品種ピックアップ ダイコン 秋の「関白SP」冬の「健白」の生かしどころ

2019/07/22掲載

新品種「関白SP」は総太り淡緑首ダイコンです。煮食用に向き、加工・業務にも向く作りやすい品種です。これまでのタキイの白首総太りダイコンの代表格「健白」の特長とともに、新品種「関白SP」の特長を見ていきます。

播種期幅が広く作りやすい。食味よし、太りよしの「関白SP」

新井 真琴

タキイ研究農場

たなか ひろし田中 寛

ダイコン「関白」は栽培が容易でかつ食味にすぐれるため、人気品種として長年ご利用いただいています。今回は近年の気象条件を考慮し、早まき可能な秋どりという「関白」の特性はそのままに、生育をそろえ、栽培を安定させることを目的に改良した「関白SP」をご紹介させていただきます。

「関白SP」適作型

最適播種期

冷涼地:7月下旬〜8月上旬
中間地:8月下旬〜9月中旬
暖  地:8月下旬〜9月下旬

「関白SP」適期表

「Jブレス」適期表
ポイント 玉肥大よく低温時の結球性が安定 濃緑肉厚、日もちよし 秀品率が高い べと病に強く、栽培容易

品種特性

1作りやすく肥大性にすぐれる

肥大性にすぐれる淡緑首品種です。草勢旺盛で吸肥力が強く、安定した栽培性を示します。また、萎黄病の耐病性にもすぐれ、安心して栽培できます。

2播種期幅が広い

中間地〜暖地においては11〜12月どりが基本となりますが、8月まき10月どりにおいても栽培が可能な耐暑性をもちます。一方、葉は濃緑で生育旺盛であり、根部の抽根も比較的少ないため耐寒性にもすぐれます。

3食味がよい

肉質は緻密で特におでん用など煮食用ダイコンとしての品質にすぐれます。

見た目にもふくよかで肥大性にすぐれる「関白SP」。
安定した栽培性で作りやすい。

4加工・業務用にも向く

淡緑首の品種であり、低温時期の栽培条件下において問題となる緑肉になりにくい品種です。加工用としては特に漬物用途に適します。

「関白SP」は加工用でも特に漬物には最適な品種。

栽培のポイント

適期播種、適期収穫の基本を守る

本種は播種期幅の広い品種ですが、良品生産においては無理な早まきをせず、本種の早太り性を生かして適期に播種し、良品多収をねらいます。また収穫が遅れると適正サイズでの出荷が困難になるので適期収穫を心掛けるとともに計画的な播種を行いましょう。中間地の場合、播種適期は8月下旬〜9月中旬となります。

作期によって施肥量を考慮する

元肥主体の施肥とし、生育状況に応じて最終間引き後に追肥を行います。施肥量は播種時期や土質、前作によって異なりますが、高温期の栽培では元肥は控えめとします。一方で低温期栽培での肥料切れは、生育の遅れやス入りの発生にもつながるので、緩効性肥料を使用するなど、肥効の持続を考慮した施肥設計としましょう。

中耕管理が生育の良否を決める

生育初期は根の伸長時期にあたり、この時期の生育の良否が品質、収量に大きく影響します。集中豪雨などでの過湿条件にあうと十分に根を張ることができず、本来の生育ができない場合があります。管理機などを利用し、タイミングよく畝間を何度か中耕することで生育が回復します。品種特性を発揮するうえでは、この中耕管理は重要な管理作業といえます。

保水、排水性のよい土づくりが要

栽培期間中に乾燥や過湿を繰り返すと横縞症や根部の変形などの原因になります。また、過湿によって土中の酸素が不足すると根部の生育が著しく劣るので、水はけの悪い圃場では高畝栽培としましょう。堆肥などの有機物を施用し、保水、排水性のよい土づくりを行うことが良品を生産するうえで重要です。

