タキイ育成 「Jブレス」

べと病に強く低温結球性にすぐれるサリナスタイプの中早生種

2019/07/22掲載

新井 真琴

タキイ種苗開発部

あらい まこと新井 真琴


近年の異常気象により、露地野菜の作柄は不安定な状況が続いています。レタスの生育は気候変化の影響を受けやすく作柄が不安定になるため、青果価格の変動につながっています。特に厳冬年の冬どりの作型では、生育遅延や玉肥大の不足、暖冬年では生育の前進や形状の乱れなど、収量、出荷計画、品質への影響が問題になります。そのため気候変化の影響を受けにくく、安定した出荷が可能な品種が求められています。
また、主要産地に突発的に大きな被害をもたらすレタスのべと病は、比較的気温が低く、多湿な条件での発生が多くなります。冬どりや春どりのトンネル栽培は、べと病の発生に適した環境下での生育となるため、特に対策が必要になる作型です。
安定生産できるレタス品種を目標に、「低温期の結球性と玉肥大がよく」「玉ぞろいにすぐれる」「べと病耐病性」の開発を進めてまいりました。
今回発表する「Jブレス」は、暖地や中間地を中心とした各産地での試作において、年内〜年明けどりや春どりの作型で安定した作柄を示し、各地のべと病に強いことが確認されました。
品種特性や適作型、栽培ポイントをご理解いただき、ぜひ導入していただきたいと思います。

 

「Jブレス」適作型

最適播種期

冷涼地: 1月下旬〜2月中旬
中間地: 8月下旬〜9月上旬/11月中旬〜12月上旬
暖  地: 9月中下旬

「Jブレス」適期表

「Jブレス」適期表
ポイント 玉肥大よく低温時の結球性が安定 濃緑肉厚、日もちよし 秀品率が高い べと病に強く、栽培容易

品種特性

1玉肥大よく結球性が安定したサリナスタイプの中早生種

年内〜年明けどりの作型に適し、生育は比較的旺盛で玉肥大のよいサリナスタイプの中早生種。低温時の結球性が安定し、玉ぞろいが良好な品種なので、トンネル栽培では場所による生育差が少なく効率的な収穫ができます。

2玉は濃緑の豊円球で
形状安定し、秀品率が高い

結球葉のかぶり(外葉)は深く、ボリュームのある豊円形に仕上がります。葉肉は濃緑肉厚で耐寒性にすぐれ、日もちのよさももち合わせています。葉柄の基部が広くまとまりのよい玉尻で、タコ足などの異常球の発生も少ないため、秀品率が高い品種です。

玉は濃緑の豊円球で形状安定し、秀品率が高い

3病害に強く栽培容易

低温、多湿の環境で発生しやすいレタスべと病に耐病性をもち、トンネル被覆の冬どりや春どりでも安心して栽培ができます。また、低温期の土壌病害ビッグベイン病にも中程度の耐病性をもっているので、発病による生育の抑制や遅延が少なく、安定した収量が期待できます。そのほか、草姿はやや立性で株元の風通しがよく、菌核病や灰色かび病など地際部からの病害発生も少ないので、栽培容易な品種です。

低温期の結球性と玉肥大、玉ぞろいにすぐれ、べと病にも強い「Jブレス」。各産地での試作でも安定した作柄を示している。

低温期の結球性と玉肥大、玉ぞろいにすぐれ、べと病にも強い「Jブレス」。各産地での試作でも安定した作柄を示している。

栽培のポイント

元肥主体、トンネル管理で根張りをよくする

本品種はやや草勢が強いものの結球性や形状安定性にすぐれます。施肥量やトンネルの被覆開始、換気の開閉管理は従来のサリナスタイプに準じて行ってください。気温が比較的高めの作型では適宜減肥してください。
冬どりではトンネル被覆栽培が基本で、被覆開始は平均気温10℃が目安になり、暖地ではおおむね12月上旬ごろになります。被覆直後は霜よけ程度とし、トンネルの両すそを開けることで根張りをよくします。芯葉が立ち上がってくる結球開始期までは、トンネル内の温度25℃を目安にやや暖かめに管理し、外葉を順調に生育させます。その後結球中期までは、トンネル内の温度20℃を目安に換気を行い、玉の形状を安定させます。結球中期から収穫までは、25℃と暖かめに管理して玉の肥大を促します。
暖地の1月中旬どり以降の作型では、トンネルを蒸し込み気味にし、不織布によるトンネル内のベタがけなどで玉の肥大を促します。
春どりでは草勢が強くなりすぎないように、栽培後半は早めにトンネル換気を開始してください。

栽培のポイントはトンネル管理です。冬どりではトンネル被覆栽培が基本になります。

栽培のポイントはトンネル管理です。冬どりではトンネル被覆栽培が基本になります。

若苗定植を心掛け、早めの潅水

冬どり作型は低温により栽培後半の生育が緩慢になります。十分な草勢を確保するため、定植後のスムーズな活着と順調な初期生育が大切です。若苗定植を心掛けるとともに、定植後は必ず潅水して、順調な活着と根張りを促します。
また、結球期の極端な乾燥は肥大不足や結球不良につながります。乾燥しているようであれば、早めに潅水してください。

病害予防ートンネル換気と被覆前の薬剤散布

外葉形成期から結球初期までが、病害防除の大切な時期になります。菌核病や灰色かび病、斑点細菌病などの防除は、生育初期から予防的に薬剤散布を行ってください。トンネル栽培は被覆後の防除作業が難しくなります。被覆前の防除を徹底してください。過湿の環境は病害の発生を助長します。適宜トンネル換気を行いましょう。

べと病、ビッグベイン病は総合的対策を

レタスべと病は極めて多くのレースがあります。本品種は幅広いレースのべと病に耐病性を示しますが、未確認のレースに罹病する恐れもあります。べと病の対策は耐病性品種の利用だけでなく、登録農薬による早期防除も併用してください。
また、ビッグベイン病に関しては「発病が遅いか少ない」という程度の耐病性のため、発病レベルによって十分な耐病性を示さない恐れがあります。土壌消毒や登録薬剤の潅注、圃場排水の整備と合わせて総合的な対策を行うことが必要です。

結球レタス特性比較
レタスの春雨スープ
レタスチャーハン

冬場の需要を高めたい玉レタス。「レタスの春雨スープ」(左)や「レタスチャーハン」(右)など、「Jブレス」なら肉厚で食感も十分です。