品種ピックアップ
2025/2/20掲載
品種ピックアップ
2025/2/20掲載
持続可能な農業を達成するうえで、食品ロスを減らすということは大きな課題の一つと言えます。世界のトマト生産の動向を見ていると、輸送性の問題から縦長の果形をしたローマ型やナツメ型といわれるゼリー部が少なく店もち性にすぐれた形をしたトマトの市場が拡大傾向にあります。
新発表の「千恋」は縦長の果形をしたナツメ型の品種で、肉厚で水分含量が少なく「カリッポリッ」とした食感を楽しめ、まさにおやつ、スナック感覚で食べていただけるミニトマトです。
また、ヘタがなくても流通可能で、保存中にヘタの劣化を気にする必要がありません。生産現場では、ヘタの着脱を気にせず収穫できるため、作業の省力化もねらえます。ゼリー部が少なく果汁が少ないので、料理にも使いやすく、もちろんサラダやお弁当の食材にも便利です。
一度食べたら好きになる!? そんな「千恋」の栽培に挑戦してみませんか?
タキイ研究農場 中山 健治
果形は10〜20gの細長いナツメ型、ゼリー部が少ないため肉厚で店もちにすぐれます。ヘタ下のコルク層が非常に小さく、パックなどの中でも果汁が出にくく、ヘタをつけない出荷が可能です。
トマト黄化巻病(Ty-3a型)、葉かび病(Cf9)に耐病性を示すほか、トマトモザイクウイルス(Tm-2a型)への耐病性も併せもちます。
果ぞろいがよく、濃赤色でつやがあります。栽培条件によってはややくびれが入ることもありますが、栽培期間を通じて糖度も安定し、酸味とのバランスがとれています。
トマト黄化葉巻病耐病性について
タバココナジラミが媒介する黄化葉巻病イスラエル系、マイルド系の両系統に安定した耐病性があります。ただし、完全抵抗性ではなく、植物体内へウイルスが侵入後に増殖を抑制するタイプの耐病性なので、栽培環境によっては発病する可能性もあり、従来通りの耕種的防除と定期的な薬剤散布を組み合わせて栽培することが必要となります。
「千恋」は発根力が旺盛で草勢が強い特性をもちます。どの作型においても元肥のチッソ成分量は、10a当たり5s以下を目安とし、追肥重点型の肥培管理を行います。また、節間長がやや長いことから、栽培期間を通じ、極端な過湿など徒長の原因となる条件は避けてください。
「千恋」は従来のミニトマトに比べ、花数がやや少ない品種です。草勢が弱ってしまうと、花数がさらに少なくなり、収量に影響します。また、果実が短くなったり、くぼみが発生したりと果ぞろいが悪くなるため、潅水や追肥が遅れないように早めの肥培管理で草勢維持を心掛けてください。
本格的な追肥を始めるタイミングは4段目の開花時期が目安です。追肥量は、10a当たりチッソ成分で液肥の場合は1s、固形肥料は3sを目安に施します。その後は草勢を見ながら液肥なら各段開花時に、固形肥料なら1段おきに同量を施します。
乾燥条件などで発生する尻腐れ対策として、土壌水分の乾湿の差をできるだけ抑え、コンスタントな養水分の供給が必要です。またヘタのない果実で流通させる場合は、肩部の着色不良や裂果が目立ちやすいので、これらの障害の発生は避けたいところです。
肩部の着色不良は高温条件下で草勢が弱いと発生が助長される傾向があるため、草勢を維持し高温期は遮光によって直射日光を軽減し、ハウス内温度の低下に努めてください。
裂果については特にヘタ周りの輪状裂果に注意する必要があります。輪状裂果は果実の結露で発生が助長されるため、ハウス内の湿度管理と果実とハウス内の温度差が大きくならないような結露しにくい温度管理が求められます。
1〜2段目はホルモン処理で確実に着果させます。トマトトーンの希釈倍率は夏場で150倍前後、冬場は100倍前後に設定します。高温期は特に花の生育が早いので、ホルモン処理の間隔は週2〜3回と間隔を詰めて行いましょう。特に摘花の必要はありません。
「千恋」は従来のミニトマト同様の温度管理をします。下降気温下では果実の成熟速度を維持するため、秋口からは早めの保温や暖房を心掛けるとともに、最低温度の設定目標を12℃以上にします。日中の温度も厳寒期は15℃を確保できるようにし、適切な日平均気温の確保に努めます。上昇気温下においては換気遅れによる蒸し込みなど、温度を上げすぎると徒長の原因につながるので、注意しましょう。
2025年
春種特集号 vol.59
2024年
秋種特集号 vol.58