春まき適応性のある、白首の総太りダイコン「健白」

加工・業務向けの白〜淡緑首品種のシリーズの中でも「健白」は春まきにも適応性のある総太りダイコンです。

尻づまりのよい総太り型ダイコン「健白」。写真右はツマに加工された「健白」、青首がなく加工用として1本丸ごとむだなく使い切れる。

「健白」適作型

最適播種期

冷涼地
6月(マルチ栽培)
中間地・暖地
3〜4月(トンネル+マルチ栽培)
9月上旬

「健白」適期表

品種特性

形状と首色

尻づまりのよい総太り型で、収量性が高く、また、首色は白色でほとんど着色しないため、加工・業務用として1本丸ごと、むだなく使い切ることができます。ただ栽培型や栽植密度によっては淡緑色を帯びることがあります。

草姿

草姿はコンパクトでおとなしく、多肥栽培による葉がち(肥大不良)になりにくい品種です。小葉であることで作りやすさが安定し、そろい性も良好です。

肉質

肉質は歯切れがよく純白で、高温期においても変色(うるみ)は少なく、加工適性にすぐれています。

晩抽性

冷涼地の5月下旬まきや、中間地・暖地の3月トンネル栽培ができる程度の晩抽性をもっています。しかし、春ダイコンほどの晩抽性はないので注意が必要です。「健白」の晩抽レベルは、春ダイコンと夏秋ダイコンの中間程度です。春の作型で無理に栽培せず、まずは秋どり中心の栽培を行い、少しずつ夏どりも増やしていくといった使い方がよいでしょう。

栽培ポイント

「ス入りにご注意!」―適切な肥培管理、適期播種、適期収穫を心掛ける

「健白」でも収穫遅れや肥料切れによってス入りのリスクは高まります。加工・業務用の場合は、青果向けのダイコンより大きくして収穫することが多いのですが、「健白」をむやみに肥大させるとス入りの危険性が増してきます。
また乾燥により肥料が吸えなくなった場合や、大雨により肥料が流亡した場合、元肥や追肥の量が適正でなかった場合などに、生育が遅滞してス入りが発生します。
「健白」栽培の最大のポイントは適切な肥培管理と適期播種、適期収穫につきます。

ス入りは根身の中に起きる異常の一種で、内部の細胞が老化し、白色でスポンジ状の組織になる障害です。高温時の生育が旺盛なものや、冬季でも収穫が遅れた場合に多く発生します。老化現象の一つとされていますが、根の肥大の際に同化産物の供給がともなわず、内容物のない細胞・組織ができて起こる一種の飢餓状態とも考えられます。多肥条件によっても促進され、高温時の生育が旺盛なものにも多く見られます。

「関白SP」「健白」「秋神楽」「冬神楽」との使い分け

「関白SP」は播種期幅が広く8月まき10月どりにおいても栽培が可能な耐暑性をもつ。葉は濃緑で生育旺盛。

「健白」は尻づまりのよい総太り型で、肉質は歯切れがよく純白。初夏〜夏どり可能な晩抽性をもつ。

冬どりの「冬神楽」は曲がり根の発生が少なく形状が安定し秀品率が高い。晩抽性にすぐれる。

年内どりの「秋神楽」は形状の乱れが少なく、肌が美しい。中間地9月上中旬まき、暖地9月中下旬まきで特性を発揮する。

夏〜初秋どりの「健白」、年内どりの「秋神楽」、冬どりの「冬神楽」は草姿がコンパクトで肥沃地での栽培や密植栽培に向く加工・業務向けの白〜淡緑首品種のシリーズです。
一方で今回ご紹介した「関白SP」は草勢旺盛で馬力があり、肥料抜けが早いやせ地での栽培に適しています。また、早太りで肥大のよい品種を好まれる方におすすめです。秋冬作においては、上記3品種の播種期をおおむねカバーできる作期幅の広い品種でもあり、その栽培性の高さを生かし初心者からプロまで幅広く使っていただける品種です。