タキイ交配 BCR龍月

根こぶ病と黒腐病に複合耐病性!
形状安定で玉ぞろいのよい寒玉系中早生種

2020/07/20掲載

城田 良裕

タキイ研究農場

城田 良裕
(しろた よしひろ)

「ゲリラ豪雨」「スーパー台風」という言葉に代表される近年の異常気象のなか、高温・多湿条件で発生するキャベツの難防除病害である黒腐病や根こぶ病が年を追うごとに問題化しています。
秋冬どりでは、かつて数年に一度発生する程度だったのが、近年は大面積の産地を中心に毎年のように見られるようになりました。
また、収穫期を迎えたキャベツが強い降雨の後、自重に耐え切れず倒伏した結果、玉尻の腐敗が発生し収量を落とす場面が多く見受けられます。
タキイでは、こうした状況下でも安心して生産できるキャベツの育成に取り組み、「耐病性の強化」「耐倒伏性」を育種目標に進めてまいりました。
「BCR龍月」はこうした課題に取り組み続けた成果の一つです。黒腐病抵抗性(BR)と根こぶ病抵抗性(CR)を一つの品種に両立させるという育種上困難な課題を克服し、これまでにない高度なレベルで兼ね備えた品種です。栽培面では、倒伏に強く、密植適性も備え、収量性も現行品種と遜色のないレベルに到達しています。
中間地や暖地での数年間の試作と経済栽培の結果から、所定の特性を十分発揮することを確認しました。ぜひとも生産者の皆様に、さらなる安定生産を実現いただければ幸いです。

「BCR龍月」適作型

最適播種期

中間地:7月中〜下旬まき
暖 地:7月下旬〜8月上旬まき

「BCR龍月」適期表

「BCR龍月」適期表

品種特性

1根こぶ病と黒腐病に強い耐病性をもつ

キャベツの難防除病害で、秋どり作型で最も問題となる根こぶ病と黒腐病の両方に高度な耐病性を示す画期的な品種です。従来の予防的防除と組み合わせることで、発病リスクを大幅に低減できます。
当社「彩」シリーズ以上の黒腐病耐病性が必要な産地はもちろん、根こぶ病でお困りの産地に対して、幅広く提案できます。

2収穫・箱詰め作業が容易

密植栽培でも玉のそろいがよく、収穫作業性にすぐれます。秋どりはもちろん、甲高球が発生しやすい初夏どり栽培でも、玉の形状が扁円球に安定するため、箱詰め作業も容易です。

扁円球によく玉ぞろいする「BCR龍月」(写真下)
(熊本県八代地区)

3倒伏しにくく多収

収穫期に達した後、強い降雨で圃場がやわらかくなるとキャベツは倒伏しやすくなります。そして地面に接する部位から腐敗していくことがありますが、「BCR龍月」は生育後半まで根張りが持続し、茎も短いので倒伏しにくい特長を持っています。玉尻からの腐敗が少なくなることで、結果収量も上がります。

4作型適応幅が広い

中間地や暖地では、下降気温下の栽培となる秋どり作型と、上昇気温下の栽培となる春まき初夏どり作型の両方で幅広く栽培できます。
冷涼地では初夏どりおよび秋どりが可能です。

栽培のポイント

圃場選定、肥培管理

熟期の比較的早い中早生種なので、生育初期からの適切な外葉形成が良作のポイントです。
「BCR龍月」は定植後〜結球開始期に極端な乾燥条件に遭遇すると、小玉での裂球や不結球が発生する場合があります。そのため保水性がよく肥沃な圃場への作付けを優先します。水分や肥効の抜けやすい圃場では潅水や追肥を適宜行い、適切な外葉形成を心掛けましょう。
肥培管理は元肥主体とします。初期生育の時点で肥効を高め、外葉を大きく作ることで玉肥大を進めます。追肥も早めに行い、生育期間中安定した肥効を保ちます。追肥が遅れ、収穫期に肥効が高まると裂球する危険があります。

適期収穫を心掛ける

結球初期から比較的しまりながら肥大が進むため、収穫始めから重量が乗りやすく収量が安定します。一方、収穫適期以降は裂皮や裂球が発生しやすく、晩秋どりでは凍霜害を受けやすくなります。そのため、収穫適期を迎えたら長期間畑に放置せず、早めに収穫してください。

栽植密度

そろい性にすぐれますが、極端な密植栽培を避け、適切に外葉が生育し収量が安定する条間と株間で栽培します。
畑地では単条栽培で、条間60cm程度、株間30〜35cmを目安にします。水田後作では平高畝の2条栽培を行います。株間は同じく30〜35cmを目安にします。
高畝栽培や中耕により過湿を回避し、適切な根張り・株張りを確保します。

病害防除

茎が短いため、倒伏による球尻の腐敗は少ないのですが、植物体が地面に近いため、地際部から罹病する菌核病、株腐病に対しては十分な防除が必要です。
また、根こぶ病、黒腐病に対して、完全な抵抗性ではありませんので、従来の予防的防除と組み合わせた総合防除を心掛けましょう。

根こぶ病耐病性
黒腐病耐病性