発生しやすい白さび病に強度の耐病性をもち、安定した栽培が見込めます。
葉色は濃緑色でテリがあり、葉面はシワが少なく平滑葉です。
また、葉と軸のバランスや葉ぞろいがよいため、束ね・袋詰めしたときの荷姿が美しく商品性にすぐれます。
最適作型は北海道の7〜8月中旬どり、冷涼地の7〜8月どり、暖地7〜8月どりになります。
耐暑性にすぐれる多収種「夏蒼天」。
夏季のコマツナの栽植密度は、条間15p、株間5〜6p が目安ですが、生育期間が短いため、発芽がばらつくとその後の生育に大きく影響します。発芽をそろえるため、ハウス栽培の場合は整地前にたっぷり潅水して圃場の奥深くまで、乾湿のムラなく水を浸透させた状態で整地、播種を行います。生育初期〜中期までは1回の潅水量を多めに行い、乾燥による生育ムラを防ぎます。
生育中の過度な乾燥条件では生育の遅延、および本来の株張りが発揮されない可能性があるため、潅水管理で生育を順調に進めます。
生育の後半は潅水量を控えめにし、株張りを促します。
適作型は中間・暖地ハウスの4月上旬〜8月下旬まき、冷涼地ハウスの4月下旬〜8月上旬まきです。特に下降気温下での栽培では生育がよりじっくりし栽培期間が長くかかるため、適作型での栽培を推奨します。在圃性にすぐれますが、在圃期間が長くなると外葉の黄化につながるため、できるだけ適期収穫を心掛けてください。
萎黄病や白さび病には耐病性をもちますが、根こぶ病などほかの土壌病害発生が懸念される場合は、土壌消毒や殺菌剤の利用や圃場の排水改善など総合的な防除を行ってください。また、栽培時期はアブラムシやアザミウマなどの被害で収穫物の品質低下も多くなっていますので、予防的防除を心掛けてください。
新発売の「夏蒼天」は、生育がじっくりしており、株張りがすぐれるため軟弱徒長しにくく、収量性と在圃性にすぐれます。また、萎黄病や白さび病に耐病性をもち、高温期に発生しやすい石灰欠乏症やカッピングの発生が少ないため、高温期栽培での基幹品種として活用していただけます。
一方、従来の夏どり品種である「菜々シリーズ」の中で、より早生でボリュームを重視される方は「菜々美」を、極立性で作業性を重視される方は「菜々音」をおすすめします。
在圃性・収量性にすぐれる「夏蒼天」。
「菜々シリーズ」の「菜々美」。より早生でボリ ュームを重視する方に。
収穫・調製作業を重視する方には「菜々音」がおすすめ。
2025年
春種特集号 vol.59
2024年
秋種特集号 vol.58