品種ピックアップ

品種ピックアップ

2024/2/20掲載

味も粘りも段違い!
機能性を併せもつオクラが登場

2023年の夏は最高気温35℃を上回る猛暑日が続きました。夏バテの予防・改善には栄養価が高く、体に必要な栄養素がたっぷり含まれている夏野菜がおすすめだといわれています。夏野菜といえば…トマト、キュウリ、ピーマン、スイートコーン、オクラなど。その中でもオクラはネバネバ食感が人気の野菜です。

飽食の時代に注目される

東北アフリカ原産で、エジプトでは紀元前13世紀ごろの栽培記録が残っています。日本へは幕末〜明治時代にアメリカから伝えられたと言われており、一部の地域では古くから栽培されていました。1970年代、高度経済成長とともに食生活も大きく変化し、肥満や糖尿病など生活習慣病が増加し健康に対する意識が高まっていました。鹿児島、高知、沖縄などの暖地で栽培され市場に出荷されると「栄養があり、健康によい野菜」として注目されるようになりました。

タキイのオクラ

家庭の食卓にのぼるようになった1970年ごろ、東京都中央卸売市場に出荷されたオクラの出荷量は5年間で約4倍に激増していました。1977年に発表されたタキイ育成「ベターファイブ」は極早生の矮性種で莢は濃緑、稜角がはっきりした5角形のオクラです。小葉で草丈が低いので、ハウスの密植栽培やトンネル早熟栽培に適しています。1986年に発表の「ベニー」は紫紅色のオクラで彩りがよく、熱を加えると緑色に変化するユニークな品種です。作りやすく家庭菜園にもおすすめです。

赤オクラの「ベニー」と5角形オクラの「ベターファイブ」

紫紅色のオクラ「ベニー」と5角形オクラの「ベターファイブ」。

遂に誕生!タキイ交配オクラ

交配作業が困難なオクラは固定種が多く、夏季の露地栽培が一般的な品目でした。高温乾燥に強い作物とはいえ、激しい乾燥や過湿に合うとそろいが悪くなり収量が安定せず生産者を悩ませていました。健康や栄養を重視した時代になる中、栄養価の高い野菜としてオクラの人気が出るようになると交配種の発表が切望されていました。1987年に収量性が高いタキイ交配「グリーンロケット」と濃緑莢で高品質な極早生種のタキイ交配「アーリーファイブ」が同時に新発売されたことからも、その注目・期待度の高さがうかがえます。

待望の交配種「アーリーファイブ」

待望の交配種「アーリーファイブ」。

出荷量2位の高知県が「アーリーファイブ」を導入

高知県では1971年ごろに、水田転換作物として暖地性を生かした有利な栽培ができるオクラが導入されました。生産コストが比較的低いトンネル早熟栽培をメインに、市場で高値で取引される5月ごろからの早出し出荷をしています。
固定種は、「イボ果」の発生が多く、秀品率の低下が問題でした。そこで1987年ごろからタキイ交配「アーリーファイブ」を導入したところ、イボ果の発生が少なく栽培後半まで収穫量を維持し多収なことから主要品種として普及していきました。

<生産者の声>
  • ①耐暑性、スタミナがある
  • ②イボ果の発生が少ない
  • ③毛茸がやわらかく取り扱いしやすい
  • ④莢が濃緑で果肉もやわらかい

アーリーファイブ」の登場で「イボ果」が減少し秀品率が高くなった。(1988年南国市)

アーリーファイブ」の登場で「イボ果」が減少し秀品率が高くなった。(1988年南国市)

「アーリーファイブ」の登場で「イボ果」が減少し秀品率が高くなった。(1988年南国市)

より品質の高いオクラを目指して

「アーリーファイブ」はそろいがよく、莢色の濃さなどが評価され人気品種となりましたが、早出しをねらった作型の前進や、収量確保のための密植栽培ではさらなる果実品質の向上や収量の安定化が求められていました。また消費面からは「目で食する」といわれる日本の食文化の影響で、より濃緑で新鮮に見える品種の育成が望まれていました。そうした時代背景の中で2003年に発表されたタキイ交配「グリーンソード」は生産者、市場からも支持される品種となっていきました。

「グリーンソード」の特長
  • ①莢色が濃く市場性が高い
    色の濃い品種は莢がかたくなることが多いが、肉質がやわらかくおいしい。
  • ②秀品率が高い
    草勢低下や莢の曲がり、イボ果、乾燥などのストレスがかかったときに茎や莢に発生するアントシアン色素の発生が少ない。莢は5角で稜角がはっきりしている。
  • ③多収
    「アーリーファイブ」より2割ほど収量が多く、収量重視の栽培に向く。
  • ④熟期は早生
    初期収量を極早生の「アーリーファイブ」で確保し、早生で多収の「グリーンソード」を組み合わせて、総収量を増やすことができる。

「グリーンソード」は草勢が安定しており、イボ果の発生が従来品種より少ない。

「グリーンソード」は草勢が安定しており、イボ果の発生が従来品種より少ない。

やわらかくおいしい「グリーンソード」。作りやすく長期間収穫できるので家庭菜園におすすめ。

やわらかくおいしい「グリーンソード」。作りやすく長期間収穫できるので家庭菜園におすすめ。

ネバオクラ「ヘルシエ」が登場

夏バテ防止の野菜として人気があるオクラの「粘り」に着目し、2018年に「ファイトリッチ」シリーズの「ヘルシエ」を発表しました。水溶性ペクチンの含量が高く、従来のオクラよりも粘りが強いネバオクラ「ヘルシエ」として販売されています。パステルグリーンの肉厚な丸莢で肉質はやわらかく、粘りの強さも相まって食味がよく人気があります。生育旺盛で露地栽培に向き、15cm程度までとり遅れてもかたくなりにくいのが特長で、ほかのオクラと差別化を図ることができます。

「ヘルシエ」の特長を生かし直売所出荷にもおすすめ。段違いのねばとろ感にリピーターが続出。

「ヘルシエ」の特長を生かし直売所出荷にもおすすめ。段違いのねばとろ感にリピーターが続出。

「ヘルシエ」の特長を生かし直売所出荷にもおすすめ
段違いのねばとろ感にリピーターが続出。

オクラは英語でも「Okra」と呼ばれています(別名:lady’s finger 、gumbo)ドイツ、オランダ、スペインなど海外でもオクラと呼ばれており、アフリカでは乾燥オクラをスープのとろみづけに使うなど多くの国で食べられています。

料理のレパートリーも豊富で栄養価も高い。

料理のレパートリーが豊富で栄養価も高い。

「2023年度野菜と家庭菜園に関する調査」(タキイ種苗調べ)で、「家庭菜園で作ってみたい夏野菜」の第3位に選ばれたオクラ。とれたての味は格別においしく、美しい花も楽しめます。

「2023年度野菜と家庭菜園に関する調査」(タキイ種苗調べ)で、「家庭菜園で作ってみたい夏野菜」の第3位に選ばれたオクラ。とれたての味は格別においしく、美しい花も楽しめる。