タキイ育成 ヘルシエ

段違いのねばとろ感!パステルグリーンやわらか丸莢

2019/02/20掲載

瀬野 晃好

タキイ研究農場

瀬野 晃好
(せの あきよし)

近年、健康寿命の大切さが広く知られるようになり、人々の食に対する意識は高まり、「医食同源」という概念が再認識されています。食物が健康に与える影響の大きさが認識された現在を遡ること20年近く前からタキイは「機能性成分」に注目し、「ファイトリッチ」シリーズとしてさまざまな品種の開発に着手。オクラにもその特有の粘りに着目し、新たな機能性成分としてその可能性を検討してきました。
オクラ特有の粘りは高分子多糖体によってもたらされ、ペクチンといった成分が知られています。特にペクチンは水溶性食物繊維として、食事と同時に摂取すると食後の血糖上昇が抑制され、インスリンの分泌も抑制されるという研究結果も報告されています。
タキイでは通常オクラよりも粘りが強く、水溶性ペクチンの含量の高い品種を目標に育成を進め、このたびタキイ育成「ヘルシエ」と命名し、発表する運びとなりました。
「へルシエ」は通常オクラと比べ、3倍の粘りをもち、水溶性ペクチンは2倍含有するという品種です。外観も店頭で目を引くパステルグリーンの丸莢。「ネバオクラ」の青果名でぜひとも拡販いただきたい品種です。

「ヘルシエ」適期表

「ヘルシエ」適期表

品種特性

1粘りの強さが段違い

「ヘルシエ」は機能性成分である水溶性ペクチンが、従来のオクラ「アーリーファイブ」に比べ2倍の含有量があります。また、オクラ特有の粘りが強く、回転粘度計による計測では3倍程度の粘度をもつことを確認しています。かめばかむほど増してゆくもちもちとした粘りの強さを実感いただけます。

粘りの強さが段違い

2やわらかい肉質と見ばえのよい莢形状

真っすぐな莢に仕上がる「ヘルシエ」。

↑真っすぐな莢に仕上がる「ヘルシエ」。

「ヘルシエ」の莢の形状は丸莢で肉厚が特長です。肉質は特にやわらかで粘りの強さも相まって食味がよく、くせのないおいしさがあります。莢色は見た目にも鮮やかなパステルグリーンです。太みのある真っすぐな莢に仕上がり、草勢低下による莢の曲がりや、イボ果の発生が少なく、秀品率が高いことも特長です。15cm程度までとり遅れてもかたくなりにくく、さまざまな販売形態にも対応できるでしょう。

3生育旺盛な露地向き品種

「ヘルシエ」は生育が旺盛な高性の主枝どりタイプの品種ですから、露地栽培で能力を発揮します。

栽培のポイント

元肥はうんと少なく

草勢旺盛な品種のため、水はけのよい畑土が適します。水田土などでは高畝にし、排水性を高めましょう。
元肥は緩効性肥料を用い、チッソ成分量は通常オクラの2割程度(10a当たり3kg)が目安です。肥沃地や残肥がある場合は、元肥を省いて追肥主体とした方が樹ぼけしにくくなります。

草勢の判断と追肥

開花位置が成長点から5葉以上離れているような状態は、草勢が強いので開花節まで摘葉します。草勢が極端に強い場合はリン・カリ系葉面散布を定期的に施し、なりぐせをつけてください。
順調に生育した場合には、追肥の開始時期は3莢収穫したころから行います。チッソ量で通常オクラの半分程度を与えて成長点の蕾の数、葉色の濃さなどを確認し、肥料の効き過ぎがないか確認してください。適切な草勢が保たれているようであれば10日に1度程度、1回目の追肥量を目安に草勢を見ながら施肥してください。
本種は従来のオクラより、莢、葉、茎など株全体の色が淡いのが品種本来の特性ですので、色合いでの追肥判断は禁物です。必ず成長点や葉の様子を見て判断するようにしましょう。

「ヘルシエ」の特性のひとつでもある淡い葉色。

↑「ヘルシエ」の特性のひとつでもある淡い葉色。

適切な草勢。

↑適切な草勢。

草勢が強い状態。

↑草勢が強い状態。

(※抑制作での展示のため白マルチ使用)

均一な栽培のための栽植密度

本種は葉が大きいため、密植すると株の生育に勝ち負けが起こりやすくなります。均一に栽培するためには1カ所当たりの立本数を減らし、株間を詰めることで栽植密度を保ち、極強勢株と弱勢株による収穫ロスを減らします。1穴に2株立ちとして株間は10〜15cm、栽植密度は10a当たり1万5000本が目安です。


産地の試作から学ぶ

「粘り」を生かしてネバオクラをおいしく育てる栽培ポイント

タキイ開発部 西村星吾

タキイ育成オクラ ヘルシエ ねばねば比較動画

見た目鮮やかな「ヘルシエ」、最大の特長はその「粘り」です。

粘り=水溶性ペクチン

オクラの粘りは食物繊維「水溶性ペクチン」によってもたらされます。
この水溶性ペクチンは機能性成分であり、

  • 食後血糖値上昇抑制
  • コレステロール低下作用
  • 整腸作用

など、健康にとてもよい働きをします。
この「ヘルシエ」の特長を最大限引き出すためには、少しだけコツがいります。草勢の強い品種だけに適切な栽培管理が必要なのです。産地での試作状況から、押さえておきたい栽培の重要なポイントを見ていきます。

栽培のコツ

1.肥料設計

肥沃地の場合は元肥を省きます。施す場合は緩効性肥料を用いて通常品種の2割程度(10a当たり3s)の設計とし、追肥主体で管理します。

2.播種

@移植栽培(最適)
72穴セルトレイへ2粒まきし、1カ所当たり2本立ちにします、株間10〜15cmの狭めの間隔で移植します。

A直播栽培
最低地温18℃以上を確保し、発芽をそろえるようにします。
徒長や株の勝ち負けを減らすには、1穴の立本数を少なくし株間を狭い状態にします。
株間10〜15cm、2本仕立てが理想です。
穴あきマルチの規格などの関係で株間が広い場合は4粒まきし、3〜4本仕立てとします。

3.潅水

根張りが強く養水分の吸収力が高いので、過剰な潅水は控え、一度に多量の水が入らないようにします。

4.管理

草勢が強いと花がらが落ちにくく、黒ずみの原因となるので、収穫作業時に花がらを取り除きます。強勢で着夾しないような場合は開花節まで摘葉します。

「ヘルシエ」は花がらが落ちにくい

「ヘルシエ」は花がらが落ちにくい

5.収穫

莢長10〜13cmが収穫適期になります。遅くとも15cmまでには収穫してください。

オクラ「ヘルシエ」栽培メモ
産地の試作状況