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品種ピックアップ

2021/7/20掲載

タキイ交配タマネギ「ボルト」
玉じまりがよく草姿立性で作りやすい晩抽早生種!

「ボルト」の特長
  • 暖冬でも栽培しやすい高い晩抽性
  • 玉じまり良好で、皮の色つやがよい
  • 寒さに強く、低温期の肥大性にすぐれる

2016年の全国的なべと病の大発生以来、府県産地では安定生産に向けた取り組みが模索され、また、新規産地でのタマネギ生産も注目を浴びるようになりました。
作型別での動向を見ますと、気象への不安が続く中で、在圃期間の短い早生タマネギの重要性が高まっています。しかし、その早生タマネギの作柄も、冬場の天候に左右されやすく、抽苔や分球が発生するなど、年々不安定になっているのが現状です。
早生タマネギは大玉の青切り出荷が定番ですが、暖冬の年には肥大しすぎで供給過剰となり、市場価格が安定しない要因の一つになっています。
そこで、「安定した晩抽性を備えた玉じまりのよい早生タマネギ」を目標に育成を行ってきた成果を、このたび「ボルト」と命名して発表いたします。
近年の暖冬でも対応できる晩抽性と、早生種としては皮の色つやにすぐれた高品質性を生かし、安定生産につなげていただけるように、品種特性と栽培のポイントを紹介します。

タキイ研究農場 鈴木 良平

品種特性

甲高で玉ぞろいのよい早生種

早生種としては比較的甲高で、球形のそろい性にすぐれます。暖地では4月中旬から、中間地でも4月下旬から収穫可能です。

抽苔や分球が少なく作りやすい

抽苔や分球の発生が少なく、さらに病害に対しても比較的強いため、安心して栽培できます。また、草姿立性で葉折れが少なく、育苗時の苗立ちもすぐれ、栽培管理作業が行いやすいという特長もあります。

玉じまりが良好

「ボルト」は従来の早生タマネギと比較して、玉じまりがすぐれているのが大きな特長です。厚く色つやのよい皮が玉に密着しているため、収穫作業中や出荷時に玉が傷む心配が少なく、安心して作業することができます。

寒さに強い

冬の寒さによる葉傷みが少なく、低温期の肥大性にすぐれます。そのため、基本的には暖地での栽培が適しますが、中間地での栽培も可能です。

適作型

中間地では9月上中旬(露地〜マルチ)播種、11月上旬(露地〜マルチ)定植、暖地では9月中旬(露地〜マルチ)播種、11月中旬(露地〜マルチ)定植が最適作型になります。

ボルト

「ボルト」

適作型

栽培ポイント

栽培しやすい「ボルト」ですが、その特性を発揮するためには、以下の3つのポイントを押さえることが重要です。

適期の播種・定植を守る

早生種としては晩抽の「ボルト」ですが、適期の播種・定植は他品種と同様に重要です。
早どりをねらって早まき・早植えすると、生育が進みすぎて抽苔・分球の危険性が増すほか、葉枚数が多くなりすぎ、かえって熟期が遅くなったり、過繁茂によって病害が発生しやすくなります。逆に播種が遅れると、年内の生育が不十分になり、生育不良や肥大不足になる可能性があります。適期表を確認し、栽培地域に適した播種・定植期を守って栽培を行いましょう。中間地では11月上旬、暖地では11月中旬ごろまでが定植の目安です。

早春からの肥効を高める

定植後は速やかに活着させ、早春から肥効を高めることが、収量を確保するにあたって重要です。
基本はマルチ栽培で、元肥一発肥料などを使用し、全量元肥で施用します。霧地栽培では3分の2程度を元肥とし、残りを追肥として施用します。
追肥は12月下旬〜1月上旬と、2月上中旬を目安に、2回程度施します。肥料の遅効きは葉勝ちになりやすく、肥大の遅れや病害発生の危険性が増すため、注意が必要です。

早めの病害防除

「ボルト」は早生種としては草姿が立性で、茎葉はかたくしまります。そのため病害には比較的強いのですが、べと病に対しては、他の品種同様に早めの防除を心掛けてください。特に生育期間の短い早生種は葉のダメージが玉肥大に大きく影響を与えるため、予防的な防除で病気を出さないことが重要です。

収穫は晴天の日に

早生品種は球形状が仕上がり次第、青切りで収穫されることが多いですが、「ボルト」の玉じまりを生かす場合は、倒伏ぞろい約1週間後の収穫を目安としましょう。収穫は晴天の日をねらい、皮を圃場で乾燥させることで、色つやのよく品質の高いタマネギに仕上げることができます。

圃場で収穫後、風乾をおこなっている「ボルト」。早生種としては濃色皮で、皮つきがすぐれる。

圃場で収穫後、風乾をおこなっている「ボルト」。早生種としては濃色皮で、皮つきがすぐれる。

「スパート」との使い分け

「ボルト」

「ボルト」

「スパート」

「スパート」

「ボルト」(左)と同じく、晩抽性の早生種「スパート」(右)。「ボルト」に比べ収穫期が遅い代わりに、やや大玉に仕上がる。

「ボルト」は、「スパート」より収穫期が5日程早く、玉のしまりがすぐれるのが特色です。「スパート」は、より生育が旺盛で収量性にすぐれます。両品種ともに晩抽性が安定しており、安心して作ることができますし、「ボルト」の後に「スパート」を収穫する、というリレーも可能です。

タマネギ特性比較

(注)吊り貯蔵可能期間