タキイ交配 桃太郎ネクスト

スタミナがあり硬玉で肥大がよくておいしい冬春栽培用品種!

2019/02/20掲載

地球温暖化の影響で、昨今の天候は寒暖の変化が激しく、トマトにはストレスの多い栽培環境になってきています。中でも8月まきの長期越冬栽培では、高温期から低温期そしてまた高温期と、大きな温度変化を経なければなりません。そのため、低温・少日照下での生育安定性と耐暑性を併せ持ち、しかも長期栽培で多収を狙える強勢さが品種に求められます。
今回発表します「桃太郎ネクスト」は、これら必要とされる品種特性を備え、試作品種「TTM-120」として過去3年間の先行栽培にて、高い評価を受けた品種です。その品種特性と栽培ポイントを押さえ、「桃太郎ネクスト」のポテンシャルを100%引き出してください。

畠中 誠

茨城研究農場
農場長

畠中 誠はたなか まこと

トマトに感謝

私がタキイに入社をして間もなく、多くの先輩方が育成した元祖「桃太郎」トマトが誕生しました。それから35年間、ひたすらトマトの品種改良に取り組んでまいりました。その間、トマト産地の温かいご支援を受けながら、数々の「桃太郎」シリーズ品種を世に送り出すことができました。また、ミニトマトや台木品種にも携わり、産地でご愛顧をいただいております。さらに、海外向け品種の育成も手掛け、世界中のトマト生産者の方々と意見を交わし、何万個のトマトを食味検定で食してきたことでしょう。
今後もタキイは皆様に愛されるトマト品種の育成に心血を注ぎ、作りやすくておいしいトマト品種を追求します。トマトがこれからもますます世界中の人々に愛される野菜であり続けられるように努力します。

「桃太郎ネクスト」適期表

「桃太郎ネクスト」適期表
耐病性 Tm-2a.F 1.F2.J 3.V.Cf9.LS.N

品種特性

1安定したスタミナで長期栽培に適する

現在市販されている冬春品種の中でもトップクラスの草勢を示します。「CF桃太郎はるか」や「CF桃太郎J」と比較して、かなり吸肥力が強い品種なので、長期どりで安定した栽培性を発揮して、多収を狙える品種となっています。
この安定した草勢から、葉先枯れの発生も従来の「桃太郎」品種より少なくなります。

多収を狙える「桃太郎ネクスト」
多収を狙える「桃太郎ネクスト」

トマト収量調査試験データ
(試験場:茨城研究農場環境制御ハウス、
時期:2017〜2018年、収穫:11月13日〜6月29日
※1u当たり3.2株植え)

2多花で着果性にすぐれる

本種は花数が多くて勢いのある大きな花が咲くことで、安定した着果性を示します。

3多種類の障害果の発生が少ない

従来の「桃太郎」トマトはすじ腐れの発生が多いという欠点がありましたが、本種はその点を厳しく改良した品種で、たとえ強勢に生育してもすじ腐れの発生が極めて少ないのが特長です。また、冬季の輪状裂果や夏季のがく割れ果、5月以降に発生する肩部の黄変果や空洞果も少なく、出荷ロスが減少します。

4果実肥大力にすぐれ、硬玉で食味も良好

低温・少日照下でも安定した果実肥大力で、単価の高い冬場に大玉出荷が見込めます。また、硬玉で店もちがよく、春先の軟化玉の発生も少なくなります。食味は「桃太郎」の名前を冠するにふさわしく、甘みと酸味のバランスがとれ、肉質が緻密で食感がよく仕上がります。

果実肥大力にすぐれ、硬玉で食味も良好

「桃太郎ネクスト」は硬玉で店もちがよく春先の軟化玉の発生も少ない。

5高度複合耐病性

トマトモザイクウイルス(Tm-2a型)、萎凋病レース1(F1)およびレース2(F2)、根腐萎凋病(J 3)、半身萎凋病(V)、葉かび病(Cf9)、斑点病(LS)、サツマイモネコブセンチュウ(N)に複合耐病性をもちます。

栽培のポイント

元肥を抑えて追肥重点型の肥培管理

本種を作りこなす最大のポイントは吸肥力のコントロール、初期の草勢を抑えてその後の草勢を落ち着かせることです。そのために、元肥はロング肥料を主体にして、チッソ成分量をかなり控えめにする必要があります。「CF桃太郎はるか」と比較して、チッソ成分量を3〜4割程度思い切って減らしましょう。その分、草勢が落ち着く3段開花以降に、追肥をしっかりと施してください。できれば通路やマルチの下にぼかし肥料などの固形肥料を施して、長期どりに備えます。それ以降はやや高めのEC濃度で潅水量は少なめで管理します。

定植苗は一部開花苗

初期の草勢を抑えるのに開花苗定植は必須です。若苗定植をする抑制栽培でも、育苗用ポットはできるだけ大きい物を用いて日数を稼ぎ、蕾を大きくしてから定植をしてください。

摘葉による草勢管理技術

間違えて初期生育が強勢になった場合の修正テクニックとして摘葉があります。1段花房の下に8枚程度の本葉が着生しますが、その本葉を2〜3枚、元から摘除します。
また、花房間には3枚の本葉が出ますが、花房の直上で裏側に展開する本葉を摘除します。この本葉はトマトの樹勢を維持するために主に働き、果実の肥大にはあまり貢献しませんので、安心して取ってください。

強めの換気でハウス内の湿度を低めに保つ

本種は、土壌水分の吸い上げが強く、また空気中の湿度が高いと節間が長くなるとともに本葉が大きくなりすぎますので、栽培期間を通して潅水量を控えめにする必要があります。また、日中は積極的に換気をしてください。蒸し込み栽培は厳禁です。

環境制御ハウスでの管理

本種は環境制御ハウス内での養液栽培の長期多収栽培にも適した品種ですが、飽差管理を意識しすぎた空中湿度の高い環境下では大葉になりますので、飽差はやや高め(湿度はやや低め)に管理してください。

低温管理での先とがり果への対策

花落ち部はごく小さくなっていますが、このような特性の品種はその花芽生長時に低温に遭遇すると、先とがり果が発生する可能性が高くなるので、冬季の夜間の最低気温は12℃を維持するとともに、激しい寒暖差には注意が必要です。

低温管理での先とがり果への対策

台木の選択

強勢な「桃太郎ネクスト」には、吸肥力のおとなしい台木がおすすめです。草勢管理方法や土壌の肥沃度、必要な土壌病害耐病性により異なりますが、越冬の長期どりでは「グリーンガード」「グリーンセーブ」、抑制栽培や半促成栽培の短期どりでは「Bバリア」など草勢のおとなしい台木を選択してください。

右 Bバリア 左 グリーンガード

従来品種との使い分け

「CFハウス桃太郎」、「CF桃太郎はるか」、「CF桃太郎J」 のタキイの冬春栽培用「桃太郎」品種は長年ご愛用いただいているすぐれた品種ですが、「桃太郎ネクスト」はこれら3品種から切り替えが可能な品種だと考えています。ただ、強勢に生育する草勢管理方法や栽培地には、十分に注意してください。

冬春栽培用「桃太郎」トマト 特性比較表

冬春栽培用「桃太郎」トマト 特性比較表
冬春栽培用「桃太郎」トマト 特性比較表

※耐病性:Tm-2a=トマトモザイクウイルスTm-2a型、
Cf9=葉かび病Cf9

「CFハウス桃太郎」

「CFハウス桃太郎」。極早生で色回りがよく、食味もよい。

「CF桃太郎はるか」

「CF桃太郎はるか」。低温・少日照下での果実肥大力にすぐれる。