タキイ交配 ダイコン 冬神楽

秀品率の高い加工・業務、青果兼用の冬どり種!

2018/07/20掲載

タキイ研究農場 田中 寛ダイコンの栽培面積は近年減少傾向にありますが、出荷量、消費量は微減にとどまっており、今なお日本人にとってなくてはならない野菜の一つです。しかし、生活スタイルの変化により野菜の家計消費における購入形態は変化してきています。青果の購入よりも加工調理食品の購入が増加しており(総務省「家計調査」)、今後もこの傾向は続くとみられます。
 ダイコン生産量のうち加工・業務向けの利用割合は約6割と推定され、実需者が求めている基本的な原料特性は「肉質の白さ」と「肉質が緻密でかたい」といった、青果とはやや異なるものになっています。一方で生産者は、近年の不安定な気象条件下でも安定供給するため、栽培技術を駆使し、安定した品質、収量の確保に努めています。

冬神楽適期表

冬神楽写真→「冬神楽」は淡い緑首で、低温期でも緑肉になりにくい。

このような状況に対応し、安定した品質と収量性に寄与するため、病害や生理障害に強く、加工・業務用の適性にすぐれることを目標に、数年間試作を行い育成してきました。そしてこの度、栽培性、加工適性両面においてすぐれる品種、タキイ交配「冬神楽」を発表することになりました。

品種特性

1曲がり根の発生が少なく、秀品率が高い

草勢は従来の冬どり種よりもおとなしく、株の勝ち負けが出にくい草姿です。抽根部は短めであるため、曲がり根の発生が少なく、尻づまりも良好で形状が安定しており、秀品率が高いのが特長です。

2病気や生理障害に強い

ス入りや裂根、空洞症などの生理障害の発生が少なく、在圃性にすぐれます。また、萎黄病については安定した耐病性を示し、安心して栽培できます。

3加工・業務用にも向く肉質

淡緑首の品種であり、低温時期の栽培条件下において問題となる緑肉にもなりにくく、汎用性のある肉質のため、漬物やおろし、刺身のツマなど幅広い用途に適します。

4早春どり可能な晩抽性

在圃性と晩抽性にすぐれることから、暖地においては早春どり(3月どり)も可能な冬どり品種です。

栽培ポイント

適期栽培を心掛ける

冬どり種としては草姿がコンパクトな品種ですが、早まきすると草勢が強く葉勝ちになりやすいため適期播種を心掛けましょう。一方で生育は比較的じっくりしているので、播種日が遅くなりすぎないよう注意します。

施肥は肥効が持続するように

元肥を主体とした施肥を行いますが、最終間引き後に追肥を行います(生育に応じて1〜2回)。播種時期や土質、前作によって施肥量は異なりますが、生育初期から肥効を高める施肥設計とします。肥料切れは、生育の遅れや肥大不足の発生にもつながるので、緩効性肥料を使用するなど肥効の持続を考慮した施肥設計としましょう。

保水、排水性のよい土づくり

栽培期間中に乾燥や過湿を繰り返すと横縞症や根部の変形などの原因になります。また、過湿によって土中の酸素が不足すると根部の生育が著しく劣るので、水はけの悪い圃場では高畝栽培としましょう。堆肥などの有機物を施用し、保水・排水性のよい土づくりを行うことが良品を生産するうえで重要です。

中耕でしっかりした根張りを促す

生育初期に集中豪雨などの過湿条件にあうと十分に根を張らせることができず、本来の生育ができない場合があります。管理機を利用し、タイミングよく畝間を何度か中耕することで生育が回復します。本種の特性を発揮するには、この中耕は重要な管理作業といえます。

被覆資材の利用

冬どりでは低温による抽根部の凍結や、霜による葉傷みが問題になります。そこで、年内に「ベタロン」などの被覆資材を直接覆うことで、これらの寒害を緩和し、肥大を促進することが可能です。
場合によっては草勢が低下する前に追肥を行い、被覆をすればより効果が高くなります。