品種ピックアップ

品種ピックアップ

2025/2/20掲載

タキイ交配

トマト「桃太郎ブライト」
農林水産省品種登録出願中(品種名:TTM178)

スタミナがあり、黄変果の発生が少ない
冬春用「桃太郎」!

「桃太郎ブライト」の特長
  • 黄変果になりにくい均一な着色特性
  • 果ぞろいがよく果実品質がすぐれる
  • スタミナがあり、着果性にすぐれる

近年の気象条件は温暖化や異常気象が常態化する傾向にあり、トマト生産地への影響も徐々に大きなものとなりつつあります。厳しい栽培環境下での青果物の安定供給のため、果実品質を担保しながら、より「栽培のしやすさ」に着目して品種改良を進めてきたのが今回発表する「桃太郎ブライト」になります。特に栽培期間が長期化する傾向にある冬春栽培において、重要な形質となる「スタミナ」と「着果性」をコンセプトに育成を進めました。厳しい栽培環境においても、草勢維持と着果性が安定すれば、生殖生長と栄養生長のバランスを保ち、結果として高い秀品率や生理障害への強さをもたらすと考えたからです。
また、春先に発生の多い黄変果対策として、ショルダーグリーン(肩部の濃緑部分)のない均一な着色性を付与することで黄変果のリスク軽減を図りました。このようなムラのない着色をする大玉品種は日本ではこれまで定着していませんが、果実品質維持のスタンダードとして、今後も継続して育成を進めていきます。

タキイ研究農場 中山 健治

品種特性

すぐれた果実品質

黄変果になりにくい均一な着色特性をもつ品種です。甘みと酸味のバランスにすぐれた「桃太郎」系の食味をもちます。果形は腰高豊円型に仕上がり、果重210g 前後で肥大力も兼ね備えます。低日照下での空洞果の発生も少なく、果房内での果ぞろいがよいことも特長です。硬玉で店もち性にもすぐれます。

ショルダーグリーンがなく均一に着色する特性をもつため、黄変果のリスクが少ない。

ショルダーグリーンがなく均一に着色する特性をもつため、黄変果のリスクが少ない。

安定した複合耐病性

トマト黄化葉巻病(Ty-3a)、葉かび病(Cf9)に耐病性を示すほか、トマトモザイクウイルス(Tm-2a)、半身萎凋病レース1(V1)、萎凋病レース1(F1)とレース2(F2)、斑点病(LS)に複合耐病性をもちます。

草勢が強くスタミナがあり、着果性にすぐれる

草勢が強く、スタミナがあり栽培後半でも果実品質維持が容易となります。着果性も非常によい品種で、特に厳しい栽培環境下で特性を発揮します。

トマト黄化葉巻病耐病性について

タバココナジラミが媒介する黄化葉巻病イスラエル系、マイルド系の両系統に安定した耐病性があります。ただし、完全抵抗性ではなく、植物体内へウイルスが侵入後に増殖を抑制するタイプの耐病性なので、栽培環境によっては発病する可能性もあり、従来通りの耕種的防除と定期的な薬剤散布を組み合わせて栽培することが必要となります。

適作型

適作型

栽培ポイント

追肥重視の肥培管理

本種はスタミナがあるため、初期草勢が強くなる傾向にあります。どの作型においても元肥のチッソ成分量は、10a当たり5s以下を目安とし、追肥重点型の肥培管理を行います。 

育苗期の高温対策、適期苗定植

育苗期の極端な高温・乾燥は、低段で異常な花数の増加やチャック果の発生、花痕部が目立つなど影響を与えます。育苗用ハウスは、循環扇の設置や遮光・遮熱資材を利用した高温対策を十分に行います。また、高温期の定植作型を中心に初期草勢が強勢に傾いた場合は、異常主茎(めがね症状)の発生が懸念されます。抑制栽培の定植苗は、1段花房の蕾が米粒大のものを適期とし、極端な若苗定植は避けるようにしましょう。

定植後はこまめな潅水を行い、活着を促すことが重要です。育苗期後半から3段花房開花期ごろまでは、ホウ素を含んだ葉面散布を行うことで、異常主茎の発生を軽減します。「桃太郎ブライト」は肥大力があるものの、強勢になりすぎると花痕部が大きく残り、乱形果が発生することがありますので注意しましょう。

早めの肥培管理で草勢維持

本格的な潅水や追肥を始めるタイミングは1段目の果実が500円玉程度になった時期が目安です。高温条件下では、極端に潅水量を減らす作り方は避け、成長点付近の様子を見ながら、少し早めに開始してください。高温条件下においては、通路が軽く湿っている程度が適切な土壌水分の目安となります。

追肥量は、液肥の場合1回当たりチッソ成分10a当たり0.5〜1.0sを施します。その後は開花が1段進むごとにチッソ成分10 a当たり1.5〜2.0sを目安に回数で補ってください。着果がよい品種のため、潅水や追肥の遅れは草勢低下だけではなく、上段での空洞果の発生にもつながりますので、早めの肥培管理で草勢維持を心掛けてください。

ホルモン処理と摘果

トマトトーンの希釈倍率は夏期で150倍前後、冬期は100倍前後とします。高温期は特に花の生育が早いので、ホルモン処理の間隔は週2〜3回と間隔を詰めて行いましょう。後半までしっかり草勢を維持するには、摘果も徹底します。1〜2段目を3果、それ以降は4果を目安に必ず摘果してください。

適切な日平均気温の確保

高温期の極端な高温・乾燥を避けることはもちろん、低温期には果実の成熟速度を維持するため、秋口からは早めの保温や暖房を心掛けるとともに、最低温度の設定目標を12℃以上にします。日中の温度も厳寒期は15℃を確保し、適切な日平均気温の確保に努めます。温度が十分でない場合、栄養生長に傾きすぎて小玉傾向になる場合もあり注意が必要です。また厳寒期とはいえ、極端な乾燥は草勢低下を招くので、土壌水分の乾湿の差がなくなるよう、こまめな潅水管理が適切です。

「桃太郎ブライト」は子室数がやや多く、低温期には子室数が増えること、加えてショルダーグリーンのない均一な着色性により網果が目立って見える場合があります。果実硬度はもともとかたいため軟果につながることは少ないですが、厳寒期の温度管理には注意しましょう。

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